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016 - 皇女様の事情

「宜しければカノンまでご一緒させていただけませんか?」


要するに、ベリアはそんな事を言ったのだ。


「……何故?」

「私、本来の目的地はカノンだったんです。ので、丁度良いかなって」


丁度……いやいや、しかしソレだとおかしいのではないだろうか。

だって、此処はカノンの東。エネスクからなら、直接南下したほうが……。


「カマズミ山脈はご存知ですか?」

「ご存知ありません。良ければご教授の程、お願いできるか?」


頼んでみると、「良いですよ」と彼女は鷹揚に頷いて見せて。


「簡単に言っちゃいますと、カマズミ山脈はエネスクとカノンを分ける国境に位置する山脈です。彼の山脈は高く、一応通り抜ける道もあるのですが、道も細く、魔物も中々手強い種類が出るそうで、足場の限られている場所では結構不利になってしまうのだとか」


頷く。山越えが危険だと言うのは分った。しかし、なら何故こんな所に居ると言うのか。


「そこで、帝国からカノンへ訪れるには、ウェストリーを経由して訪れるんです。この辺りから丁度、山脈が途切れているので。遠回りにはなりますが、山脈ルートに比べてかなり安全なんです」

「まぁ、魔物じゃなくて盗賊に襲われたがな」

「……どうも最近、カノンも治安が悪いみたいですね」


ソレは確かに思う。

俺が経験しただけで、既に3回は盗賊に襲われている。

平均を知らないから確かな事はいえないが、多いほうなのではないだろうか。

……しかも、どれも結構な手誰ばっかりだったし。


「……正直、取り敢えず早々にこの国脱出しないと、命危ないかも」

「どうも、国の政治が不安定のようですね。上がしっかりと纏まっていないから、国に揺らぎが生じるんです」


フンッ、と鼻息荒く語るベリア。なんていうか、王様気質だ。良い意味で。


「……まぁ、いいか。とりあえず、俺を雇うのか?」

「――無料(タダ)って、駄目ですか?」

「後払いなら認めよう。……大国の皇女がケチるな」

「こ、皇女って言ったって、それほどお金持ちってわけじゃないんですからね!!」

「月に幾ら程小遣いをもらってる?」

「………月に……銀貨三枚程……」


この世界の、というかウェストリーの下町の住人の平均的な月収…統計を取ったわけではないけれども…は銅貨80枚程度だという。

俺は一度の食事で銅貨三枚程度使った。換算すると、多く見積もっても1200円くらいか。

つまり一枚400円。それが80枚というと、三万二千円。

安いアルバイトの月給程度の金額だが、まぁ物価とか、殆どが兼業での商売だという事もあるのだろう。

つまり、ほぼ自給自足だ、という事。


で、銀貨の価値。

確か、大まかに銅貨300枚分。

計算しよう。

=400×300

=120000。

じゅうにまんえん。その、三倍。三十六万。

立派な社会人の月給である。

……それが、小遣い? は? ナニソレ。何処のセレブ? ああ、皇女か。


「……おう、小娘。お前穴掘って埋めるぞコラ」

「ひぃっ!? いきなり何でキレてるんですか!?」


キレないでか。いやむしろ此処はキレるべき場所だろう。


「邪ァァァァアアアアアア!!!!」

「ひうぅっ!!??」


なんて遊びつつ。結局俺はベリアの依頼を受ける事にした。

なんだかんだ言っても、多分俺はこのちびっ子を見捨てる事なんてできないだろう。

出来たなら、真っ先にあの馬鹿(アキラ)を見捨てている。


「…………はぁ」

「溜息をついていると、幸せ逃げちゃいますよ?」

「…………」


この餓鬼ぃ……。





ちなみに。

成功報酬で銀貨20枚。ベリアの半年分の小遣いである。


「お前の小遣いから出すべし」

「ひぃぃん!?」


おこちゃま皇女様に言うと、何故か半泣きになっていた。

まぁ、気のせいだろう。そういうことにしておこう。うん。

ニヤリ(邪悪な笑い)。


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