001 - その日。
「で、今日で何人に告白されたんだっけ?」
「……あー……5人目?」
学校の帰り道。
いつもの様に晃と一緒に帰路を歩く。話題は当然の事ながら、この色男の話題だ。
「でも、俺断ってるんだぞ?」
「何で断るよ。全員金持ちのお嬢様だったり、スポーツ優秀だったり、家庭的だったりとにかく美人だったり、とりあえず基本的に全員美人だろうに」
「……うーん、でもなぁ……」
嗚呼、本気で腹が立つ。
この男、その美貌で一体何人の女子を誑し込んでいるのか。俺が聞いているだけでも、告白した人数の3乗はいる。3倍ではなく、3乗。
正直、色男は撲滅されれば良いと思う。
「でも、あの子達と会話したのって、本当に数回なんだぜ?」
「其処から始まる恋って言うのも在るだろうに」
「でもなぁ……彼女達が見てるのって、俺の顔だぜ?」
コイツハ。ホンキデ、ナグラレタイノダロウカ。
「恋って言うのは……もっとこう、内面でするもんじゃないのか? もっと心から助け合ったり出来るような関係の事じゃないのか!?」
「いや、力説されたって知らんがな」
何せ、この方16年。こんな美形の隣に幼馴染として居続けた所為で、すっかり引き立て役なんていうのが板に付いてしまったのだ。
正直、もう色々見てきて、色恋に幻想なんて感じられない。
「彼女達と付き合うつもりは無いんだろ?」
「今のところは」
「………その中途半端な答えが、あの子達が諦め切れない原因だと思うんだけど?」
想像する。
例えば昼休み。自分の背後で女の子数人ハベらせて昼食をとられたり。正直俺だけではなくクラス中から殺意を感じる。いや、学校中から。
想像する。
事有る毎に女がらみのトラブルを起こされ、挙句にほぼ高確率で俺を巻き込む。
想像する。
で、事ある毎にその処理を俺がする羽目になる。処理しなければ被害が来る。
想像する。
気付けば何時の間にか彼女達にも俺がパシリ的な立ち位置だと認識されてしまっていて。拒否しても勢力的にあっちのが有利だし。
想像する。
増えすぎたハーレムは偶に内乱が発生して。それの鎮圧まで何故か俺がやらされて。まぁ、偶に拒否るけど。
想像する。
何故かは知らないが、偶に俺まで恋敵として認識されていたりして。いやいやいやいや、俺はノーマルですから。
想像する。
で、気付けば何時の間にか漫研の腐女子に同人誌を描かれていたり。潰したが。
「……………………」
思い出すだけでも色々潰したくなってくる。
「でもさ、……ソレって、……泣かれちゃわない?」
「ソレがどうした。女の涙なんて所詮処世術の一つだぞ? 気にしてたら世界が終わる」
「そうかなぁ……?」
まだ納得いかないのか。
隣から聞こえる唸り声に肩を竦めつつ、何時もの様に会話しながら帰路を歩いて。
「―――っ!?」
不意に、世界が歪んだ。
「晃、さがれっ!!」
咄嗟に晃の身体をつかんで背後へ飛び退く。
目の前。其処に、突然何かが現れた。
いや、それは現れたなんて表現する事象だったのか。むしろ、空間がぱっくりと割れた、とでも言った方が良いのではないだろうか。
「な、何だ!?」
「知らんっ!! とりあえず逃げるぞっ!!」
夕日の中忽然と現れた、光すら飲み込むような漆黒の穴。
本能が告げていた。コレに関わるのは不味い、面倒な事になる、と。
「晃、走って逃げ……!?」
「うお、何だ、滅茶苦茶引っ張られてるんだが!!」
振り返って愕然とする。
如何いう力が働いているのかは知らないが、しっかりと地面に脚を付けている俺達の身体は、徐々にその穴へと引っ張られていた。
まるで掃除機に吸い込まれる塵芥の如く。
咄嗟に地面に四つんばいになる。
こうしてしまえば、力の掛かる面積に対して、四つんばいという安定で何とか耐える事も出来るのではないか……。
「うわああああああああああああああ!!!!」
「―――え、って、いや、嘘っ!?」
聞こえてきた晃の悲鳴。目を向けて、俺まで悲鳴を上げた。
穴の吸引に負けて、空を飛ぶ晃。
その軌道が、俺の直撃コース。
オワタ。
「「うわああああああああああああああああああ!!!!!!!」」
その日、俺の平凡な日常は、砂礫の如く崩れ去ったのだった。
他の連載も終わってないのに、新たに始めようとする馬鹿が此処に一匹。orz
とりあえず、再び異世界迷い込み物。
ただし今回はパワーバランスを調整し(といっても主人公強い)、更に厨二病的表現を削減し(エコロジー)、ファンタジーにコメディーも絡ませ(苦手です)、ワシの波動球は百八式まであるぞ!(意味不明)、というわけで適当に書いていきます。書こうと思って書くよりも適当に書いてたら書き溜めてた、なんてパターンが多いんだからコンチクショー!!