第一話 誕生日が命日
やあやあどうも皆さんこんにちは。今日もお酒がおいしいですね。ということでまずは自己紹介から。
奥山優。
それが私の名だ。
今日で30歳となる、独身男である。ペットも飼ってないよ。
折角の誕生日だと言うのに、祝ってくれる人はいない。今日も今日とて独り酒。
別に寂しくなんてないぞ。私の友であるお酒さんが居てくれるからな!
いつもより少し高い酒で少し豪華な肴を流し込み、程よく酔ってきた私はテンションが上がる。調子に乗る。
『そうだ。久しぶりにバースデーケーキなんて買ってみようか』
と呟いた後、近所のコンビニへひとっ走りする事に。
酔っているとはいえ、千鳥足になったり意識がボンヤリとする程ではなかった。
万が一何か事故でも起こしたら。なんて事も思ったのでいつものダサダサおじさんジャージを身に纏い、ラクなサンダルを履いて徒歩で出かけた。
ここはまあまあの田舎である為、夜はまだまだ暗い場所も多々ある。私は少々ビビリであるので、周りには十分気を付けていたはずである。
……。しかしまあ、まさかこんな事になるとはね。
現在私はアスファルトの上に寝っ転がっている。腹にはナイフ。背には血だまり。
誕生日だー。って調子こいてたからってこの仕打ちは酷過ぎるんじゃないのかいカミサマ。
おっとおっと?私の顔見てオロオロすんじゃないよ通り魔さん。この可愛らしい女の子に刺されて死ぬならまあいっかと思いかけてたけど、人違いかい?最近流行りの誰でも良かった系じゃないのかい。ヤンデレの恋は盲目ってやつだとでもいうのか。
あらら。オロオロしながらも助けようとしてくれるようだ。
でもまあ、遅いかな。キミが刺した後ナイフグリッて捻るから、傷口滅茶苦茶で血がドバドバ。ここまでなっても意識保ってる自分ってもしかして凄い?って思ってたけど、もうなんか全身の感覚なくなってきてるんだよね……。
ちょっ。ナイフ抜こうとしないで!血!血がもっと出そうだから!無理ぃ!もう出ないのぉ!や、ヤメテー!
「いぎぃ……」
えっ。あれ?痛み無くなって景色変わったんですけど。
満天の星空とうっすら光る朧月。それを見せまいとザワザワ騒ぐ木々。体を起こすと足下には小川が!
あー。走馬灯とかは無いの?イキナリ三途の川っすか。思っていたより川幅狭いんですね。三途の川って。
……アレが最後の言葉とか嫌だなあ……。いぎぃだって。いぎぃ。
まあ、死んでしまったものは仕方ない。重要なのは過去ではなく現在と未来だ!
と、いう訳で私はこれより、三途の川探索へゆきます!舟は何処じゃ!閻魔は何処じゃ〜!