パン屋のドルベ
湿った空気を帯びた朝は、冬だというのに、そこまで寒く無くて、でもダウンを着なければ凍えてしまうほどに、丁度良かった。
夜中に雨が降ったみたいだ、上を見れば青い空が広がって空気が落ち着いている。
鼻の入り口が敏感になってスースーする。
冬だというのにも珍しく朝から10℃後半の天気に、優多ははあと息を吐く。
しかし、白くは染まらず湿った空気に解け行ってしまった……。ふと、自転車で進む自分とは違って街道を歩く人の白い息が目に見えて、すぐにその姿が建物に隠れていなくなる。
ただ、それだけの朝。
優多はただ、自転車をこいで心地よい空気と太陽の温もりに、ペダルを進める。
「いらっしゃい」
「どうも……おはようございます」
パン屋のドルベ。香花界時間早朝4~5時の限定営業。
最近主様である無限がここの食パンにはまっている。絶妙な塩加減と蜂蜜の濃厚な甘み。それに負けじと柔らかい生地が――総じて美味い。
かく言う優多自身もその食パンの虜になっていて。その食パンを10斤購入する、一つが無限のと、もう一つが優多自身の分、残りは朝食の分だ
「今日もありがとうね」
「いえいえ、こちらこそ……。あ、明日もお願いします」
そういって、シフィアから貰った明日分の必要数が書かれた紙を渡す。そこには必ず二重線で消されて2つ足された数が書いてあるのだが、これはシフィアも知らない。
後ろに専用の籠があって、そこに食パンを10斤そこにいれる。さよならとドルベさんが手をふってくれた。
少し汗をかいたらしい。
吐いた息が青空を白く染めた――