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クリスマス・イヴ

 微かに温もりを感じる自分の息が、体と空気が混ざり合っていく――


 霊城寺雪華は雪女だ。だから常に冷気を伴っている。だからって、力を封印するだとかそんな大袈裟なことはしない。する必要がないのだ。

 そんなことより今日はクリスマスだ。年に一度誕生日以外にケーキやピザなどのご馳走があってそしてプレゼントが貰える日……。そんな素晴らしい日だというのに、今日は調理当番でも飾り付け班でもプレゼントの買い出し班でもなく、いつもながら掃除当番……。


 枯葉を箒で掃きながら、傍らで同じ仕事に付いているシフィアに文句を垂れる


「今日くらいいいじゃないですか~なんで掃き掃除当番なんですか」

「しょうがないじゃない、ルーレットで決めてるんだから」

「スマホの奴でですよね」

「そうよ」


 寒い。

 ただ雪華には、まるで溶け出してしまいそうなほどに寒かった――


「今年は私と貴女ですべて掃き掃除しなきゃいけないんだから、頑張らないと」

「軽く拷問ですよ……」


 様々な場所を合計すると、2桁はある清掃場所に目がくらむ。

 まだ2か所目だというのに、腕が痛い……。


「ほら、ちゃんとやらないとプレゼントは渡せないのよ……。主様の命令なんだから」

「でもちゃんと手紙はあげましたし、買い出し班が買ってますよ」

「でも渡すかどうかは、まだ決まってないわよ

「ええ、もう腕が痛いですよ……私には向いて――」

「ほら次行くわよ」

「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」


 そう呻き声をあげるのは、後ろ襟を掴まれたからだった。


 その銀糸の髪が溶け出しそうな冬の空


『ただいまー』


 門から聞こえる声々には聞き覚えのあるもので――


「お帰り……なさい」

「はい、ただいま帰りました」


 複数人のメイド達とカイトと共に、優多達はたくさんの荷物をもって笑顔でそう答えるのだった。

 ただ、その光景が微笑ましくて、ずっと見ていたくて……。


 ふと彼らが過ぎ去った後に頬を伝う風は、自分の冷気以上に冷たい気がした――その次の瞬間、彼は私の名前を呼ぶ。雪華さんと。


「後で手伝ってくれませんか」


 その言葉に、ありもしない妄想を抱きながら、はにかむような笑みを浮かべ。心の底の答え合わせをするように、その言葉を放った。


 ――ええ喜んで、と

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