魔法
彼には魔法が使えなかった。
そもそも魔法とは何なのか。
魔法とは、奇跡である。
魔法とは、奇跡である。
魔法とは、神秘である。
魔法とは、借用である。
どうして魔法が使えるのか、どうして魔法が発動するのか誰にもわかっていない。
だが、老人はある結論を導き出していた。
「魔法とはの、強大な存在に力を借りているのじゃ。火の魔法は火の魔物に、水の魔法は水の魔物に。だからその力は借り物で、自分の力だと誇るのはおこがましい」
「でも爺ちゃん、俺は魔法が使えないよ」
この世界に居るものは基本的に全員魔法が使える。
だが、善悪の感情無く魔法を扱うのは危ないということで、通常は年齢が二桁を超える当たりで親から教えられる。
彼は親から教えられていないのは当然だったが、早めに教えようと老人が手を尽くしたが、ついぞ彼が魔法が使えた痕跡は無かった。
「んーむ、お主は直接ピーターに会ってるからのぉ、世界の生き物から恐れられてるのかもしれんのぉ。まぁ、時がたてば使えるようになるかもしれんから、気長にやるんじゃの。さて、今日は投げナイフのやり方を教えてしんぜよう」
「うん!」
子供ながらの切り返えの早さで、彼は既に興味がナイフに移っていた。
その後ろ姿を見ながら老人はひとりごちる。
『見たところ、魔法が使えないわけでなく、一つだけ使えると言った所かの。じゃが、その魔法は。。。 その魔法のせいで、他の魔法が使えないということのようじゃの。さて、いつ真実を伝えるべきか。。。」
片手間に投げナイフを投げ、全て的に命中させ、彼からの尊敬を浴びながら、老人は悩むのであった。