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彩り日和。  作者: 柊羽ノノ
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雨の日

初投稿です。楽しんでいただけるかどうかはわかりませんが。どうぞ楽しんでいってください。

雨の日①


アラームが鳴っている。布団から手を出してそれを止め、眠そうに体を起こし外を見る。雨が降っていた、九月なのでそんなに珍しくもない。今日は傘がいるなと思いながら自室を出る。リビングへの扉を開くと、母がいた。

「おはよう、卓弥。」

そう言って、テーブルに朝食を並べている。

「おはよ。」

とかえして席へ。今日はトーストとサラダらしい。それらを手早くかたずけて、学校の支度をして家を出た。そして、傘を忘れたのに気付いてすぐに戻る。傘をとって、マンションのエレベーターを待つ。

ドアが開くと、先客がいたので軽く会釈して乗り込む。エレベーターが動き出した。みんな上を向く、何でだろうっていつも思う。

1階に着くとロビーを出ていつもの道へ、でも今日は雨が降っているので傘を差して。そして歩き始めた。向かいにもマンションが建っているので、二つの間を行く。いつもは静かなはずの道には雨音がポツリポツリと鳴いている。左肩が少し濡れた。ため息をつく。

そして、黙って歩いている。すると、後ろから声がする。雅人だ。

「おはよーーーっ!きのうぶりだなっ!」

朝から元気なやつだ。いつもいつもよく見つけるなと思う。

「おはよ。そうだなきのうぶりだな。」

テキトウにかえして、また前を向く。

やつは、雨で濡れた地面をべしゃべしゃと音を立てながら僕の横へと走ってくる。

「なぁ卓弥、今日って現国の宿題あったっけ?」

「知らん、でも、どーせやってないんだろ?」

呆れたように僕は言った。

「そうだな、そんな時間はないっ!」

何故か自信満々に言う雅人。

「何でだ?」

いつもにどうりそうかえす。

「そう!何故ならば、俺には妹がいるからだっっっ!」

「それは理由になってないよ。」

本当に変わらんやつだ、このやり取り何回目だろうとか考えながら、いつもと同じ流れに乗る。

「今日、僕、委員会なんだ。先に帰っとくか?」と僕が聞くと。

「いや、俺は部活があるから。」と彼はかえした。

「じゃあ、俺の方が終わるの早いな。先に帰っとくぞ。」と彼に言う。すると、

「今日こそ、相川さんとお近づきになれるといいな。」

なんてことを言い出す。

「はいはい。」

そう軽く流す。相川さんは、同じクラスの生徒で、図書委員で一緒に仕事をしている静かでおとなしい人だ。

そんなことを言っている間に校門が見えてきた。両脇に傘を差した先生が立っている。しかも、片方は校長先生だ。雨の中ご苦労さまですと思いながら、そこを素通りすると、靴箱に向かう。靴をだそうと扉を開くと、大量ののラブレターがあるはずもなくそこには普通に中靴があった。教室に入ると、相川さんと神崎さんが楽しそうに話している。神崎さんは同じクラスの学級委員だ。それはそれは頭が良い。学年でもトップクラスである。そんな二人を横目に見ながら自分の席へと向かう。すると、後ろから声がする。またもや雅人だ。そういや席が後ろだったことを思い出す。

「おい卓弥、今日宿題ないってよ」

そんなことは知っている。と思いながらも一応驚いたような素振りをする。そして少しして担任の先生がホームルームを始めた。


雨の日②


4時間目は現国。今の時期は夏目漱石の「こころ」を読んでいる。まぁ、そんな事はどうでもいい。ボーッと雨が降っている窓の外を眺めていると手紙が送られてきた。表には「To 河野 From 相川」と書かれている。何の用だよ。本気で分からなかった。開いてみると、女の子らしい可愛い文字でこう書かれていた。

「今日は委員会遅れます。ごめんなさい。」

いや、なぜ今なの。と思う。しかもわざわざ授業中だ。

でもまぁ一応返事を書こうとノートの端を破る。

「分かったよ。先生にも伝えておく。」

無難だろう。僕と相川さんはこのB組の図書委員なのだ。そして前の席の神崎の肩を叩く。すると、ほんとに嫌そうな目でこっちを振り返り、手のひらを出す。はよ渡せってことだろう。はいよと手紙を手渡す。でも、そんな目をしなくてもいいのではないかと思う。送ってきたのはあなたの親友さんですよ。と心の中でつぶやく。ふと、相川のほうを見ると目が合った。僕らは数秒間見つめあって目をそらす。彼女の耳は少しだけ赤らんでいた。


雨の日③

終礼が終わり、みんなが各自のゆくべき場所へと散らばってゆく。

放課後はいつも図書当番がある日以外は普通に帰宅するが、今日はその図書当番がある。なので僕は図書室に向かった。図書室につくとそこには司書の先生以外は誰もいなかった。僕はいつもどうりに、席につくと本を読み始めた。今日は純愛をテーマにした小説だ。ゆっくりとページをめくる。正直に言って、ほとんど誰も来ないこの図書館では図書委員としての仕事はほとんどない。だから、本を読んでいても大丈夫なのだ。そして、僕はこの場所を少し気に入っていた。なぜなら本当に静かな場所だから。学校中でここまで落ち着ける場所はないだろう。

すると扉が開く音がする。相川かなとおもったが、違った。そこには神崎の姿があった。珍しい。そう思いながら返却BOXに本を並べる彼女をチラ見する。神崎がこちらの視線に気づいたようで、こっちに向かってくる。そして目の前で立ち止まった。

「何見てんのよ!」

いや、そこからでも言えただろ、なぜこっちに来る。

「えーっと、あまりにも綺麗だったから?」

「なんで疑問形なのよ!」

「悪かったよ。ごめんごめん。」

冗談を交えて謝っておく。

「今日は柚ちゃん、クラスの仕事手伝ってもらってるのよ。」

おいおい。じゃあなんでお前がここに居るんだよ。

「あんたはしなくていいのか?」

「いや、その仕事をしに来たのよ。」

そう言って、図書室を見渡す。

「そーか、んで、どんな用事だ?」

「えっと、文化祭の劇でロミオとジュリエットをやるからそれの本を探しに来たのよ。」

「ほう、それは初耳だな。」

「あなた聞いてなかったの?ホームルームの時間で多数決したじゃない!」

マジか!ほんとに知らなかった。

「そうなのか。まぁ頑張ってくれよ。」

「いや、あなたもやるのよ!罰として今から一緒にロミジュリの本探しなさい!」

マジかよ、、、

まぁとりあえず探すことにする。といっても、そんなに広い図書館ではないので、それはすぐに見つかった。

「あったぞ、神崎。」

僕はそれを神崎に手渡す。

「ありがと!」と神崎は笑った。

すると、また扉が開く。今度こそ相川だ。彼女は音も立てずに静かに入ってきて、僕達の方を見た。そして、軽く頭を下げて神崎ににっこりと微笑み席について読書を始める。いや、なんか僕に冷たくないっすか。

「じゃあ、私は行くね。」そう言って神崎はスタスタと出口へと向かう。途中で立ち止まって相川さんと何やら話していた。そして、扉の閉まる音がする。

どうしよう。とりあえず座ろうと席へと向かう。

「神崎から聞いてるよ、クラスの仕事手伝っていたんだってな。」

あいさつ代わりにそう言ってみる。

相川は何も言わずに首を縦に振る。頼むから何か言ってくれー。朝は神崎とあんなに楽しそうに喋っていたじゃないか。と思いながら隣の席に座る。この通り、彼女はとても静かなのだ。いや、神埼いわく極度の人見知りらしい。それでも、半年近くも一緒に図書委員やってるんだから少しは話してくれてもいいんじゃないかって思う。教室での席だってそんなに遠くはないはずだ。もしかして、嫌われてるんじゃないか。ああ悲しい。

すると、後ろから声が聞こえた。今度は雅人ではない。司書の先生だ。

「これから会議があるから少しの間よろしくね。」

僕たちは、「はい」と頷いて先生を見送ると、途端に静かになる。

ゆっくりとゆっくりと時間が流れる。それはそれは手に取るようにゆっくりと。僕はついにその静寂ともいえる気まずさに耐えきれなくなった。

「えーっと、今日天気悪いね。」少し声をかけてみる。

「そうだね。」彼女は静かに言った。見ればわかるといわんばかりの声色だった。

「その本、何読んでるの?」そう僕が尋ねると本の表紙を僕に見せてきた。そこには、

「ケーキの恋」と書かれていた。とても美味しそうな表紙だ。可愛らしい。

「なんのケーキが好きなの?」僕は尋ねた。

「ショートケーキ。」彼女は言う。

すると、今度は向こうから問いかけてきた。

「えっと、あなたは何が好きなの?河野くん。」

「なんのこと?」僕は聞き返す。

「ケーキ。」少し不満げに彼女は言う。

「そうだなー。僕もショートケーキかな。おそろいだね。」

彼女はバッと顔を僕と逆の方へ向ける。なぜか彼女の耳はまたちょっとだけ赤かった。

そして、後ろを向いたまま言った。

「じゃ、じゃあ、今度、、、」

「えっ、なんて?」聞き返す。

そうすると、彼女はこっちを振り返って。

「だっ、だから、今度作ってきてあげるっていったの!」

彼女の顔はとても赤かった。まるでショートケーキのイチゴのように。

「あっ、ありがとう。楽しみにしてるよ!」内心とてもびっくりしながら、でもそれを悟られないように僕は言った。正直に言ってめっちゃうれしかった。

そこからは少しケーキの話で盛り上がった。話を聞くと別にケーキが特別に好きというわけではなく、甘いものが好きなようだ。ただ好きなものについて話している彼女はとても輝いていてきらきらとしていた。いつもの僕への態度とは打って変わってとっても明るい。彼女との会話はとても楽しい、そしてなんだか彼女の隣は居心地がよかった。神崎もいつもこんな気持ちになっているのだろうか。時間の流れを早く感じる。このままもっと話をしていたい。彼女との時間は本当にそう思わせてくれた。


雨の日④

放送が聞こえる。時計を見るともう五時半だった。この学校の下校時刻、僕達は帰る支度を始める。窓の外はまだそんなに暗くはなっていない。雨はまだ降っている。二人とも支度が終わって鍵を閉めて図書室をあとにした。二人で廊下を歩く。とても静かだ。雨のノイズと二つの足音が響く。途中職員室で鍵を返して司書の先生に挨拶をすます。昇降口についたあたりで相川が話を切り出す。

「えーっと、家はどっち方面なの?」

「鴻巣島駅のほうだよ。」

「そうなんだ。近いのかもねー。」彼女は笑ってそう言う。

「そうだといいな。」とか言ってみた。

「そっ、そうだね。」驚いて照れる。どんな反応だよ。

昇降口を出るときバサッと傘を開く。相川の傘は赤だった。対して僕のは青。二色の傘が並んで雨の中を歩いていく。校門を出た。

「結局、来たのは最初の神崎だけだったな。」

「そんなのいつものことでしょ。真衣ちゃんが来てくれただけで今日は多い方だよ。」

「そうだな。たくさん来られても困るだけだな。」

「そうだよ。それにわたしだってそうおもうよ。だって、、」彼女は傘で顔を隠す。

「どうしたんだよ。」尋ねてみる。

彼女はゆっくりと傘をあげて言った。

「ひみつ。でも今日はとっても楽しかった。ありがと、河野くん。」頬が少し赤かった。

「いえいえ、こちらこそありがと。」僕だって楽しかったのだ。お礼を言う。

そんなことを言っているうちに家が見えてきた。そういえばこいつはこんなところにまで来て大丈夫なのかと思ったので聞いてみる。

「家はどこなんだ?ここまで来て大丈夫なのか?」

すると彼女は僕のマンションの向かいのマンションを指さして言った。

「大丈夫だよ。だって、私の家はあそこの四階だから。」

マジかよ。

「あなたこそ大丈夫なの?」こっちをのぞき込んできいてきた。

僕は同じように彼女が指さした向かいのマンションを指さして言った。

「いや、大丈夫も何も、僕の家あっちの四階だから。」

えっ、マジかよという顔できょとんとしている。

「何で今まで一回も会わなかったんだろうな。」そう言ってみる。

「なっ、何でだろね?」おいおい何でちょっとにやけてんだよ。

二人の家の下につく。彼女は何か言いたそうだった。

「どうしたんだ?」

また、傘で顔を隠した。そして言った。

「あ、明日一緒に行きませんか?学校。」

今日話してみて楽しかったし、もっと話してみたいとも思っていたので。断る理由はなかった。

「いいよ。喜んで。」

「ありがとう!」今度は僕の目を見てそう言った。

どんだけうれしいんだよ。少し目が潤んでいた。

「えーっと、じゃあ、また明日ね、河野くん。」彼女は手を振りながら言った。

「そうだな、また明日な。相川。」僕も手を振り返す。

二つの傘は別々の方向へと別れていく。

僕は少し振り返った。すると彼女と目があった。二人ともパッと目を逸らす。少し胸が熱くなった。






楽しんでいただけたでしょうか?楽しんでいただけたのなら幸いです。実はこれが初めて書いた作品なんです。これは現実の季節とは関係なしにストーリーを進めていくつもりです。これからもよろしくお願いします。

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