男だが長年伸ばしてきた髪を切ろうと思う。
私は髪が長い。
肩甲骨の下ぐらいまで伸ばしている。
男なのになぜ髪を伸ばしているのか。
バンドをやっているわけでも女装趣味があるわけでもない。
では、なぜ髪を伸ばしているのか。
私は顔がでかいのである。
頭、顔、頭部全体が巨大である。
お値段の高い密閉型のヘッドフォンをつけると孫悟空の緊箍児のように締め付けられ三十分持たない。
激痛である、その後しばらく痛みが続く悲しみのデカヘッドなのである。
髪を伸ばすのはでかい顔から目をそらすためなのだ。
なぜ、そんなことをするのかというと単純な話。
モテたいのだ。
私は顔の作りが残念でモテた事がない。
小学校時代、運動ができる男子はモテた。
私は学年で一番足が速く、サッカークラブに所属している生徒よりサッカーがうまかった。
しかし、バレンタインでチョコをもらったことなど皆無である。
サッカークラブの〇〇君は私より足が遅く、サッカーが下手だったがほかの生徒よりはうまかった。
モテモテである。
解せぬ。
いや、わかっているわかっていたのだ、理由は顔だ現実は非情である。
専門学校に進学と同時にヒゲを生やしてみた。
意外と評判がよかった、下の中から中の下ぐらいにはなったらしい。(友人談)
私は身長は普通だが体格がよくヒゲを生やすとワイルド系?になってマシになるらしい。
余談だがサウナに行くとモテモテだった(同姓に)、全くうれしくない。
身なりに気を使い漸く嫌悪感を出されず異性と接することができた。
クラスのイケメン君など寝起きで無精ひげ髪ボサボサでも女子に囲まれていた、ぐぬぬぬ。
恋人ができても長続きしない、冷静に考えれば私の性格のせいなのだがクラスのイケメン君は好き放題していたが振られることはなかった。
劣等感を拗らせた私はDNAの呪いである頭部の巨大さに対抗する手段を模索した。
少しでも外見を良くしてモテたかったのである。
そしてたどり着いたのが長髪だったのだ。
ヒゲに長髪、アウトロー感ただよう外見で人を選ぶが清潔感さえ心がけておけば好みにはまる人には強い、イケメン君に相談するとそうアドバイスされた。
早速実行すると恋人ができた、イケメン恐るべし。
それから長髪を長年続けている。
社会に出て髪を切る覚悟をしたが、就職先の工場や、そこがつぶれて派遣で働いている今の工場などはヒゲを生やしている人も多く、私はマスクをして髪をしばり帽子に全部まとめていれている。
中途半端な長さで帽子から髪の毛がはみ出ている人よりよっぽど衛生的である。
もっとも、食品や精密機械を扱っているわけではないのでそこまで気にしなくてもいいのだが。
そんな感じで長年長髪を続けてきたのである。
もちろん、モテたいという気持ちもあるが、若いころよりかなり減っている。
もはやモテるためというより、長年そうだったから無いと違和感を感じるのでそうしているといった感じである。
そんな私は長年連れ添ってきた髪を切ることにしたのだ。
別に失恋したわけではない、DNAの呪いがまたひとつ発動したのだ。
そう、「ハゲ」である。
M字ハゲ、リアルタイムで進行中、ずっと目をそらしてきたがもう自分に嘘はつけないのだ。
生え際があがって来ている、馬鹿な!まだ早い!そうやって現実から目を背けてきたがもう自分はだませない。
その事を友人に話すと「そりゃ髪の毛しばると引っ張られるし、帽子の中で蒸れるし生え際もあがるでしょw」と言われたのだ。
まったくもってその通りである。
悩んだ、長年連れ添った愛着のある髪を切り、デカい頭部を晒すか、長い友と書く髪を大事にするためにこのままにするか。
すると、友人がこう言った「別に長髪でもお前の頭でけーよ、気をそらすどころかもっとでかく見えるわ」十年遅い!もって早く言ってくれ(涙)
週末、長年伸ばしてきた髪を切ろうと思う。