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4話

 僕が戦わないといけないのはさておき、僕もニミ同様総合ギルドへ席を置くことにした。総合ギルドは様々なギルドからの依頼を一挙にまとめている場所らしい。アルバイト情報サイトみたいなものだ。

 仕事もピンきりで、薬草採取のように子供でもできるような……いやこんな魔物が出る場所へ子供を送るのはどうかと思うが、然程特別難しいというわけでもないだろう。そんなことから、強大な魔物の群れを退治するような仕事まであるらしい。


「それじゃ薬草見つけようか」

「うんっ」


 ギルドのことはさておき、ニミの依頼をこなさねば。それから町だ。

 町も楽しみだな。ワクワクしっぱなしだ。



「じゃあニミが薬草を探している間、僕が周囲を警戒するよ」

「お願い!」


 ニミは深々と頭を下げ、それから薬草を探し始めた。草をむしっている姿もかわいいな。僕を表紙買いさせただけのことはある。



「んっ、魔物!?」


 ニミが突然怯える。僕にはなにも感じない。凄いなこの子、魔物センサーでもあるみたいだ。

 そして現れたのは、先ほどと同じ魔ウサギだった。戦闘値は125。さっきより低いのは個体差だろう。この程度ならなんとでもなる。


「ニミ、応援よろしく!」

「うん!」


 ニミはリュックからポンポンを取り出し、振りながら応援を始めた。


 『あなたへの応援が届きました』


 毎回これ出るのは煩わしいな。なんとかならないか……。なんか右上に『?』がある。選んでみよう。


 ────ふむふむ、相手とリンクすることでなんとかなりそうだ。


 『ニミとリンクしますか?』『Y』『ニミからの応援が届きました。受け取りますか?』

 これで下の『今後このメッセージを表示させない』にチェックをし、『Y』だ。これでOK!



 ……ふう、呆気なく倒せたな。──っと、レベルアップきた! これで勝てる!

 『あなたはレベル2になりました。戦闘値が1上がりました』

 ……しょぼかった。


 1ってなんだよ! 応援されても端数切り捨てだよ!


 『応援がレベル2になりました』

 おっ、待ってました!

 ……あれ? それだけ? 他なんもなし? ……がっかりだよ!


 『最適装備がレベル2になりました。最適装備を出現させられます』

 来た! さすが最適装備先生! 一度出せば永続して出現させられるのはポンポンでわかっている。よし早速出すぞ。


 『チアコスチューム上(赤)・応援力を1.2倍』

 上だけって微妙だけど来た、更に1.2倍! これで1.6倍だ! 僕の戦闘値は160を越える。


 ……あっ……。


「ねえニミ。スカートかズボン持ってない?」

「えっ? ないよ」


 そっかぁ、ないかぁ。仕方ない、ワンピースの上から……。

 『警告:この装備は同ヶ所重複禁止』

 う、ぬぅ。どうやら下にも着ることができなさそうだ。

 しかし1.2倍アップはどうしても欲しい。こうなったらニミに買わざるをえない。


 ──── いや違う! 更にレベルを上げればいい! きっと次はスカートが出るはず。それで1.8倍になると予想される。僕の戦闘値は……187くらいになるな。

 あとちょっとで200じゃないか。よしがんばろう。




「あの、もう薬草採り終わったよ」

「ぬぐぐ、そっかぁ」


 結局あれから魔ウサギは出なかった。守株だったな。

 そりゃそうか、そんなしょっちゅう出るような場所へ、ニミみたいな子を行かせる依頼が来るわけがない。


「ちなみに薬草採りでどれくらい儲かるの?」

「えーっと、この量なら1日過ごせるかな」

「宿で?」

「宿?」


 ニミが首を傾げる。

 ……なんてことだ。こんな可愛い子が野宿。僕じゃなくても誰かが持ち帰る可能性高いぞ。今までそうやって暮らしていたというのならば、なんて運のいい子なんだ。

 だけど今後はそんなことさせない。魔ウサギも倒せるし、他の魔物も倒せるかもしれない。そうなればもっと稼げるはずだ。


「そういえばあの魔ウサギって売れるの?」

「魔ウサギ?」

「……僕が仕留めた魔物」

「ニーバのこと? どうなのかな……。総合ギルドへ持っていけばわかると思う……」


 わからないか。一応時計に入れておいてあるけど、駄目ならどこか墓を掘って埋めてあげよう。


「とりあえず帰ろうか」

「うんっ」


 こんなところで考えていてもわからないままだ。実際に持って行ったほうが早い。



「ところで充輝さんは神様なの?」

「僕はただの人間だよ。ちょっと神から力をもらっただけかな」

「か、神様から力を!? それでも凄い!」


 うおっまぶしい! ……まではいかないが、ニミの瞳はほんとよく輝くな。僕のような汚れた大人にはきつい。

 ……いや見栄はった。僕はまだ大人じゃない。だけど汚れているのは確かだ。なにせニミを持ち帰れるという理由でここにいるのだから。

 でも無理やり連れて行こうだなんて思っていない。最後はニミに決めてもらう。もしそれで断られたら仕方ない。ふたりの思い出だけ持って帰るさ。

 ……ごめんかっこつけすぎた。帰ったあとは泣き喚き、そのまま使いものにならない人生を過ごすことが確定している。


 それはそうとして、目下の問題は今日の宿だ。ニミを野ざらしになんてさせられない。もちろん僕だって嫌だ。

 だけど先立つものがない。売れるものがあればいいんだけど、生憎……って、ポケットに財布あるじゃん。これで……金が使えるわけないじゃないか!

 いや違う。そうじゃない。これは金じゃなくて美術品として売るんだ。今の紙幣は虫メガネでも見るのが困難なほど緻密だ。現代印刷技術の粋と言ってもいい。きっと売れるはずだ。

 あとおじさんからもらった1ユーロコイン。これも多分こちらの技術では作れないから売れるだろう。


「────あの、充輝さん?」


 やばっ、考え込んでしまっていた。なんの話だったかな……あっ、そうだ。僕が凄いという話だった。


「いやそれだったらニミだって凄いよ。なにせ神に勇者として選ばれて、こうして力を持つ人が遣わされているんだから」

「そういえばそうだね……」


 ニミは自分の凄いにあまり気付かないタイプなのかもしれない。




 そんなわけで町に着いたのだが、僕の思っていたファンタジー町とはちょっと違う。といっても完全に違うわけじゃない。

 町は壁に囲まれているものだと思っていたが、現在絶賛制作中だ。これから壁に囲まれた町になるのだろう。

 ニミから話を聞いたところ、どうも魔物は元々人里に現れて襲うようなことはなかったらしい。それが一年前くらいから人々を襲うようになったと。だから今慌てて壁を作っているみたいな感じ。


 とりあえず警備はいるが、門がないから門番みたいな人がいなく、するりと町へ入ることができた。うん、町並みはいい感じにファンタジーしていた。


 そんなわけでやってきた総合ギルド。あちこちに掲示板があり、色んな紙が貼ってある。そして奥には受付カウンターが。行ったことないけどハ◯ワってこんな感じなのかな。


 奥へ入っていくと、受付にいた綺麗な人がカウンターから飛び出し、長い髪を振りながらこちらへ走ってきた。


「ニミちゃん無事だった!? 疲れてない? 怪我とかしてない? 大変じゃなかった?」

「うん、ありがとう」


 えらい剣幕だ。過保護だなぁ。

 と、突然ニミの隣にいた僕を睨みつけると、急に襟首を掴み部屋の隅に押しやった。やばい怖い!


「……テメなんだクラァ」

「な、なんだって言われても……」

「ニミちゃんのなんだって聞いてんだボンクラァ! 耳腐ってんかい!」


 くっ、この人ニミの愛好家かっ。これは厄介だぞ。


「ま、まあ落ち着いて。僕は神に頼まれてニミのサポートを……」

「フカシこいてんじゃねーぞ! んな話誰が信じんだよ!」


 うん知ってる。僕自身も胡散臭いと思う。だけど本当のことなんだから仕方ないじゃないか。

 それにニミは信じてくれた。それだけで満足だ。

 ……だけど今はそんな場合じゃない。


「どうすれば信じてもらえますか?」

「どうもこうも……あっそうだ。ちょっとこっち来やがれ」


 来やがれもなにも引き摺られていっているわけだが……。

 そして受付横に連れて行かれた。なんだかよくわからない金属板が置いてある。


「おらこれに手を乗せやがれ」

「はっ、はい」


 恐る恐る金属板に手を載せると、色々な文字が板に浮かび出てきた。


「なになに? レベル2……ププッ。戦闘値……104!? ブフーッ! なにこれあんた貴族の箱入り娘かなんか?」


 う、うっさいな! 一応男だよ! それを言ったらニミなんて……いやニミはそれでいいんだ。か弱くても問題ない。


「それで職業はもちろん無しょ……えっ?」


 えっ? なに? なんなの?


「……神の使徒……? まさか、そんな馬鹿な……」

「聖職者……みたいなもの?」

「神の使徒は神様自らでないと与えられないはず……。で、ではてめー……いや、貴方様は……」


 おお、なんかステキそうな職を与えてくれたみたいだ。神グッジョブ。


「うん、まあさっきも言った通り、ニミを助けるため──」


 最後まで言う前に、受付さんは俺の手を掴み板から離し、周りをキョロキョロと見回して誰も見ていなかったのを確認してほっと胸を撫で下ろした。


「あの、なにか?」

「先ほどの無礼、申し訳ございません。そしてこのことは私の心に留めておきます。なので今のことは公言しないようお願いします」


 小声でこっそり伝えてくる。僕としては疑いが晴れればいいんだけど。


「このことって?」

「神の使徒ということです。他に知られたら、貴方様やニミちゃんを利用しようと考える、よくない輩が現れるかもしれません」


 そんな大袈裟なとは言いづらい。受付さんの顔は真剣だ。今までの流れからして、この人は本当にニミのことを心配しているのだろう。ならば信頼してもいいかも。


「ありがとう。忠告はちゃんと聞いておくよ」

「それと、ここで仕事を受けるときは、私を通して下さい。できるだけ都合付けますから」


 それはありがたい。


 順調まではいかないが、少しは楽になったような気がする。

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