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35話

 ちょっとよそ見をしている間にこっそりと逃げたらしい。まいったなぁ。

 ……ま、いっか。どうせなにもできまい。王亡き今、彼女はただの人だ。

 いやまてよ、正当な後継者という名目で彼女を保護し、どこぞの貴族が台頭してくるかもしれない。

 そうなるとまた厄介なことになりそうだ。


「チニーズとはなんでしょう?」

「ああ、ここの姫だった奴だよ。隙きを見て逃げ出したらしい」


 すると有事院はニヤリと笑う。


「おーっし、そいつ捕まえてやんから、そっちは情報! これで貸し借りナシってんでどうだ!」


 別に僕らだけでも充分に捕まえられる。ラッティがいるからね。ラッティを使いたいからね!

 だけどそれで彼らが納得してくれるならそれもいいかな。


「じゃあ任せるよ」

「うっしゃコラやったるぞ! HEY YO!」


 有事院は突然リズムをとり揺れ、両手をフレミングっぽくさせくるくる回し踊りだした。


「そこのお前 どこのお前? さっきまでここにいた もうどれくらい? 戻れCRY 逃げたままじゃいられない YO!」


 えっ、なにそれラップ? なに? 急に歌うよ? 意味わからん。


「ぬはううぅぅぅ」

「ええっ!?」


 逃げたはずのチニーズがビデオの逆再生のように戻ってきた。なにその能力! ……あんま欲しくないかも。


「よ、よおしよくわからないけど確保だ! ルーミー!」

「任せるであります!」


 一瞬のうちにルーミーはチニーズを縛り上げた。さすが手慣れている。


「どうだオイ、俺の『巻取り』はよぉ!」

「え? 巻取り?」


 彼の持っている能力のひとつで『巻取り』というらしい。手を回すことにより対象の動作を戻す能力。

 ……歌詞と踊りいらないじゃん! まあ本人がそれでいいってのならいいんだけど。

 だけどこれでチニーズは逃げられないし、いいか。




「──はぁ? おれんレベルを上げろってか?」

「そういうことだね」


 僕は今より強くなる方法を教えた。なんだかんだいって僕らが戦わなければいけない現実。


「んな話聞いてねーぞ!」

「僕だって聞いてないよ。ちょっと戦わないといけない状況になって、戦ってみたらレベルが上がって能力のレベルも上がったんだ」

「……しゃーねえな。ちょっとやってみっか。丁度剣とか振ってみたかったんだわ。んでよ、おめー他の奴に会ったっつったよな」

「ああうん。ほらあの泣いてた子」

「おーあの子か! 覚えてる覚えてる。元気そうだったか?」

「一応ね。あっ、ウインドウ機能ってある?」

「ん? ああ。いっちゃん捕まえやすい能力だったからな。みんな持ってんだろ?」


 ……僕はそれすらも捕まえられなかったよ。


「ちょっと待ってね」



 >おーい紫電さーん

 紫電玲良:えっ、急にどうしたの?


 紫電さんだっていつも急じゃん。というかシステム的に急なのは仕方ない。


 >召喚者と勇者候補見つけたよー

 紫電玲良:え! 誰!?

 >えーっとね、ギャル男っぽい人

 紫電玲良:あー

 紫電玲良:どんな感じ?


 いやどんな感じとか言われてもわかんないから。


 >紫電さんと同じでレベル上げしてなかったよ

 >今その話してたとこ

 紫電玲良:へー。じゃあやっぱ私が今のとこ一番かぁ

 紫電玲良:今どこにいるの?

 >シーンストン王国だよ

 紫電玲良:どこそこ。ちょっと待ってて


「なあおい、なにしてんだ?」

「ああ、その子とフレ録してあるからチャットしてる」

「マジかよずっけえ!」


 いやずるいとかそんなのないから。


 紫電玲良:ちょっと! シーンストンって凄く遠いじゃない!

 >うん。急いで潰したかったからさ

 紫電玲良:え? 潰すってなに?

 >たった今、国を潰した

 紫電玲良:ごめん意味がわからない

 >宮殿を破壊して国王を文字通り潰したよ

 紫電玲良:……ごめん理解できない


 言っている僕としても、突然国を潰したとか言われたら理解に苦しむだろうな。


 紫電玲良:なんかそのこと話したら王様大笑いしちゃったよ

 紫電玲良:今夜はごちそうだってさ! やったね!

 >いいなぁー


 あそこのごちそう本気で美味いもんな。羨ましい。やったのは僕らなんだから少しくれてもいいんじゃない?


 紫電玲良:ちょっと待ってね。なんか言いたいことあるっぽいから、聞いたまま打つね。

 >おけーい



 王様たちは例の御者と帝国の姫から襲われた一件を聞いていたらしい。前王の時代……つまりさっき潰した王が王子だったころからあまり関係は良くなかったようだ。というか前王は別に敵対しようとか考えてなかったんだけど、潰王がそれを気に入らなかったとかなんとか。

 代替わりしたからなんとかしようと周辺国へ秘密裏に話をしていたときに帝国の姫襲撃事件。こうなったら帝国と話をしてシーンストンへ戦争を起こそうという流れになったところで僕の話が舞い込んできたと。こんな感じの話だった。



「おーいまだかよぉ」

「ご、ごめん。ちょっと待ってね」


 なんだかんだで待ってくれてる有事院は結構いいやつかもしれない。


「姫様、今日はなんか王様が祝宴だって」

「なぬっ! ワラワがいないところでそのようなことを……許せん。ミツキ、報告もあるから一旦戻るぞ!」


 ああ、手を出さないって話とかもあるからね。それにごちそう食べたいし。


 >とにかく僕らも一度そっちへ戻るよ

 紫電玲良:おっけー。王様に言っとく


 よしこちらはこんな感じでいいだろう。


「ごめんごめん待たせちゃって」

「べっつにいいけどよ、なんでおめー女の子いっぱい連れてんだよ。しかもなかなかいい趣味してやがんぜ特に足とか足とかぐごげっ」


 ランにグーで殴られた。うーん、アホだなぁ。


「女性の足を見るなんてはしたない真似をしないで下さい」

「ち、ちっげーよ! おれらの世界じゃああいうのは見せるために着てんの! だから見てやんのが礼儀なんだって! なっ!」

「えっ!? あ、う、うん……」


 思わず肯定してしまったが、実際のとこよくわからん。ただ見られたくないなら着なければいいんだし、こういう話になると『あんたに見せるためじゃない』って返されるっぽいけど、勝手にそういう格好で公衆の面前に現れておいて、見るなっていう方も失礼だよね。


「そうなのですか。おかしな世界ですね」

「えーっとうーんっと……女性は見られることを意識すると体型とかに気を使うようになるんだよ。で、やっぱ周りから綺麗だと思われたいから努力するんだ。そんな感じで見られるというのは自分のためでもある、んじゃないかな……」

「なるほど、それは一理ありますね。でしたら確かに見て差し上げるのが正しいですね」


 ランが納得してくれた。そして有寺院はこっそり耳元ででかしたと褒めてきた。これで心置きなくみんなの足が見れるって? 見ないでよ、僕のだぞ。


「それでさ、僕らは一度元の国へ戻るよ。ウインドウ機能あるんだったら一緒に来れば紫電さんとフレになれるんじゃないかなぁ」

「おおそうだ! やっぱよー、情報やりとりできる人間欲しかったんだよなー」

「そうですね。私も最近頭打ちになっていた感じがしたので、意見交換などしたいと思っていました」


 よしふたりとも来てくれる感じだ。よし戻るぞ。

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