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30話

「えーっと、それでは……私も充輝さんの世界の常識を知らないので、どこから話したものか……」

「うぬぅ」


 少し困ったようにナルが言う。そうだよなぁ、当たり前のことを言ってみろって結構難しい。

 比較しようにもどこがどう違うかわからないし、当てずっぽうに言うのも大変だ。


「……ちなみに充輝さん。充輝さんの世界での女性の年齢別結婚率はどのような感じですか?」

「うーん、なんで?」

「充輝さんが、私たちとその……夜を共に過ごさないことを、年齢のせいにしている傾向があります。なので恐らくは晩婚が当たり前なのではと推測しました」


 さすがナルだ。目の付け所がいい。


「僕の世界では……うーん、多分一番多いのは20代の結婚じゃないかな。10代なんて20%もいないかもしれない」

「やはりそうですか。この世界では80%以上の女性が10代で結婚をしています。20過ぎても結婚していないのは、ほとんどがなにか問題があってあぶれたか、ガチレズしかいません。その根拠に、20過ぎの初婚率は1%しかいないからです」

「そんなに……。ちなみに男は?」

「男性の90%以上が10代で結婚しています。もちろん生きていることを前提にですが。ちなみに平均的な妻の数は男性ひとり辺り2.3人という話です」


 想像以上に高かった。てか一夫多妻なのにまだ男の数が足りてないんじゃないのか?

 あとは一夫多妻であるが故、未亡人率も高いそうだ。でも一夫一妻ならまた夫を必要としなくてはならないところ、妻同士で協力することで子育てにも支障がでないというメリットもあるとか。なるべくしてなった制度とも言えるのだろう。


 あとはナルの言っていたこと。10代で結婚できないということは、どこかしらに問題があるというレッテルを貼られてしまうわけだ。それは確かに避けたい事態だ。

 なるほど、これなら若い女の子が早いうちに結婚したがる……というか、必死になるのもわかる。


 ……そういえば以前、荒くれさんたちに優しくされたとき、若い男は国の財産だから大切にしないといけない的なことを聞かされた気がする。だから親切にしてくれたんだろう。あのときは酔っ払いの戯言程度にしか思っていなかったが、なるほど理由がわかれば納得だ。

 それに武器屋の人たち。若い男が無残に死ぬのを止めたいから、あえてきつく当たっていたのかもしれない。そう考えたらとても申し訳ないことをしてしまった。


 そしてそんな考えのなか、ひとつ仮説が立った。


「つまり女性はなんとか結婚しようとして、男性の言葉に意味を持たせて婚約したという事実をでっち上げる風習ができたといった感じじゃない?」

「……はっきり言われると身も蓋もないですが、そう言われてしまうとそうなのだろうという気がしますね……」


 優良物件であればなんとしてでも手に入れる。ナルのお母さんが教えていたことは偏っていたわけじゃないようだ。

 そして優良物件らしき僕にくっつこうと考えるのは当然な成り行きなのだろう。


 で、ここでロリコニウス6世のことを思い出した。話を聞いたところ、未成年で結婚は当たり前のように感じるのだが……いや待てよ。


「ねえ、この世界の成人っていくつなの?」

「ピー歳ですよ」


 なんだってー!? じゃ、じゃあみんな成人じゃないか! そっか、成人なら夜営んでも問題ないのか。


「……ちょっと待てよ、ルーミー」

「はっ! なんでありましょうか!」

「以前、僕をロリコン扱いしたよね」

「い、いえ、あれはその……」

「なに?」

「申し訳ありません! まさかニミ殿が成人していたとは思ってもみなくて……」


 おっ、遠回しにニミの成長にケチつけたぞ。


「ルーミーさん」

「な、なんでしょうかニミ殿」

「降格」

「ひ、ひいいぃぃぃっ」


 ルーミーがムンク作の叫びのような表情になっている。まあ自業自得だ。


「に、ニミ殿にそのような権限があるのでしょうか!?」

「ないの?」


 ニミが僕の顔を見て訊ねる。


「もちろんあるよ。当然じゃないか」


 このパーティーはニミ中心。ニミは言うなれば永久名誉妻だ。僕よりも偉い立場なんだから、僕の行使する権力は当然使える。


「降格」

「うひいいぃぃぃっ」


 ニミが追い打ちをかける。でも気にしなくていいよ、今の成長が著しくないニミも大好きだから。


「これが……第一妻の力……」

「無理に驚愕しなくていいからね姫様。この権力は内々でしか意味ないから」


 第一妻にあるオプション的な力ではなく、ニミの力だ。例え姫様が第一妻になったとしても、同じ権力を得ることはできない。大体そのときには更に上の零式妻ニミがいるのだから。


「とにかくそういうことなんで、僕も言動には注意するし、女の子の言葉はなるべく裏を読むよう努力するよ。もし迷ってたら、その都度教えてもらえると助かる」

「私たちもこれ以上増えられても厳しいので、そうして頂けるとありがたいです」


 今までやってしまったことは仕方ない。だけど今後はきっと大丈夫。


「しかし最たる問題として、これでもまだ魔王に届かないということだな」


 チールさんの指摘が重くのしかかる。もう既に僕の最大戦闘値は210万ほどになるが、これでも魔王の50分の1。デコピン程度でも死ぬ。

 どうにかして嫁でない仲間を増やさねばならない。困った……。


 紫電玲良:やっほー


 変なタイミングで紫電さんからチャットが来た。なんだろう。


 >どうしたの?

 紫電玲良:えっとね! チャーウィングが大雷山のレッド・ラゴンを倒したの!

 >それは凄いの?

 紫電玲良:当たり前じゃん! 戦闘値11万だよ! ギリギリだったけどなんとか勝てたよー

 >11万かぁ、凄いじゃん。おめでとう


 言えない。嬉しそうに言っている紫電さんに、僕はその20倍はあるよだなんて。


 紫電玲良:うん! これでようやく汚名をそそいだって感じだよー。

 >そそいでどうするの。すすぐだよ。

 紫電玲良:どう違うの?

 >そそぐはほら、お茶とかをコップにそそぐって言うでしょ。すすぐはすすぎ洗いとか。

 >汚名なんだから綺麗にしないと。

 紫電玲良:そっか。とにかくこれで王様も大喜び。もうそろそろ魔王倒せるんじゃない?


 魔王を倒す……。

 それは駄目だ。今行ったら確実にまずい。紫電さんたちをむざむざ死なせたくはない。


 >……ごめん、紫電さん。

 紫電玲良:なんで謝るの? まさかもう倒しちゃったとか!?

 >それはないよ。僕らは当分無理だって諦めたんだから。

 紫電玲良:えっ? それ私たちにとってはありがたいけど……なんかあったの?

 >実は遠くからなんだけど、魔王を見たんだ。

 紫電玲良:え!? なんで!? どうだったの!?

 >魔王の戦闘値、1億だった

 紫電玲良:はあ!? バカじゃないの!?


 僕に言わないでくれよ。


 >とにかく伝えたよ。僕も紫電さんやチャーさんに無駄死にして欲しくないから。

 紫電玲良:あ、うー、ありがと。それでなんで謝ったの?

 >レッド・ラゴン倒して喜んでたところにがっかりする話しちゃったから。

 紫電玲良:あー、うん。でも知れてよかったよ。私たちももっと強くならないと。

 >僕も。今のまま戦ったら3秒以内に死んじゃうし。

 紫電玲良:それじゃまた情報交換しよーね!


 情報交換って、チャーさんが魔物倒したよって話に重要性はこれっぽっちもないんだよなぁ。


 まあいいや。とにかく僕らは僕らで頑張ろう。まずは仲間探しだ!

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