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3話

 トンネルを歩きながら色々考えていた。

 能力はレベル1と書かれていたから、きっとレベルを上げれば更に能力が向上するんだろうと高をくくっていたのだが、僕らはどうやってレベルを上げればいいんだ?

 あれかな、パートナーとパーティー的なものを組めば敵を倒したとき経験値を分配してもらえる系なんだろう。

 とにかく最初のうちは色々と試したほうがよさそうだ。もう考えている時間もないしね。



「────と、到着ーっ」

「ふきゃっ」


 なにか悲鳴のような叫び声が聞こえた。

 足元を見ると、あの子がいた。やったーかわいい! 実物もかわいい!

 僕が突然現れたせいでびっくりして尻もちをついてしまったんだろう。


「驚かせてごめん。僕は真明日まあす充輝みつき……じゃなかった。充輝・真明日。きみは?」

「あっ、えっ……、あ……ニミ。ニミ・デイズ」


 僕が差し出した手を掴み、立ち上がりながら彼女が言う。手ちっちゃい! ニミって名前もかわいい! なんかこれだけでやる気MAXだ。

 ……だけどこんな子に戦わせて、自分は見てるだけってきついな。


「えっと、それで……」

「僕のことは充輝でいいよ。それでなにかな?」

「う、うん充輝さん。あなたは一体?」

「うーん、別に口止めされているわけじゃないからいいのかな。僕は神に頼まれてきみの魔王退治の手伝いに来たんだ」


 本当のことなんだが、とても胡散臭い。こんなの信じるわけがないよね。


「あ……ありがとう! ほんとに、ほんとに来てくれたんだ!?」


 うわぁ、目をキラッキラさせてる。純真かわいい。

 ん? ほんとに来てくれた?


「……あれ? もしかして知ってた?」

「あっうん」


 そっか。じゃあ疑る必要がなかったわけだ。話が早くて助かる。神グッジョブ。


「ええっと、それでこんなところでなにをしてるの?」


 見たところ町ではない。てか町で突然人が現れたらニミ以外の人も驚いていただろう。

 ここは……なんだろう。田舎のあぜ道みたいなところ。一応街道なのかな。馬車らしきものが通ったような跡がいくつかある。


「医薬ギルドからの依頼で、あの森に薬草を採りに行くんだよ」


 おおぅ、初心者用クエストっぽいやつじゃないか。てことはかなり低レベル? これはかなり時間がかかりそうだ。

 向かう先は多分、この道から外れたところに見える森のような場所だろうか。


 とりあえずここで立ち話していても無駄に時間を使うだけだ。森に向かいながらのほうがいいだろう。


「それで僕のことはどうやって知ったの?」

「ええっとね、教会に行って神様にお願いしたの。みんなの敵を取らせてって」


 物騒なお願いだけど、きっと家族……いや、家族だったらお父さんとかお母さんって言うだろう。みんなと言っているのだから、村とかが魔物に襲われた系なのかな。酷い話だ。

 どこからか手に入れた短剣を持ってひとり旅に出る……。かなりの覚悟をしていることだろう。


 これは手を貸してあげないと。こんな弱々しい少女が必死に戦おうとしているのだから。




「────魔物!?」


 ニミが突然振り返り、体を震わせた。えっ、魔物!? どこ!?

 僕がキョロキョロしていたら、少し離れたところにある茂みからガサゴソと音がし、どでかいウサギみたいなものが飛び出した。目が凶悪そうで、げっ歯類ではないらしく、牙を生やしている。


 奴の戦闘値は……127。僕は103だから勝ち目はない。そういえばニミは? ……げっ、93!?

 戦闘値は戦闘に関わる数値をよくわからない計算で弾き出したものだ。僕の『応援』は1.2倍。ニミでは120にも届かないじゃないか。見た目それほど強そうじゃないのになんて強敵なんだ。


 ニミは震えながら剣を抜き構える。


「ひゃえぇぇ!」


 情けなかわいい声と共に振った。だが魔物……仮に魔ウサギと呼ぼう。そいつにあっさりかわされ、蹴り飛ばされた。


 そ、そうだ、応援だ! ……それでもむりそうだけど。

 こうなったら仕方ない。最適装備だ!


「いでよ!」


 僕の声に反応し、光の中から出てきたのは……ポンポンだった。

 どこが最適装備だ! ふざけんな!

 そう思い叩きつけようとポンポンを乱暴に掴もうとしたら吹き出しが現れた。


 『応援のポンポン 効果:応援力を1.2倍』


 マジか!? すげえ! 更に1.2倍ってことは1.4倍か!

 ニミの戦闘値が93だから……130! ぎりぎり勝てる!


「ニミ、がんばれ!」


 僕はポンポンを振りながら必死に応援した。だけど全然駄目だ。また蹴飛ばされた。ええいこの役立たずめ!

 ポンポンは投げ捨て、ニミの傍へ駆け寄る。


「大丈夫!?」

「う……うん……」


 言葉とは裏腹にとても痛そうだ。もうこの子に戦わせたくない。僕は剣を取ると魔ウサギに構えた。


「あとは僕に任せて!」


 とはいうものの、僕もこいつに勝てるわけじゃない。でもニミがこれ以上辛い目にあうところを見たくない。それだったら僕が戦ったほうがマシだ!


「う、うん……がんばって」


 そのとき、目の前に文字が現れた。


 『あなたへの応援が届きました。受けますか? Y/N』


 な、なんだこりゃ?

 ……今まで自分の能力がなんかひっかかっていた。まさか、まさかとは思うが、僕の能力は『相手に応援で力を与える』のではなく、『相手に応援の力を与えられる能力を与える』ってこと!?


 と、とにかくそれは後だ。今は魔ウサギをなんとかしないと。

 とりあえず『Y』を選ぶ……おおお!

 すげえ、力が湧き出す! 剣が軽い!

 振った剣が魔ウサギを捉える。が、ギリギリかわされてしまう。くそ、もう一歩か……!!


「ニミ! そこのポンポンを拾ってもう一度応援してくれ!」

「ぽ、ポンポン?」

「そこの草みたいなやつ!」

「これ!? うん!」


 ニミはポンポンを拾い、シャラシャラと振りながら応援してくれた。


 『あなたへの応援が届きました。受けますか? Y/N』


 もちろん『Y』だ! うわぁ、これは凄い!


 僕が振った剣は魔ウサギを真っ二つに切り裂いた。すげえ、応援すげえ! これでレベルが上がればもっと凄いことに……!



 ……あれ? これ戦うの僕じゃね?

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