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28話

「で、お主の考えとやらを聞かせい」


 高速離脱、みんなで走って凡そ時速60キロ程度。3時間ほどで町に戻った僕らは宿で会議を始めた。


「まず暫く魔王のことは忘れ、みんなの力の底上げをしよう。特にニミと姫様。ふたりは魔王の鼻息程度でも死んじゃうからね。そして僕自身もレベル上げだ。優勝候補と目されるチャーさんですら、まだ僕より下だと思われるから、他の神の使徒と勇者候補もそんなすぐ強くなれないだろう。だから急ぐ必要はない」


「なるほど、一理あるな。というよりも現状、そうするしか道はなさそうだ」

「はーいっ。あたしもがんばるよーっ」

「わ、ワラワもやってやろうぞ」


 みんなやる気になってくれた。よぉし、やるぞー!




 翌日、僕は絶望の淵に追いやられていた。

 とにかくレベルアップといつものパワープレイを行っていたところ、なんとかレベルは上がった。しかし……


 『レベルが60になりました。戦闘値が最大値になりました』


 ……僕の最大値は256だった。そりゃ神だって期待しないよ!

 しかしそれでも今現状、僕を上回れるのはチールさんだけだ。

 だがそのチールさんも右腕に爆弾を抱えている。なにかにぶつけただけで涙ぐむほど痛がる彼女に無理はさせられない。


「こうなったら人数を増やすしかないな……」

「えっ!? もう11人もいるんですよ! どれだけ妻が欲しいんですか!」

「8人だけだよね!? 3人は姫様のメイドだよね!?」


 姫様の専属メイドとして来た彼女らは別に結婚なんて……考えてたの!? 僕の言葉に絶望感を出してる!?


「なにを言ってるのですか? ワタクシたちは姫様と共に嫁ぐため加わったのですわ!」

「聞いてないんだけど!」

「お願いしますわ! このままでしたらワタクシ、ぷよんぷよんと結婚させられてしまうのですわ!」


 う……。ぷよんぷよんは嫌だなぁ。

 他にもいっぱい妻がいるという点を貴族としてどうなのかという疑問は、姫様と同じ相手であるならば逆に箔が付くからOKらしい。

 くっ、これもデュリを救うため。やむなしだな。


「あ! 自分もやむなしでお願いしたい所存であります!」

「勝手にやむを消さないでよ! そこにやむはあるよね!」

「お願いであります! メイド軍人は実に9割以上が未婚のまま余生を過ごすのであります! 自分はそんなのイヤであります!」

「それ僕じゃなくてもいいよね?」

「神の使徒であり姫様と婚約し、見た目まあまあ。ロリコンという点に目をつぶればこれ以上の優良物件はないでありますよ!」

「喧嘩売ってんのかクルァ!」

「ひぃぃっ」


 誰がロリコンだ失礼な! ロリコンってのはな、倍以上歳が離れている場合を指すんだ! 僕は17だから8歳以下ならロリコンと呼ばれても仕方ないが、一番下のパティや姫様でもピー歳なんだから問題ない!


「────てかこっちの世界でもロリコンって通じるのね」

「昔話であります。とある国の王、ロリコニウス6世は未成年の女性としか結婚しなかったとか」


 語源は流石に異なるか。

 それはさておき、僕は優良物件になるのか。いやあまいったなぁ。

 ……じゃなくてだね、実際問題として、これ以上強くなるためには人数を増やすくらいしか方法がない。


「よし、傭兵を雇おう」

「唐突だね」

「今なら国からの報奨がたんまりある。これを使えば何人か雇えるはずだ」

「そんなのイヤよ! それで傭兵の子があんたに惚れたらどうするのよ!」

「雇うのは男だよ」

「えーん、ミツキさんにそんな趣味がー」

「違うからね! ただ単に同世代の友人的な男子が欲しいだけだからね!」


 どんな勘違いだよ! 僕は完全ノーマル! 女の子大好き!


「男の人を入れるのは反対します。もしその人が私たちのうちの誰かを好きになってしまったら、それはそれで問題が発生すると思います」

「でもさ、もし雇った女の子が超絶かわいくてさ、僕がメロメロになっちゃったらどうするの?」

「アホぬかせ。ワラワ……いや、チール様よりかわいいおなごなんぞこの世のどこにいる」

「そうだね、ないね」


 完全に論破されてしまった。くそう、友達欲しかったなぁ。

 それにしても姫様はすっかりチール神に傾倒しているな。チール教なんてできたら真っ先に入信……いやもう姫様がチール教を作りそうだ。自分がかわいいことを理解しているが故、その神を崇めるのは当然なんだろう。


 っと、話が逸れた。


「だけどみんなわかってるでしょ。このままだとジリ貧なんだ。僕らが強くなるにはもう、人を増やすしかない」

「……わかりました。ではこちらで見繕いますので、充輝さんは待っていて下さい」


 ナルに任せれば大丈夫か。とりあえず一番信頼しているからね。

 ニミ? ニミは信頼とかじゃない。ニミの考えが僕の考えだ。


「ちなみにどんな人を入れる予定なの?」

「ガチレズな方を一組入れようとか思っています」

「ガチレズ……ちゃんと僕のことを応援してくれるの?」

「それは……ガチレズで且つ、充輝さんのことを応援してくれる方を探します」



 数時間後、高すぎるハードルを越えられる人物を見つけられなかったナルがとぼとぼ帰ってきた。

 元々男性人口が少ないこの世界では、ガチレズが多いらしい。

 そしてガチであればあるほど男を嫌がる傾向があり、大抵は同じパーティー内に男がいるだけで断るそうな。


「じゃあ私が見つけてくるよ」

「えっ、ニミが!?」

「ダメ?」

「もちろんいいに決まってるよ」


 ニミの手を煩わせるわけにもいかないと思い、今まで僕が率先してきた。だけどこれはニミのパーティーなんだから、彼女が望む仲間を得るというのは当然と言える。

 それにニミは悪意などに敏感だ。きっといい仲間を見つけてくれるだろう。



 ニミが探しに行って1時間後、連れて来たのはどう見ても傭兵とは程遠い、町娘か村娘のような2人だった。言うなればディージのような子だ。


「えーん、なんか心のなかで汚された気がしたよぅ」


 こらこら、人聞きの悪いことを言わんでよ。

 それはさておき、この子らはなんなんだろう。


 まさかとは思うが、超凄腕の諜報員なのかもしれない。一流ともなると一般人とは見分けがつかず、町へ完全に溶け込めるらしいからな。

つまり彼女らはただの一般人か一流の諜報員だ。……わかりづらっ。


「じゃあとりあえず自己紹介をしてもらえると嬉しいな。まず右のショートヘアの子」

「えとえと、ボクは──」

「ボク……だと……?」


 もしや、もしやと思うが、まさかのもしや!?


「──ひょっとして、男だったりする?」

「ち、違うよ! えとえと、ボクは2人兄がいて……」

「ああなんとなくわかった」


 男兄弟と一緒に育ったせいで、女の子らしさが薄らいでるんだね。両親が働いていると面倒を見るのは兄弟で、一緒に遊ぶとどうしても男の遊びに偏ったりする。逆もまた然り。


「それで、ボクはフィーといいます。フィー・グーグーフ」

「充輝だよ、よろしくね。よかった、きみみたいなかわいい子が男じゃなくて」

「え、えとえと……かわいいだなんてそんな……」


 顔を真赤にしている。男の子たちと育って、周りも男の子みたいな扱いをしていたせいで言われ慣れていないのだろう。


「……いでっ」

「あ、ごめん」


 突然ニミに足を踏まれてしまった。全く、ニミはドジっ子かわいいなぁ。


「ちょっと! あんたなにいきなり口説いてんのよ!」

「え!? そんなことしてないよ!」

「息を吐くように女を口説く……恐ろしいであります!」

「えーん、私の旦那様は浮気性だよぅ」


 なんで!? なんでそうなるの!? 僕はただかわいい女の子にかわいいよって言っただけだよ! イタリア人なら常識なことだよきっと! 多分……いや絶対。


「ええい黙れ皆の衆! ──で、もうひとりの前髪の長い子は?」

「……ピィ。ピィ・ルート。……お昼寝大好き……」

「そ、そうなんだ。僕もお昼寝大好きだよ」

「……ポッ」

「なんで!?」


 痛い痛い! なんでみんなして僕の足を踏んでるの!?


「やっぱりー、新しいー、お嫁さんがー、欲しかったのねー」

「酷いですわ! ワタクシ、まだ手も握ってないのに!」

「あたしの出番が減るじゃんーっ」

「ようわからんが楽しそうだな!」


 パティなんかメタい発言やめて! 姫様はそんな理由で踏まないでよ!


「ナ……ナル……助け……」

「自業自得です! えいっ」

「ぐぎゃああぁぁ」



 ────後から聞いたところによると、女性が男性に趣味を聞くときは『私のことを気に入ってくれますか?』という問いであり、同意することは『あなたのことを好ましく思っています』という返事なのだとか。

 ……知らないよ! いくら男が戦いのせいで数が少ないからってみんな男に飢え過ぎてない!? これじゃ迂闊に会話もできないよ!


 だけど郷に入っては郷に従えと言うし……あとでナルから詳しいことを教わらないといけないな。

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