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25話

「ミツキ殿、神の使徒であってもあえて言わせてもらおう! 貴様、我が娘をたぶらかしたのか!?」

「そ、そんな滅相もない!」


 なんでそんな話になってるの!?


「ワラワはもうミツキのものだ。父上と言えど覆せん!」

「なっ!? 貴様ぁ! それだけの少女を侍らせているくせに──」

「ちなみにワラワは7番目の妻であるぞ」

「ななな……我が国の姫が7番だと……? 許さん!」

「ちょちょちょっと待って下さい! 誤解なんです!」


 無理無理、姫様はカワイイけど、一国を敵に回すだけの度胸はない。ここはひとつなかったことに……。


「のうミツキ。ミツキはワラワのこと、嫌いか?」


 不安そうな顔で僕の顔を見上げる姫様。

 無理、こんな姫様を見捨てるなんてできない!


「上等だ! 軍でも国でも好きなだけ相手してやるぁ! かかってこい!」


 ……あああやっちゃった!

 やばいどうしよう。王様も顔を真っ赤に……赤? いや紫……真っ青になった。


 そうだ、この国で最強なのはチャーさんで、そのチャーさんを一撃でふっ飛ばした悪魔を僕が一方的に蹂躙したんだった。つまり軍が出たところで全滅する可能性が高く、そんな相手にかかってこいなんて言われたらそりゃ青ざめるか。


「……じい、断頭台を持って参れ」

「で、ですが……」

「この首ひとつで国が守れるなら安かろう!」

「ままま待ってください!」


 首とかいらないから! 怖いからやめて!

 一瞬僕が打ち首になるかと思ったが、もっと酷い。

 一国の王の首を飛ばしたなんてことになったら周囲の目が怖い。それどころか僕こそが真の魔王だとか言われ討伐隊ができそうだ。もうこの世界にはいられなくなる。


「儂が死んでも、第2第3の国王が現れるだろう……」

「それが王国ってものだからね……」


 現れてくれなきゃ困るよ。主に国民が。


「それでミツキ殿、そなたの怒りは儂に向けてであろう。ならばこの首だけで済ませ、国民には手を出さぬようお願いしたい」

「なんかさらっと僕を悪人みたいに仕立てようとしている気がするけど……じゃあそれでいいよ」

「えっ?」

「うん?」


 王様は口をパクパクさせてから、少しの間時間が止まったかのように動かなくなった。


「……それはおかしくないか?」

「よくわからないけど王様は死にたいらしく、それでいて何故か僕に国民へ手を出すなという約束をさせた。全く意味はわからないけど、僕に危害がないのならいいかなって」

「そこは普通止めるところでは?」

「止めたらどうするの?」

「止めてやる代わりに条件を出したいのだ」


 なんだよそれ! 死ぬ気ないのに演技で人を操ろうっていうの?


「じゃあ止めないよ」

「では記そう。儂は神の使徒であるミツキによって斬首させられたと」

「捏造だよねそれ!」

「それが真実かどうかではない。どちらが多く広まっているかが重要なのだ」

「ぬぐぐ」


 その手の嫌がらせはそれなりに効果があることを知っている。最悪だ。


「じゃあ一応条件だけ聞いておくよ」

「結婚は認めたくないが、どうしてもというのであればせめて第一妻とせい」

「それだけはできない」


 ニミが一番。それだけは譲れない。

 しかし王様は何故かにやりと笑みを浮かべた。


「それだけはできない。つまり他のことはできるということだな。では第2妻とせい! 決まりだな」

「あのね王様。できることとやっていいことは違うんですよ。例えば殺人なんて意外と簡単にできることですが、やっていいことではない。そういうことです」

「くっ、ああ言えばこう言いやがって……」

「やられたらやり返す。それだけです」


 相手が揚げ足を取るのなら取り返すまでだ。これは相手が不毛だと気付くまで続ける。ようは根比べだ。


「……うちの娘は誰にでも自慢できる美姫でな、それが庶民より下、7番目となると、周囲の国々から笑いものになってしまうかもしれん。王としてそれは避けたい事態なのだ」

「おぅふっ」


 まさかの直球。そう言われてしまうと強く言い返せない。

 ガキっぽく言うと『お前の娘は美しいとか自慢してたくせに7番目の妻かよワラワラ』ってことだ。

 これが侵略戦争大好きな超大国の王相手であれば他国も同情してくれるだろう。しかし僕は生憎そんなではないから『7番目wwwのwww嫁wwwしかもwww旦那平民wwww』こんな感じか。


 これは国の体裁として見逃せるはずがない。だけど戦力的にひとりいなくなるのは僕としてもきつい。文字通り半減してしまうのだ。

 それに本人は結婚する気満々だ。今更ダメだと言い難い。


「相手が神の使徒であり、魔王を倒しに行くような人物でもダメですか?」

「そこに問題はない。ただ7番目というのがな……」


 だよなぁ。他のみんな平民だし、それ以下に見られてしまう。あっ、そうだ!


「わかりました。一番は勇者枠なので譲れませんが、2番でしたら構いません」

「そ、そうか。それならばいい……」


 これで王との問題はなんとかできた。あとは今にも泣きそうな顔をしているナルと、もの凄い形相で僕を睨みつけているローティたちをどうにかするだけだ。




「第666回、パーティー会議ー! わーわーパチパチパチ……」


 がんばって盛り上げようとしたのに、室内は静まり返っている。そしてここにいるのは死んだ魚のような目をしたナルと、恨めしそうな目をしているパティラッティローティ。チールさんの表情は帽子でわからないがいつも通りだろう。あと自分の順位は不動なため文句のないディージ。そして自分が2番になったことでホクホク顔の姫様だ。


「……まず、みんなの誤解を正したい」

「誤解って! 王様の前であんなにはっきりと言ったじゃないですか!」


 ナルがもの凄い勢いで叫んだ。3姉妹も同意見のようで頷いている。


「僕の世界には同着順位というものがあるんだ。例えば、みんなが1時間に薬草をいくつ採れるか競争をしたとしよう。結果、ニミが10枚でトップ。あとのみんなは9枚ずつ。そうなると2番は誰になる?」

「えっ、えーっと……その中で一番早く9枚目を採れた人?」

「ううん、その人は単に『早く9枚目を採れたけど10枚目に届かなかった人』だよ。そういうのを言い出したら、一番大きいのを採った自分こそ2番だとか色々面倒なことになるでしょ。だからみんなが2番にしておけば丸く収まるんだ」


 つまり姫様が2番になったからってナルの順位が下るわけじゃない。みんな2番。


「わ、私もそれがいいと思うよぅ!」


 そう絶賛してくれたのはディージだった。まあ彼女の場合、8番から2番だからな。2階級特進どころじゃない。


「……はぁ、わかりました。でも2番の中の一番は私ですからね」

「えっ?」

「じゃああたし2番の2番ーっ」

「あ……ずるいわよあんた! 2番の2番は私!」

「えっ? えっ?」


 なんだろう、みんな根本的な間違いをしている。2番は2番でその中に順位なんてないよ。


「ちと待ち! それだとワラワはどうなるのだ!?」

「えーっと、2番の7番でどうでしょうか」

「それでは振り出しではないか! ええい、平民!」

「え……えーん、譲りますぅ……」

「これで2の6だな。では2の5、ワラワに……いやなんでもない……」


「そんなわけで充輝さん。2の1が私で、2の2がローティさん。2の3が…………と、こんな感じになりました」


 どんな感じだよ。それどこの学級の話なの?


 まあ本人たちがそれで納得してくれるならいいか。

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