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12話

「そういえばみんな魔術ギルドって言ってたよね。魔法使いなんだ?」


 僕は3人がどの程度戦えるか知っておこうと思った。

 もしなにかあったとき、僕以外にも攻撃手段を持っている人がいてくれたほうが安心できるからだ。


「うんっ、あたしとラッティが石魔法で、ローティが風魔法なんだーっ」

「あっ、私も石魔法」


 ナルがそっと手をあげた。そういえば使えたよね。


「そうなんだっ。あたしはコールドストーンで、ラッティがストーンドレインとキュアストーンだよーっ。えっと……お姉ちゃんはーっ?」

「ナルでいいですよ。私はストーンファイアです」

「えっ!? そ、それはまた……」


 3人の顔がひきつる。なんだろう。


「ストーンファイアって凄いの?」

「あたしが聞いた話だと、ストーンファイアを極めると1つの町の地面全部が焼けるんだってっ。3大凶悪魔法のひとつだよーっ」


 前にナルが投げていた真っ赤に燃え光る石を思い出した。それが地面全部……。溶岩に足を突っ込むようなものだろうか。恐ろしい。


「で、でも私は最近全然魔法使ってませんよ。充輝さんが全部倒してくれるから……」

「えーっ、お兄さんそんなに強いのーっ?」


 パティがすごい目を輝かせて僕をみている。だけど僕が強いわけじゃない。ふたりが僕を強くしてくれているんだ。



 日が落ちて暗くなりつつあるとき、馬車が停まった。休憩ではなく、今日はここで一泊らしい。降りて周りを見ると前には5台も馬車があった。気付かぬうち無事合流できていたようだ。

 商人の馬車が2台、乗り合いがうちの他1台、貸し切り一台、それに護衛用1台といった感じだ。食事はみんなで摂り、夜は護衛が交代で見張る。僕らは護衛じゃないから寝るだけだ。



「冗談じゃないわ! 男の人と一緒に寝るなんて!」


 ローティが騒ぐ。仕方ないじゃないか、それが乗り合い馬車の宿命なんだよ多分。そして僕も退くわけにはいかない。野宿は嫌だ。

 とはいえシートを上げても社内は狭い。6人じゃテトリスみたいに工夫して寝ないといけない……あっ、そうだ。


「じゃあ僕は外の小屋で寝るよ」

「小屋!?」


 先日買っておいた中古の小さい物置だ。道具入れ程度しかないが、1人で寝るには充分の広さがある。

 2メートルかけ1.8メートルで、クイーンベッドくらい。


 それを出現させたとき3人娘は唖然とこちらを見ていた。いや3人だけじゃなく周りの人たちも驚愕している。うーん、姉御も驚いていたけど普通こういうことはできないのか。


「ちょ、ちょっと! その小屋よこしなさいよ! ずるいわよ!」

「小屋だって狭いんだよ。この馬車よりもね」

「もっと広いのを用意しなさいよ!」

「知らないよ!」


 元々ひとり用として用意したものだ。僕とニミとナル、3人パーティーで動くことを仮定してるんだし。

 ひとりが寝て残りが見張りのローテーションのつもりだったんだ。

 それにこの小屋も少し無理言って譲ってもらったものだ。金もそれなりに払ったし。


 そんな感じで理解してくれたローティは渋々引き下がってくれた。




「────で、なんでふたりはここにいるの?」


 僕は今、ニミとナルに挟まれている。しかもふたりともこちらへ体を向けている。


「向こうせまいよ」


 う、うん確かにみんな小さいとはいえど、5人はちょっときつい。

 でもだからってこっちせまくしてどうするの。


「もう少し離れられないかな……」

「後ろすぐ壁だよ」


 知ってるんだ! 僕は知ってるんだからね!

 人の肩幅は大体40~50センチくらい。大きめにとって50センチでも1.8メートルある小屋の幅なら問題なく並べるはずなんだ。特にふたりとも小さいから尚更余裕がある。


「あ、あの、ナル。肩に頭乗ってるんだけど」

「せまいんですー」

「だからそこまで狭くないよね!? ってニミ! この手はなに!?」

「倒れないように」


 右にいるニミが僕の左側の脇腹まで手を回している。倒れるってなにが!? 壁に寄りかかればいいじゃない!


「ナル!? 足! 足!」

「寒いんですー」


 ナルのふとももが僕のふとももへからむように乗ってきた。やめて! ホントやめて!

 もちろん嬉しいさ! すっごく幸福の絶頂だよ! でも理性はもう死にかけだよ!


「な……なんでそんなにくっつくの?」

「寒いー」

「そうじゃないよ! 僕だって男なんだよ!」

「私の母はこう教えてくれました。この人こそはという男の人がいたら絶対に離したらダメだって」


 なんて母親だよ! てか離したらダメって物理的にじゃないよね!


「ニミはなんで?」

「充輝さんは私のために来てくれたんだよ。ナルさんには渡さないから」


 張り合わないで! めちゃくちゃうれしいけど、そのせいで悪いなにかに心を乗っ取られちゃうから! 理性がんばれ!

 あああニミまで肩に頭を乗せてきた! 両方から女の子の匂いがする!


 ……ごめんよ理性。僕が不甲斐ないばかりに。きみの死は無駄にしない。

 もう限界だ! こうなったらふたりまとめて────


「んっ、魔物!」


 ニミが反応した。だよね! 知ってたよ! チクショウ!



「うわあぁ! ギアラタウロスだ!」

「なんでこんな街道沿いに!?」

「まずい、俺たちの戦力じゃやられる!」


 外で護衛たちが騒いでいる。もう魔物に八つ当たるしかない!


「おぅら魔物ぉ! なんだてめ牛だか人間だかわからない姿しやがってぇ!」

「なっ!? で、出てきたら危険です!」

「こんな魔物に負けてたまるか! みんな、応援してくれ!」

「お、おう?」


 よくわかってないみたいだけどみんな応援してくれた! よっしゃやってやらぁ!

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