名も無き日常
学舎の3階の窓際の席。
先生の話を聞いている人、居眠りしている人、ぼうっとしている人。
周りのみんなの様子を見渡してから、窓の外を見る。
空はどこまでも続く青い海のように、真っ青。
あの甘くて美味しそうな雲や、絹のような薄い雲すらない、綺麗な青が世界を染めている。
先生が難しい問題を解説しているのを聞き流しながら窓を開ける。
開けた途端、涼しい、だけど心地の良い風が私の身体に染み込んでくる。
気持ち良い、そんな気持ちを表すかのように、私の長い髪は横へ流れる。
まるでドラマに出てくる主人公みたい...
そんな考えが私の脳内に浮かび、くすっと笑ってしまう。
一度黒板へ目を向けると、先生が答えられなかった生徒にズラズラと理屈を並べて説明している。
私もやらないと、そう思いつつもまた窓の外に写る景色に見入ってしまう。
さっきまで聞こえてこなかった声がグラウンドの方から聞こえる。
見ると、ワイワイしながら一つのボールを追いかけて走っている人達がいる。
味方にパスを出している。
ボールを奪うために必死に走っている。
友達と笑いながら見ている。
ゴールをしっかり守っている。
味方に指示を出している。
それらを見ていて、あぁ青春だなぁと思う私。
何が可笑しいのか分からないけれど、やっぱり笑ってしまう。
そしてまた、空を見る。
この時間が、たまらなく好きだ。
ここから見える景色は、時間が経つ度に変わっていく。
まるで、青春時代を過ごしている私達のように。
楽しいと思う日もあれば、悲しいと思う日もある。
そしてそれは、この景色もそう。
私達と同じ時間を、同じように過ごしている。
まるで、生命が吹き込まれているかのように、大きなその地球は脈打っている。
なんだか不思議なこの気持ち、そしてまたいつものように思う。
「また明日も頑張ろう」
そう思いながら、この景色から目を離し、前を向いた。
窓を開けっぱなしにし、私の背中を押してくれる風に見送られながら。