プロローグ
きっと自分は強くならなきゃ生きていけない、
そう思ったのは高校生になって施設を出た時。
もちろんそれまでにも、ずっと思っていたことだけれど、
施設を出て、ひとりになったときこそ、本当に自覚した。
ひとりきり。
そうだ、施設に入る前の状態に戻っただけだ。
別に悲観することじゃない。
自分の力だけで生き抜いていかなきゃいけない世の中は、至って普通。
でも時折、私の運命を変える出来事があるんじゃないかなと期待してしまう。
シンデレラストーリーなんて柄じゃないけど、運命の人と出会う、とか。
まあ、運命なんて自分次第で変えていけると信じるタチだし、
自分が行動するに越したことはないのだけれど。
今思えば、これこそが運命だったのかもしれない。
ネットサーフィンをしているときに、偶然
“八神アカデミー冬季研修生募集中”の広告に出会った。
“人生を変える為の視点、手に入れませんか?”
という怪しいコピーがついていた記憶がある。
私が秒速で応募の決意をしたのは、
八神アカデミーというブランドだった。
新聞に載るような探偵さんの経歴のなかに、
この文字列をよく見かけた。
国外からも研修生が来るほど有名らしい。
何がどうすごいのかはよくわからないけれど、
学歴社会のなかで、養護施設出の高卒フリーターという肩書きは生きにくい。
この有名らしい学校に少しでも在籍していれば、
もう少し生きやすくなるのではと思ったのだ。