私が観るもの
その底から天を見る
深く深く闇にいた。
自分がいるのはわかる。こうして、闇を認識できるのだから。
こうして、闇がわかるということは光があることを知っているから。
そうか。また、この季節が来たのか。
太陽が眩しい。
私は、鮮やかな色をまとう。怪しいほどの色を。
私は、見つめるのだ。人を。
私は、風に揺れるのみだ。
私も私も。
周りを見回す。あぁ。ここは公園のようだ。おそらく傍に川があるはずだ。
いつだか見た。それは、いつ?
ボールが私にぶつかった。
・・・。ぶつかった。
「お姉さん、ごめんなさい」
男の子だ。小学校に行くか行かないかくらいの。
「どうも、すいません」
男の子の父親らしい。少し、離れたところで頭を下げている。
・・・。
「いいえ、どうぞ気になさらないでください。」
私は微笑み、そう答えた。
目じりを少し下げ、口角を少し上げる。これで微笑みになるはずだ。
さて、帰ろう。
あの親子は。
太陽が私と同じに染まる。
スカートが揺れる。
今年は女性の姿だったな。
思い出した。私の名前は彼岸花だ。
私がまとうは紅い華。