「いいえ、凄くムラムラしてます! 性欲が煮えたぎってます!」
◇
……翌日。
「そういうわけで、今日はこの子達も連れてきました」
「何が「そういうわけで」なんだよ?」
昼休み、いつもの中庭にて。呈と契、絆の他、今日は追加メンバーがいた。
「絆ちゃん、紹介するね。こっちは結。私の妹なんだ」
主の疑問を放置して、契は絆に妹を紹介した。そう、追加メンバーの一人は結だった。
「結ちゃんって言うんだ。よろしくね」
「よろしくお願いしますっ!」
絆に対して、結は元気良く挨拶している。……こいつ、男嫌いな分、女に対しては友好的だからな。絆のことが気に入ったらしい。
「そしてこっちは鹿山虚露さん。結のお友達なの」
「よろしくね、虚露ちゃん」
「よ、よろしく、です……」
そしてもう一人は虚露。彼女も、今日の昼食会に御呼ばれしていた。……この二人は、契の計画に必要な人材だ。今日は顔合わせというか、絆と面識を作るために呼ばれたようなものだな。
「今日はみんなの分を用意してきたから、一緒に食べよっ」
「うんっ」
「わーい! お姉ちゃんの料理ー!」
そういうわけで、ピクニック気分な昼食が始まった。
「やっぱり、あのときの人って絆さんだよね?」
「あれ? 私って、前にも結ちゃんと会ってたっけ?」
契の弁当を突きながら、結と絆はそんな話をしていた。恐らく、始業式の日のことを言っているんだろう。
「始業式の日に見かけたの。あれって多分、絆さんだったんだよね、って」
「そうだったんだ。気づかなかったな~」
「お前が目立ちすぎなんだっての」
楽しくお喋りしている二人に、呈が口を挟んだ。……どうしたのだろうか? 女の子とお喋りしたくなったのか?
「お前は昔っから、自分が目立ってることに気づかないからな。いい加減、直したほうがいいぜ、そういうの」
「ご、ごめん……」
「何よ偉そうに」
呈に窘められて、肩を落とす絆と、腹を立てる結。……そういえば、結は呈と絆の関係を知らないのでは? そう考えると、馴れ馴れしい口を利く呈が癇に障ったのかもしれない。この子、元々呈のこと嫌いだし。
「ううん、いいの。呈君は私のためを思って言ってくれただけだから」
「遠回しに目障りだって言ったつもりなんだが」
「うっ……」
「ちょっと!」
絆がフォローするも、呈がそれを台無しにする。そして結は怒り倍増と、完全な悪循環に陥っていた。殆ど呈のせいだが。
「出る杭は打たれるんだ。見た目だけでも目立つんだから、これからは大人しくしてろ」
「う、うん……」
「気にすることないって絆さんっ! 目立つ分には大丈夫! 目立たなくて影が薄いよりはずっといいから!」
「……結ちゃん。それって、私に対する嫌味?」
「う、虚露ちゃんっ!? ち、違うよっ! 別に虚露ちゃんが影薄いってわけじゃないからっ!」
「影薄い……」
「虚露ちゃあぁんっ!」
そんなわけで、結が虚露を泣かせただけで、昼食の時間は終わった。
◇
……放課後。
「とりあえず、今日はアニメ鑑賞な。大分溜まってるし」
「はい」
放課後恒例となっている契の調教。しかし、本日はアニメを見て過ごすようだ。こういう日も割とよくある。
「そういうわけだが、お前はどうする?」
となれば、調教を見学している絆をどうするのかが問題になる。そういう意味も込めて、呈は彼女に確認を取っていた。
「私もご一緒していい? 今期のアニメは気になるし」
「お前と趣味が合うかは知らんぞ。俺だって、全部録画しているわけではないからな」
「大丈夫だよ。私が見てたの、呈君のお気に入りばっかりだったから」
絆も同意し、彼らはアニメ鑑賞会を始めるのだった。
◇
……十数分後。
「……ねえ、呈君」
「何だよ?」
アニメが中盤に差し掛かって。耐え切れなくなった絆が声を上げた。
「この子達、どうして全裸なの?」
テレビ画面に映し出されているのは、一糸纏わぬ美少女たち。要するにサービスシーンだ。ヒロインたちが全裸のまま、主人公と会話を繰り広げている。このシーンを見て、絆はずっと赤面していた。
「諦めろ。原作者が美少女たちを剥きたかったんだろうさ」
「そういう大人の事情はいいから」
「じゃあ視聴率稼ぎ」
「それも大人の事情だよっ!」
サービスシーンの理由を尋ねれば、大人の事情以外に答えが返ってくるわけがないだろうな。作者の欲求と視聴率以外に、必要な理由なんてないし。
「何興奮してるんだよ? ムラムラしたのか?」
「ち、違うってば! そんなわけないでしょ!?」
「そうか? 契、お前はムラムラしてないか?」
「いいえ、凄くムラムラしてます! 性欲が煮えたぎってます!」
なんか変な流れになってるし、問い掛けられた契は鼻息が荒くなっている。……また発情してるのか、この子は。
「そうか。静かにしていろよ」
「はいっ! 一人で慰めてますね!」
「ソファ汚したら追い出すぞ」
盛り出した契を受け流しつつ、呈はアニメ鑑賞に戻る。……因みに、サービスシーンはまだ続いていた。
「て、呈君はムラムラしないの?」
「愚問だな」
それでも、恥ずかしさが抜けない絆。反撃とばかりに呈へ問い掛けるが、彼は鼻で笑いながらこう答える。
「その手のアニメはもう何度も見ている。今更、二次元美少女の全裸程度で興奮するわけがない」
「……言ってやったぜって雰囲気出してるところ悪いけど、はっきり言って格好悪いよ?」
呈の台詞に、絆は呆れたような口調でそう言う。まあ、単純に慣れの問題なのは確かだろうけどな。
「というか、俺のお気に入りばかり見ていたのなら、この手のシーンは沢山あっただろ?」
「そ、そうだけど……やっぱり、まだ慣れないっていうか」
「無理に合わせる必要はないんだぞ?」
会話は続行しているが、呈は目線をテレビに固定している。そのせいか、絆は少々不満げな様子だった。勿論、彼女を見ていないのだから、呈がそれに気づくはずもないが。
「じゃあ、呈君は女の子の裸で興奮しないの?」
「二次元はな」
「三次元なら、するの?」
「母親と姉貴とお前と契と幼女以外ならな」
「そ、そんな名指しで除外しなくても……さすがに凹むよ。女の子として」
遠回しに、恋愛対象外だと言われてしまう契と絆。そんな彼の態度に、絆は大層傷ついたようだ。
「それなら私は今すぐ全裸に―――」
「なったら、外に放り出すぞ」
「なりません、はい」
自分が恋愛対象外だということにかこつけて、服を脱ぎだそうとした契。なので呈は、先んじて釘を刺すことに。アニメの再現しなくていいからな。
「……ふぅ。落ち着いてアニメも見れないんか」
突っ込みを平行しなければならない現状に、呈はそうぼやくのだった。




