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女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第三話 お姉様の登場です
31/46

「お姉様に言われた通り、下着を着けずに来たのですが、これはなかなか……んっ!」


  ◇



 ……翌々日。


「……で? 何で俺は、ここにいるんだ?」

「何よ、今更?」

 夜。人々の喧騒や祭囃子が辺りを包む中、呈と誠は神社の鳥居の前にいた。頭の上に疑問符を浮かべる弟に、誠は懇切丁寧に説明し始めた。

「それは今日が夏祭りだからで、その会場がこの神社だからで、ついでにここで契ちゃんたちと待ち合わせてるからよ」

「それは聞いた。俺が言いたいのは、どうして俺がそれに参加しなければならないのか、ということだ」

 神社の前の通りも、境内も、祭りの出店で埋め尽くされていた。そんな独特の雰囲気に当てられたのか、呈は顔を顰めながらそう言った。しかし誠は、「何故そんな当たり前のことを?」と言わんばかりの口調でこう返す。

「あら。契ちゃんはあんたの「ペット」なんでしょ? だったら、「飼い主」が同行するのは当然じゃない」

「そういう意味じゃない。そもそも、何でこの祭りに参加するのかって話だ」

 どうやら呈は、夏祭りに来たくなかった様子。夏祭りに対して、何か嫌な思い出でもあるのだろうか?

「大丈夫よ。あんなことはそうそうないわ。あれ以来、ここの警備も強化されたらしいし」

「そういう問題じゃないだろ」

「そういう問題よ。少なくとも、私はそう思ってる。―――ほら、ちゃんと来たじゃない」

 誠は会話を打ち切って、遠くのほうへ視線を移す。そこには人混みがあるだけだったが、やがてそこから少女たちが―――契たちが現れた。

「お待たせしました。ご主人様、お姉様」

 まずは契。紺色に紫陽花をあしらった浴衣を纏い、紅色の帯を締め、艶やかな黒髪を結い上げて、すっかり夏祭りモードだ。

「もぅ……せっかく、お姉ちゃんと虚露ちゃんと一緒に夏祭りなのに、何であんたが出てくるのよ?」

 続いて結。黄色に団扇の柄が入った浴衣に、水色の帯を合わせて、いつものツインテールのまま、不満げに頬を膨らませていた。そんなに呈といるのが嫌か?

「む、結ちゃん、折角誘ってもらったんだから……」

 最後に虚露。桃色にさくらんぼ柄の可愛らしい浴衣(帯は紫だが同じ柄入り)を着ているのだが、いつものように前髪で顔を隠しているので、ちょっと勿体無かった。

「……ご主人様。似合っているでしょうか?」

「馬子にも衣装だな」

 感想を求められて、呈はしれっとそんなことを言った。……それ、褒め言葉じゃないからな。

「ちょ、女の子に言う言葉じゃないでしょ!?」

 女性に対する扱いとしてはあまりに目に余るためか、誠は呈を怒鳴りつけた。

「あ、ありがたいお言葉です……! はぁ……、はぁ……」

「……」

 だが、当の契は涎を垂らして喜んでいた。……誠も、この変態少女の言動には、まだ完全には慣れてないのだろうな。

「……さてと。じゃあ、行くわよ」

 それでも気を取り直して、彼らは夏祭りへと繰り出した。



  ◇



 ……数分後。


「……おい」

「はい? どうかしましたか?」

「どうもこうも……思いっきり、はぐれたよな?」

 祭りの屋台が立ち並んだ通りにて。呈と契は、誠たち他の面々とはぐれてしまった。見方によっては、迷子といえるだろう。

「ともあれ、姉貴と連絡を取らないとな」

 呈は携帯を取り出すと、誠の番号を呼び出してコールした。……今の時代、迷子になっても携帯で連絡が取れるのだから、便利なものだな。文明の利器万歳。

《はいはーい》

「どこ行きやがった」

 電話に出た姉に対して、呈は開口一番にそう言った。彼は、誠のほうが姿を晦ませたと思っているようだな。

《大丈夫よ。結ちゃんと虚露ちゃんはちゃんと一緒だから》

「居場所を聞いてるんだが?」

《な・い・しょ♪》

「しばくぞ」

 しかし、姉のふざけた態度に、呈は激怒する寸前だった。……まあ、結たちも一緒みたいだし、何もなかったんだろう。そして、自ら姿を隠したのは辺りと見ていいな。

《いいから。あんたは契ちゃんと、楽しく夏祭りを満喫しなさい》

「……」

 だが、誠は急に穏やかな口調になって、そう答えた。……もしかして、気を利かせたのか?

《契ちゃん、あんなんだけど、ちゃんと乙女なんだから。あんたと二人っきりでお祭りを楽しみたいのよ。それくらいやらないと、「飼い主」失格よ?》

 誠は一方的にそう告げると、通話を切った。呈は仕方なく、携帯を仕舞って、契のほうに向き直った。

「……姉貴たちは、ばっくれたらしい」

「ばっくれた? ということは、つまり―――」

「あの阿呆共は放っておいて、俺たちだけで回るしかないな」

 あまり気が進まない、という風を装って、呈はそう提案した。……つまり、彼も内心では賛成なのだ。

「……はいっ!」

 それを察したのかは分からないが、契は満面の笑みで頷いたのだった。



  ◇



 ……というわけで、二人は屋台を巡っていた。綿飴や焼き蕎麦、人形焼などを購入し、射的や金魚掬いに興じる姿は、まるで恋人同士のようにも思えた。


「はぁ……、はぁ……」

「どうした? 顔が赤いぞ?」

 しかしながら、そこで契に異変が生じた。顔を赤らめて、呼吸を乱している。どうやら、体調を崩したようだな。

「大丈夫か?」

「は、はい……。やっぱり、着物一枚だと、色々擦れて興奮しちゃいます~……!」

「……は?」

 ―――と思ったが、呈は考えを一転。恐らく、彼女は予想の斜め上の行動に出たのだと悟った。

「お姉様に言われた通り、下着を着けずに来たのですが、これはなかなか……んっ!」

「あの糞女っ……!」

 色っぽい声で白状する契。なんと、犯人は誠だった。……ほんと、余計なことしかしないな。

「……言っておくが、それは迷信だからな。昔は知らんが、現代では着物でも下着を着ける」

「え……そうだったんですか?」

 真実を知らされた契は、驚くというより呆然としていた。……っていうか、何か疑問に思えよ。まあ、彼女には服従癖があるし、根は素直でいい子だから、他人の戯言を信じてしまうのも無理ないか。

「ということは、これもある種の露出プレイ―――そうと知っていれば、もっと興奮できたのに……残念です」

 真実を知らされた契は、呆然とするというより落胆していた。……そうだな。寝取り嫌いな癖に露出癖あるんだよな、この子。まだちゃんと露出したことはないけど。

「……お前、ほんとに逞しいな」

「そうですか? ご主人様の―――に比べれば全然ですよ」

「そういう逞しいじゃないし、そもそも何でお前は俺の―――を知ってるんだ?」

 あまりにいつも通りな契を見て、呈は珍しく感心していたのだが、なんか変な方向に話が流れている。……ついでに言うと、「―――」の部分に何が入るかはご想像にお任せします。

「……とにかく、どうにかしないとな」

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