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女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第三話 お姉様の登場です
29/46

「はい。ご主人様ご所望のスク水です」


  ◇



 ……呈は着替えを終えて、再び車のところまで戻ってきた。女性陣はまだ出てきていないようなので、その辺に座り込んで待つこと十分。


「……ご主人様?」

 すると、車の中から契が出てきた。彼女が最初に着替え終わったらしい。

「……スク水か」

「はい。ご主人様ご所望のスク水です」

 契が着ていたのは、学校指定のスクール水着。通称スク水だった。尤も、指定されているのは有名メーカーの競泳水着なので、コスプレ感はあまりないが。海水浴で着るのはどうかと聞かれたら返答に困るな。

「所望してはいないが……似合ってるぞ」

「ありがとうございますっ!」

 主に褒められて、ご満悦の契。……なんか、尻尾とか、変なものが色々見えてきたんだが。

「ちょっと、海に入る前から水着を濡らさないでよね」

「……そういうお前はなんて格好してるんだ?」

 続けて出てきたのは誠。ただしその姿は、契とは比べ物にならないくらい酷いものだった。

「どう? セクシーでしょ? これで浜辺の男たちを誘惑しちゃうわ♪」

「というかただの痴女だな」

 誠が身に着けていたのは、面積が極端に少ない白のビキニ―――いわゆるマイクロビキニだった。局部を申し訳程度に隠す水着は、寧ろ全裸よりも卑猥に見えた。

「ちょっと、それはいくらなんでも失礼じゃない?」

「当然のことを言ったまでだ」

 薄い布からも見える体の凹凸も、張りのある白い肌も、圧倒的な質量の胸も、必死な努力で得た腰のラインも、脚線美も、弟である呈には何の情動も与えない。まあ、そうでなければ色々と問題あるが。

「警察呼ばれないようにしてくれよ。後、俺たちに近づくな。知り合いだと思われたくない」

「うるさいわねっ! あんただって、契ちゃんにスク水を着せてる癖にっ!」

「そうよっ!」

 次に出てきたのは結。ピンク色のセパレートタイプ水着を着用した彼女は、腰に手を当てて、胸を張っている。

「お姉ちゃんに変な格好させないでよっ!」

「変な格好て……お前だって、同じ水着を授業で着てるだろ」

「う」

 威勢良く言った途端に突っ込まれて、結は顔を引き攣らせている。……そうだよな。同じ学校だから、水着も同じなんだよな。授業で着てるんだから、変な格好というのは適当でないだろう。

「結ちゃん……」

 最後に出てきたのは虚露。身に纏う水着は水色で、結のものとは色違いの同型だった。

「う、虚露ちゃんも何か言ってやってよっ!」

「え……で、でも、学校の水着だし、別に変じゃない、と、思う」

「……そ、そういうことにしておいてあげるわっ!」

 親友にまでそう言われては、さすがの結も引き下がるしかない。顔を真っ赤にして、ヤケクソ気味にそう叫ぶのだった。



  ◇



 ……そんなわけで、一行は砂浜へと向かった。


「……にしても、相変わらず人がいないわね」

 誠の台詞通り、砂浜にはあまり人気がなかった。彼ら以外の客は、家族連れとカップルが二組ずつだけだ。

「所帯持ちと彼女持ちばっかなんだから、少しは自重しろよ」

「分かってるわよ」

 誠は―――否、女性陣は皆、水着の上にTシャツを着ていた。お披露目を終えて、泳ぐ前に必要以上に肌を晒したくない乙女たちのため、呈がそうするように促したのだ。……尤も、誠に対しては、露出を抑えるためでもあったが。

「全く……これじゃあ、折角のセクシー水着が無駄になるじゃない」

「そもそも、ここを選んだ時点で気づけよ」

 前にも言った通り、ここ夕雲海岸は、人が少ない場所なのだ。そんなところで男漁りをしようとするのが間違いだろう。

「仕方ないでしょ? 久しぶりに来たかったんだから」

「……はぁ。もういいから。とにかく、泳ぐなら人のいないところにしてくれよ」

「あ、私は泳がないわよ? 日焼けするし」

「……よし、契、泳ぐぞ」

「はい、ご主人様」

 姉に付き合いきれなくなって、呈は契を連れて海へと繰り出した。

「あ、待ってよお姉ちゃんっ!」

「む、結ちゃん、待って……」

 契が動いたことで結が、結が動いたことで虚露が、それぞれ彼女たちの後を追う。……残されたのは、誠だけ。

「……え? もしかして、私一人で荷物番なの?」

 誰にともなく問いかける誠に、答える者はいなかった。



「……とは言ったものの、具体的にはどうするか?」

 姉を見限って波打ち際までやって来たはいいものの、呈はそこから先のことを考えてなかった。泳ぐと言ってもガチで競泳や遠泳をする気にはなれなかったし、契たちと水遊びするのもどうかと思ったのだ。

「泳がないんですか?」

「……まあ、適当に水と戯れるか」

 契に問われて、呈はゆっくりと海に入った。といっても、浅瀬の辺りで、腰まで浸かって波に身を委ねているだけだが。

「癒されますね~」

 主と同じように、海に漂う契。普段の、性的興奮によって弛緩したのとはまた違う、だらしのない表情をしていた。

「……このまま、何も考えずに浮かんでいたいな」

「そうですね~」

 何をするでもなく、ただ無為に時間を浪費する。そんな贅沢を、主とペットは満喫したのだった。



  ◇



 ……そんな感じで時間が流れ、昼頃。


「……そろそろ上がるか」

「はい~」

 皮膚がふやけるほどの間、ぷかぷかと浮いていた呈と契。彼らはいい加減、陸へ上がることにした。

「あ、やっと戻ってきた」

「あ、せ、先輩……」

 彼らが戻ると、結と虚露はビーチバレーをしていた。二人は海に入らず、ずっとビーチバレーしてたのか? しかも二人だけで。

「もぅ……二人とも、ずっと溺死体ごっこしてたの?」

「溺死体て……まあ、あながち間違いでもないが」

 折角、海という大自然を体中で満喫してきたのに、それを溺死体と呼ばれて不満げな呈。溺死体が駄目なら土左衛門と呼べばいいと思う。

「っていうか、お腹空いたんだけど」

「……そういや、もう飯の時間か。その辺で食い物確保してくるから、先に姉貴のところまで戻っててくれ」

「了解しました。結、鹿山さん、行こっ」

「うん、お姉ちゃん」

「は、はい……」

 女子たちが誠の元へ向かい、呈は昼食を調達しに行ったのだった。



  ◇



 ……十分後。


「……ん?」

 浜辺にある海の家(客が少ないのに何故かちゃんと営業していた)で焼き蕎麦とたこ焼きを購入した呈は、姉のいる場所まで歩いていた。その途中、彼はふと足を止めたのだ。

「……契か?」

 視線の先にいたのは契たち。呈より先に戻ったはずなのだが、何故かまだここにいた。

「……男?」

 どうやら、男の三人組に絡まれているらしい。さっきまではいなかったから、呈たちが海で浮いている間にやって来たのだろう。

「おい、契」

「あ、ご主人様っ!」

 呈が声を掛けると、契が振り返ってそう叫んだ。……彼女の台詞に、男たちが顔を引き攣らせているが。

「ちっ、男連れかよ……」

「行こうぜ」

 呈が現れたせいなのか、男たちはそそくさと立ち去った。どうやらナンパのようだな。

「申し訳ありません、ご主人様。あの人たち、結構しつこくて……」

「……こんな貧相な奴らをナンパするとか、ロリコンなのか、よっぽど女に恵まれていないのかだな」

「そ、そんな、貧相だなんて……はぁはぁ」

「……お姉ちゃん。今更だけど、そこは怒るところだよ?」

「ひ、貧相……」

 呈の呟いた言葉に、契はいつも通りの反応をしていたが、結と虚露は酷く傷ついた模様。……まあ、それが普通だよな。契が特殊なだけで。あと、別に貧乳だからといってロリってわけじゃないと思うし。

「さ、戻るぞ」

「は、はい……はぁはぁ」

「「……」」

 そういうわけで、海水浴午前の部、終了。何事もなく終わったな。

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