表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第三話 お姉様の登場です
24/46

「だ、大丈夫ですっ! 私はまだ処女ですからっ!」

  ◇



 ……呈の姉が帰ってきて。彼らは益田家のリビングで、向かい合って座っていた。


「じゃあ、改めまして。私は益田ますだまこと。呈の姉よ」

 改まったためか、先程よりも丁寧な口調で、呈の姉―――誠が契に自己紹介した。

「犬飼契です。ご主人様には、いつもお世話になっております」

 対面に座る契も、改めて自己紹介する。後半がちょっとあれだが、今更なので放っておくか。

「……で? やっぱり、そういうプレイなの? 夜とかどんな感じなのよ? 首輪つけたりするの?」

「いきなり何の話だよ?」

 挨拶が終わり、下品な表情を浮かべた姉に、呈は契の隣から声を挟んだ。弟としては、姉にそういうことを勘繰られたくないのか。

「あら、そんなマニアックなプレイをしてるなら、「そういうこと」だってしてるでしょ?」

「言っておくが、これはこいつの趣味だ。こいつがしつこいから、適当に相手してるだけだぜ?」

「ふ~ん? あんたが女を知るだなんて、まだ早いと思うんだけど?」

「だ、大丈夫ですっ! 私はまだ処女ですからっ!」

「お前は何を口走ってるんだよ!?」

 姉弟の口論に耐えかねたのか、契が爆弾を投下した。……やっぱ、自分の主が家族と揉めているのは、落ち着かないのか? 契は家族と仲が良いから、余計になのかもしれないが。

「プッ……! あんた、そんな可愛くて従順な女の子がいるのに、まだ手を出してないの?」

「悪いか?」

「悪くないわよ。ただ、へたれだなって」

「あ、あの……」

 更には、折角契が話の流れを変えようとしたのに、結局口喧嘩は止まらなかった。……というか、ただ仲が悪いだけなのか。それとも、誠がこういう性格なだけか。

「大体、あんたは臆病なのよ。前にもあの子―――虚露ちゃんだっけ? あの子だって、助けた恩に付け込めば、簡単にものに出来たでしょ? それをみすみす逃すなんて……あんた、ひょっとしてついてないの?」

「余計なお世話だ」

「あら、図星? 知らなかったわ。自分の弟が、実は妹だったなんて」

「寝言は寝て言え。それとも、とうとう頭が壊れたか?」

「壊れているのはあんたのホルモンバランスでしょ?」

「そうだな、頭は元々壊れていたか」

 お互い、契のことなど完全に置き去りにして、そのまま罵り合いを続けていく姉弟二人。面倒だし、暫く放っておくか。

「あんたねぇ! あんたのオネショを誰が片付けたと思ってんの!? ちょっとは感謝しなさいよ!」

「母さんだろ! お前は何もしてないだろうが! 大体、俺が漏らしたのは、小さい頃に一度だけだ!」

「都合の悪い記憶を改竄してるのね!?」

「それはこっちの台詞だ!」

「幼稚園児の頃、私の後ろを「おねぇちゃ~ん」って言いながらついて来たのはどこのどいつよ!?」

「俺はそんなことしてねぇ! それは―――っ!」

「あっ……」

 そんな感じで姉弟喧嘩を続けていたのだが、二人は急に黙りこくってしまった。今の会話のどこに、沈黙する要素があったのか?

「……ちょっと休んでくる」

「……ええ、いってらっしゃい」

 居心地が悪くなったのか、呈は自室に引っ込んでいく。残されたのは、契と誠の二人。……っていうか、契に断りもなしかよ。主失格だな、おい。

「あ、あの、えっと……」

「ああ、うん。なんか、ごめんなさいね」

 突然の出来事に戸惑う契に、誠は苦笑しながら謝罪した。

「い、いえ……」

「いいのよ。悪いのは私。私があの子の地雷を踏んじゃったの」

「地雷、ですか?」

 誠の言葉に、契は首を傾げる。はて? 今の会話のどこに地雷が?

「さっき言ってた、「私のことを「おねぇちゃ~ん」って言いながらついて来た子」っていうのがね、あの子の幼馴染なのよ」

 なるほど、それは呈ではなく、幼馴染のほうだったのか。……ということは、呈とその幼馴染の間に、何かがあったのか?

「あの子のことは、呈にはご法度っていうか……ともかく、デリケートな話題なのよ。あの子があんな性格になった原因でもあるし」

「その幼馴染さんと、喧嘩でもなさったんですか?」

「う~ん……喧嘩だったら良かったんだけどね」

 今まではずけずけと物を言っていた誠だが、この話に関してはしどろもどろというか、どう説明するか悩んでいるようだ。それほどまでに、この問題は厄介なのだろうか?

「多分、あなたにもその内話すと思うわ。呈とはかなり親しいみたいだし。……けど、今はまだ待って。あの子達だって、無闇に言い触らされたくないだろうし」

「分かりました」

 先程までとは打って変わって、弟のことを案じている誠。そんな彼女に、契は素直を頷いた。……それは、誠が()の姉だからか。或いは、純粋に主のことを想ってなのか。ともあれ、この場で事情を聞きだすつもりはないようだ。

「……さてと。あの馬鹿な弟の機嫌を取ってくるから、あなたは帰るなり自由にして頂戴」

「分かりました。それでは、お暇させて頂きますね」

「はーい」

 誠にそう言われて、契はすんなり益田家を後にした。気を利かせたのだろうか?

「……全く、ほんとにいい子ね。あの子には勿体無いくらい」

 契がいなくなって。誠は無意識のうちに、そう呟いていた。そんなに彼女のことが気に入ったのだろうか?

「……でも、このままだと、彼女はピンチかもね」

 その「彼女」というのが契なのか、それとも別の誰かなのか。それは、誠だけが知ることだった。



 ……その頃、呈は。


「……」

 彼は例の如く、自室のベッドでごろごろしていた。……精神的に弱っているとき、呈はいつもベッドの上に転がる。契について悩んだときも、こうすることが多かった。

「呈? いるの? 生きてる?」

「……姉貴か」

 すると、部屋の外から誠の声が。呈は正直無視したかったが、扉を蹴破られても困るので、渋々起き上がって、ドアの手前まで行く。

「何だ?」

 しかしながら、姿を見せるつもりはないらしい。ドアを開けることなく、姉との会話に応じる。

「契ちゃん、帰っちゃったわよ? あなた、あの子の「飼い主」なんでしょ? 放っておいていいの?」

「……お前には、関係ないだろ」

 諭すような姉の言葉に、呈は逃げの常套句を放った。―――「関係ない」。これを言われてしまうと、それ以上踏み込みづらくなってしまう。

「関係あるわよ」

 しかし、誠はいとも簡単に、そう答えた。そうさせたのは、血の繋がりか、それとも長い付き合いか。

「私はあんたの姉なの。あんたが周りに迷惑掛けたら、私が尻拭いしないといけないのよ。だから少なくとも、女の子をペットにするなら、私も干渉させてもらうわ」

 ある意味、とても傲慢で。それ故に、とても自分勝手で。しかしそれは、呈のことを案じているからこそ出た言葉であった。

「……勝手にやってろ」

 それが伝わったのか、呈はそれだけ言うと、すぐベッドに引き返す。……それから、契に向けて、フォローのメールを送るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ