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女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第二話 専属エンジニアです
23/46

「よろしくお願いします、ゴミ姉上」


 ……さて、その少年たちは。


「……なんだったんだろうな?」

「……さあな」

 虚露が走り去って、残された少年たちは途方に暮れていた。彼女の性格を考えると、突然走り去るのは意外だったのだ。

「……ま、いっか。元気みたいだし」

「……そうだな」

 しかし、それを気に留めている様子はない。そのまま踵を返し、帰ろうとした。

「……ほう? それは良かったな」

「「……!」」

 ……のだが、後ろから聞こえてきた声に、二人はゆっくりと振り返る。そこにいたのは―――

「どうやら、うちの後輩が世話になったみたいで……たっぷりとお礼をしないとな」

「ま、益田……!」

「な、何でお前がここに……!?」

 現れたのは、呈だった。結の電話を受けて、ここまで駆けつけたのだろうか。

「学習能力のないゴミに、生きる権利はないからな」

「ま、待てって……!」

「お、俺たち、別に何もしてな―――」

「問答無用」

 それから二人は、強引に路地裏に連れ込まれて―――徹底的に「私刑リンチ」された(面倒なので描写は割愛)。……ご愁傷様。

「……ふん」

 少年二人を始末して、呈は鼻を鳴らしながら去っていく。残されたのは、ボロ布のようになった少年二人のみ。

「り、理不尽だ……」

「鬼だ……、悪魔だ……」

 実のところ、彼らは別に、虚露に何かをするつもりはなかった。ただ、純粋に虚露のことが心配だっただけだ。しかしながら、余計なことをしたために、こんな目に遭ったのだとさ。めでたしめでたし。



 ……その頃、結と虚露は。


「結」

「あ、お姉ちゃん」

 結たちと契が合流。これにより、契、結、虚露の三人が同時に集まりました。

「虚露ちゃん。多分もう知ってると思うけど、私のお姉ちゃんだよ」

「う、うん……」

 ちゃんと紹介を受けて、やはりこの二人は姉妹であったかと思う虚露。ちゃんと顔を合わせて確認したのはこれが初めてだからな。

「鹿山さん、大丈夫? 男の人たちに絡まれたって聞いたけど」

「は、はい……大丈夫、です」

 虚露のことを案じる契に、彼女は控え目にそう答えた。……結が相手だと普通に話せるが、姉のほうではまだ無理か。会ったの一回だけだし。

「それで、あいつは?」

「ご主人様のこと? 私より先に向かわれたから、多分今頃、ヒーローになられてるんじゃないかな?」

「ヒーロー?」

 主のことをヒーローと呼ぶ姉に、結は首を傾げる。……もしかすると、呈が少年たちを屠る場面を、アニメの主人公に重ねているのだろうか?

「契」

「あ、ご主人様」

 そうこうしているうちに、呈も合流した。仕事が速いな、おい。

「……虚露」

「は、はい……」

 すると呈は虚露のほうを向き、彼女に声を掛けた。そして、虚露に対してこんな台詞を放つ。

「大丈夫だったか?」

 なんと、呈が虚露のことを心配していた。……やっぱり、内心では心配で仕方なかったのだろうか?

「は、はい……!」

 返事をする虚露も、どことなく嬉しそうだった。呈に気に掛けてもらえたのが、そんなに良かったのか?

「それより、ちゃんと締めてきたんでしょうね?」

「ああ。きっちりとな」

 一方、結の問い掛けに、呈はそう頷いた。……うん、確かに「きっちりと」だったな。

「あんたなんて、それくらいしか役に立たないんだから、ちゃんとやってもらわないとね」

 彼の返答に満足したのか、結はそんな風に言いながら胸を張っていた。……なんか偉そう。何もしてないのに。

「……ほう」

 しかし呈は、彼女の変化に気づいた。……結の態度が以前よりも、姉である契りですら分からないくらいだが、軟化しているのだ。偉そうなことを言いながらも、呈に対する嫌悪感が減っていた。

「……うちの後輩を、頼んだぞ」

「え?」

 そんな彼女に、呈は呟くようにそう言った。結はそれを聞き取れていなかったが、呈は気にしなかった。

「契、行くぞ」

「はい、ご主人様。じゃあ、行くね。結」

 そして彼はそのまま、契を引き連れて立ち去る。……去り際、呈は少しだけ虚露のほうを見やった。

「……」

 彼女は僅かに―――ほんの僅かではあったが、確かに笑っていたのだった。



  ◇



 ……呈が帰宅して。


「……ふぅ」

「お疲れ様です、ご主人様」

 家に着くなり溜息を漏らした呈を、契が労った。少年たちをフルボッコにしたから、それなりに疲れたのだろう。

「……これで、もう虚露は大丈夫だな」

「はい?」

 呈が零した呟きに、契は首を傾げた。別に説明する必要はないのだが、呈は彼女に話してやることにした。

「虚露はもう、一人じゃない。最早、俺が中途半端に構ってやる必要はないんだ。……まあ、後輩の世話は、俺の柄じゃないってことだな」

 そう語る呈は、どことなく寂しそうで。確かに、そういうのは、彼のキャラではないだろうが。それでも、数少ない他者との繋がりだからなのか、寂寥感は拭えないのだろう。

「まあ、そういうことだ。……これからは、面倒なことをしなくて済むから楽だな」

「ご主人様……」

 そんな主に、契は何ともいえない気持ちになった。優しい言葉を掛けるべきなのか、それとも何も言わないべきなのか。見当もつかない。

「……私は、一生ご主人様に服従しますから」

 結局、彼女が言えたのはそれだけだった。契らしいといえばらしいが。

「……そうか」

 しかし、呈はそれでも、どこか安堵しているようだった。……まあ、現状では一番大きな繋がりだからな。何だかんだ言って、呈も一人は寂しい生き物なのだろうさ。

「……何? あんたたち、そういう関係なの?」

「「……!?」」

 と思ったのも束の間。何故か第三者の声が割り込んできた。呈と契は、驚きながら声のしたほうへ振り返る。

「はろ~」

 そこにいたのは、女性だった。年齢は二十代前半くらいで、癖毛が特徴的な彼女は、軽薄そうな空気を纏いながら、ひらひらと右手を振っていた。

「あの、えっと……」

「っていうか、なかなか可愛い子じゃない。何よ、愚弟の癖に、私より先に「恋人いない暦=実年齢」を卒業する気? 童貞のうちに死になさいよ」

「黙れ糞姉。お前の男日照りはお前自身のせいだろ」

「なっ……! あんた、言ってはならないことを―――」

 事情が飲み込めない契を放置して、呈と女性は口論を始めた。……っていうか、二人の口振りからすると、彼らは姉弟なのか?

「っていうか、ほんとにその子、誰なの? 性奴隷ペットか何か?」

「はいっ! 私はご主人様のペットですっ!」

 女性が口にした単語に、契がここぞとばかりに声を上げた。……うん。そんな単語出したら、こうなるよな。

「……こいつは犬飼契。見ての通り変態だ。で、こっちは俺の姉。軽蔑の気持ちを込めて「ゴミ姉上」と呼んでやれ」

「よろしくお願いします、ゴミ姉上」

 そんな彼女たちをフォローするように、呈が契と女性を互いに紹介する。しかし何故か、契に自分の姉を侮辱させていた。……もしかして、こいつら、仲悪い?

「あら? いい加減にしないと本気で怒るわよ?」

「契、訂正する。親愛を込めて「お姉様」と呼んでやれ」

「よろしくお願いします、お姉様」

 だが、姉に睨まれて、呈はすぐさま前言撤回する羽目になった。結局、姉には勝てないのね。

「……で? 今日は何だ? 俺の様子でも見に来たのか?」

「そうね。ついでに言うと、もう夏休みの時期だし、帰省も兼ねてね」

 その言葉に、呈は頭を押さえて呻いている。……そんなに、姉がいると嫌なのか?

「それで……契ちゃん、でいいのよね? これからよろしくね」

「はいっ!」

 そんな主など気にも留めず、契は彼の姉と握手を交わすのだった。……さて、これからどうなるのやら。

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