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女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第二話 専属エンジニアです
20/46

「ご主人様、如何ですか?」


  ◇



 ……翌日。


「虚露ちゃん、帰りに本屋行かない?」

「う、うん、いいけど……」

 朝。結は虚露と、放課後の予定を話し合っていた。今までは呈にちょっかいを掛けていたのだが、それはもう止めることにしたのだ。ちょっと気が早いようにも思えるが。

「前から待ってた新刊がようやく発売なの。あ、そういえば虚露ちゃんって、普段はどんな本読んでるの?」

「え、えっと、先輩から漫画をたまに借りるくらいかな」

「そうなんだ。じゃあ、私のお勧めも貸してあげるね」

 和気藹々と、二人でお喋りしている。……今までは共闘という感じだったので、教室での雑談はあまりなかった。しかし今は、普通の友達のように話している。実際、彼女たちは既に友達なのだから。

「じゃあ、そういう感じで」

「う、うん……」

 やがてチャイムが鳴ったので、二人は会話を中断してそれぞれの席に着いた。



  ◇



 ……昼休み。


「虚露ちゃん、ご飯食べよっ」

「う、うん……」

 お昼の教室で、結と虚露が仲良く昼食を取る。

「あ、虚露ちゃんもお弁当なんだ。自分で作ってるの?」

「う、うん、一応」

 虚露の食事は質素な弁当だった。米の他はごぼうの金平しかない、かなり寂しい献立だ。……っていうか、炊飯器なかったよな? どうやってご飯炊いたんだ? 出来合いか?

「そうだ、私のハンバーグ一つあげるね」

「え? い、いいの……?」

「うん。仲良しの証~」

「あ、あり、がと……」

「代わりに金平少し頂戴」

「う、うん、いいよ」

 おかず交換をしながら、賑やかに食事を続ける二人。本当に、楽しそうだな。



 ……その頃、中庭では。


「ご主人様、如何ですか?」

「ああ、うまい」

「ありがとうございます」

 呈と契も、いつものように昼食を取っていた。ただし、今日は少しだけ違った。契が、新しい料理に挑戦したのだ。

「豆腐ハンバーグは初めて作ったので、あまり自信がなかったのですが喜んで頂けて嬉しいです」

「普通のハンバーグが作れるんだから、それと然程変わらないだろうに」

 契の新作は豆腐ハンバーグ。味付けはソースではなく醤油にして、和風ハンバーグになっている。

「結のお弁当にも入れたんですが、あの子も気に入ってくれてるでしょうか?」

「安心しろ。お前の妹は、お前の料理なら劇物でも喜ぶ」

 契の言葉に、呈はそんな風に太鼓判を押した。……っていうか、結が虚露にあげてたのって、契が作ったハンバーグだったのか。病的なシスコンの彼女にしては珍しいな。

「っていうか、お前も大概、物好きだよな」

「はい?」

「ドMなのは性癖だから仕方ないとしても、何で態々弁当なんて作ってくるんだ?」

 呈が疑問に思っていたのは、契の行動。いかに彼のペットになったからといって、甲斐甲斐しく昼食の世話をする必要などないのだ。最初は奉仕をするためなのかとも思っていたのだが、彼女の様子を見るとそうでもないようだ。一体、どういう意図でそんなことをしているのか。

「最初は、ご主人様にご奉仕がしたかっただけでした」

 その問いに、契はそう呟く。……っていうか、奉仕無用と言われてなかったか? 態と無視したのか? ある意味、欲望に忠実な彼女らしいけど。

「ですが、最近ではそれだけではないんです。もっと、こう、ご主人様に喜んで頂きたいんです」

 しかし、今は違う。ただ下心だけでそうしているわけではなかった。それは、彼女の心境にも変化があったということか。

「……もしかして、ご迷惑でしたか?」

 すると、契は不安そうにそう問いかけてきた。どうやら、彼女の本心が呈の機嫌を損ねたと思ったようだ。

「いや、それはいいんだが……そうか」

 呈は首を横に振ると、納得したように頷いた。……いや、納得はしてなかった。だが、本心が自覚していないことを問い質しても意味がないから、諦めたのだ。

「まあいい。こちらとしても、食事に不自由しないのは助かるしな」

「……はいっ!」

 そんな感じで、今日の昼休みは終わるのだった。



  ◇



 ……放課後。


「さ、行こっ」

「う、うん……」

 放課後になって、結と虚露は一緒に学校を出た。朝に言った通り、二人で本屋に行くのだ。

「もうすぐ夏休みだよね。虚露ちゃんは、夏休みの予定って何かあるの?」

「う、ううん……何も、ないよ」

 その道中も、二人で雑談していた。というか、結が虚露のことを知りたがっているようだ。

「そうなんだ。私は、折角だから、海に行きたいなぁ」

「海……」

「お姉ちゃんと行きたいけど、そうすると、あいつも一緒だろうし……う~ん、悩む」

 姉と海に行きたいが、素直にそう出来ないでいる結。今は特に敵視していないとはいえ、やはり、呈と一緒に海に行くのは抵抗があるのだろうか。

「あ、虚露ちゃんと二人で行けばいいんだ。っていうわけで一緒にどう?」

「え? う、うん、考えて、おく、ね……」

 結のお誘いに、虚露はやや遅れてそう返した。それは別に、彼女が結の話を聞いていなかったわけではない。ただ、無意識に頷きそうになって、それを慌てて誤魔化しただけだ。

「そう?」

 その甲斐あってか、結は彼女の態度に不信感を抱かなかった。単純に、結が鈍感なだけにも思えるが。

「……うん」

 それを見て、虚露は安堵しながら、自分の腕を抱くのだった。



「あ、ここだよ」

 それからすぐに、二人は本屋に辿り着いた。DVDやCDの販売店が併設されたこの店は、この辺りでは唯一の本屋(ショッピングモール内にあるものを含めれば他にもあるが、それらよりはずっと大規模)だ。

「あった、これだ」

 お目当ての本もすぐに見つかり、スムーズに購入へと至った。早々に用事を済ませて、店を出る二人。

「折角だから、どこか寄ってく?」

「え……で、でも、お金ないし」

「だよねー。最近、ドーナツ食べすぎだったし」

 これ以上寄り道をする金銭的な余裕もなく、二人はそのまま帰宅することにした。



 ……その頃、彼女たちのすぐ傍にて。


「あ~。どっかにいい女はいねぇかな~」

「んな都合よく転がってるわけないだろ」

 町をぶらぶら歩いているのは、二人の少年。冴えない、地味な格好の彼らは、暇を持て余した学生か? 私服姿なので、確証はないが。

「中学んときは良かったよな、そういう意味では」

「確かにな……けど、あんな目に遭うのは二度とごめんだ」

 明確な目的もなく、ただ彷徨っているだけの二人。暇潰しに、道行く人々(主に若い女性)へと目を向けていた。

「おっ、あいつ……」

「ん? ……ああ、あいつか」

 そんな彼らは、二人組みの少女に―――正確には、その片方に目を向けた。彼女は、二人の知人だったのだ。

「あいつなんてどうだ?」

「おま、正気かよ……!? あんなに酷い目に遭っただろ?」

「大丈夫だって。あいつだって、卒業したら縁が切れてるはずだろ? まさか付き合ってるわけないだろうし」

「それはそうだろうが……それでも、やばくね?」

「平気平気。あいつが言いつけることもないだろ? そんな度胸があったら、俺たちがおいしい思いなんて出来なかったんだし」

「……その代わり、えらい目にあったけどな」

 そんな彼らの相談は、無論、二人が見ていた少女には届いていなかった。

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