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女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第二話 専属エンジニアです
14/46

「ですがご主人様。折角ご主人様のペットとなったのに、私は未だに処女ですよ?」

  ◇



 ……季節が移り、夏が来た。呈と契の通う学校も、衣替えによって夏服の生徒が増えてきた。夏は気分が開放的になるから、あの二人も色々と進展しているかもしれない。


「ご主人様。スク水とマイクロビキニ、どちらがいいですか?」

「藪から棒に何の話だ?」

 いつもの昼休み。二人は裏庭の木陰で(ベンチは日が照って暑いので、木陰にビニールシートを敷いている)、昼食を終えたばかりだった。そんなとき、契は呈に唐突な質問をした。

「もうすぐ夏ですから」

「それで?」

 それでは理由になっていないと突っ込みたかったが、呈はじっと堪えて続きを促す。彼女に対して怒っても無駄だし、寧ろ付け上がるだけだから。

「夏といえば海です。つまり―――海で、ご主人様に露出調教して頂く場合に、どの水着が良いかと思いまして」

 態々海まで行って調教なのかとか、露出調教なのかとか、そもそも水着を着ていたら露出じゃないのではとか、言いたいことは沢山あった。けれども、呈はそれらをぐっと飲み込み、契に対して言葉を返す。

「露出はせんでいい。また、谷口みたいなゴミが沸くと面倒だ。……ついでに、個人的にはスク水一択だな」

「畏まりました。それでは、ご主人様のお宅でのみ着用ということで」

 さすが、体操服の少女()を亀甲縛りしただけのことはある。そういう言動にも慣れてきてしまったな。

「そうだな。着るなら、あまり人目につかない場所がいいな。授業とかならともかく」

 谷口の一件以来、呈は契の言うことに一々突っ込まなくなった。同時に、先程のような、契を独占したがっているような発言も増えている。それは、谷口のように、契を奪おうとする輩に怯えているからだろうか。

「はい。―――はぁ、はぁ。スク水でご主人様に調教して頂けるのかと思うと、今から興奮してしまいますぅ~」

「誰もその格好でするとは言ってないからな」

 しかし、突っ込みが皆無なわけではない。認識の相違は後々厄介な問題になるので、ちゃんと正さないといけないのだ。

「ですがご主人様。折角ご主人様のペットとなったのに、私は未だに処女ですよ?」

「……それがどうした?」

 けれども、変わったのは呈だけではない。契も、以前以上に自己主張をするようになった。……元々、我侭だったような気もするが。そこは突っ込み禁止。

「いえ、私の純潔はご主人様に穢して頂ければと思いまして。体を破壊するような激しい陵辱で辱めて頂ければ、万が一、他の男に襲われても平気です」

「平気ではないだろう」

 契の要求は、主に自身の扱い。自分を呈の物に―――女にして欲しいということだ。こちらも、先日の事件を踏まえての発言だろう。

「それに、俺はそういうことをしたくないのだが」

 しかし呈は、契にそういうことを求めていない。……というか、寧ろ忌避しているような素振りさえ見せている。

「そうですか。畏まりました」

 主の希望に、契は素直に引き下がることにした。そもそも、契は呈のペットだ。自分の主張が受け入れられなかったら、それ以上食い下がることは許されない。それを彼女もよく理解していた。

「悪いな……俺は、女を穢すのがあまり好きじゃないんだ」

 それでも、契の純粋な―――欲望に忠実という意味で―――気持ちを蔑ろにした事実。呈は珍しく、契に対して謝罪の言葉を述べた。

「いえ。私のほうこそ、身の程を弁えず勝手なことを申しました」

「まあ、お前は常時発情しているのがアイデンティティだからな」

 契の言葉にそう返して、呈はこの話を打ち切った。そして、丁度昼休みも終了した。



  ◇



 ……放課後。


「ご主人様。今日はどちらへ?」

「ああ。ちょっと野暮用でな」

 下校途中。呈は契を連れて、いつもと違うルートを歩いていた。まっすぐ帰宅せず、どこかに寄るようだ。

「ついでだから、お前にも会わせてやるよ。前に言ってた奴だ」

「前に……昔、ご主人様が助けられた子ですか?」

「ああ」

 前回の最後で話題になっていた、呈の後輩。彼女がとうとう登場するらしい。それは楽しみだ。



「着いたぞ」

 二人がやって来たのは、古びたアパート。呈はその一室の前まで来ると、少し強めにドアを叩いた。

「は、はい……」

 それからすぐ、気弱そうな声と共にドアが開かれた。チェーンの繋がったドアの向こうから現れたのは、一人の少女。オドオドと頼りない挙動に、顔の半分を隠すほどに長い前髪。全体的に平均的な体格の彼女は、色々控え目な契よりも体の起伏が激しいように思えた。しかしそれも、猫背とびくびくした態度によって殆ど目立たない。

「俺だ。今日は連れもいる」

「は、はい……」

 呈に言われて、少女はドアを大きく開き、呈と契を部屋に招き入れる。部屋は小さな四畳半で、部屋の奥に簡素な机があるだけで他の家具もない。その机も、はんだごてやドライバーなどの工具で埋まっていて、かなり雑然としている。残ったスペースも、座布団が何枚かあるだけで、物が見当たらなかった。

「ど、どうぞ……」

 少女は呈たちを上座に座らせると、隣接する台所から麦茶を持ってきた。台所には冷蔵庫すらなかったのだが、どこから取り出したのだろうか?

「とりあえず、紹介する。こいつは犬飼契。俺のペットだ」

「初めまして。犬飼契です」

 二人の対面に少女が座り、呈は少女に契のことを紹介した。契は持ち前の礼儀正しさをフルに発揮し、少女に対して頭を下げる。

「し、鹿山、虚露うつろ、です……」

 契の自己紹介を受けて、少女も名乗った。この子が、呈の後輩なのか。随分と大人しい、というか臆病に見える。

「それで、例のものは出来てるか?」

「は、はい……」

 呈の言葉に、虚露は机の下から何かを取り出す。見れば、それは紙袋だった。A3の用紙と同じくらいのサイズだ。中に何が入っているのか。

「……確かに」

 呈は中身を確認して、それを鞄の中に仕舞った。どうやら、虚露に用意させていた物のようだな。

「金はいつもの口座に振り込んでおいた。次も頼むぞ」

「は、はい……」

 代金についても話し終え、呈は虚露が淹れてくれた麦茶に口をつける。用事は済んだようだが、まだ居座るのか。

「ふぅ……。虚露、あいつらのこと、覚えてるよな?」

「……っ!?」

 溜息交じりの呈から出てきた、酷く抽象的な代名詞に、虚露は酷く動揺した。それだけで、呈と虚露の間では、何のことか伝わってしまうのか。

「あいつらが契にちょっかいを掛けてきた。あのとき居合わせた奴らはきっちり絞めておいたが……恐らく、あれだけされても、まだ懲りてないんだろう。他の奴らが、またお前に手を出さないとも限らない。くれぐれも用心しておけよ」

「は、はい……」

 話の内容から察するに、「あいつら」とは、先日契を襲った輩のことみたいだ。そういえば、あの男たちは、過去には虚露にも酷いことをしたのだったな。

「それだけだ。邪魔したな」

 そして呈は、残った麦茶を一気に飲み干し、立ち上がる。契も彼に続いた。

「は、はい……」

 そのまま出て行く彼らを、虚露はびくびくしながら見送った。……っていうかこの子、「はい」としか言わないな。

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