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女の子(ペット)を飼います  作者: 恵/.
第一話 ペット飼いました
12/46

「い、嫌……来ないでっ!」


 ……さて、契はまだ無事なのか。


「い、嫌……来ないでっ!」

 契の声が神社に響き渡る。まだ無事のようだが、彼女は少年たちに囲まれ、本格的に危ない状況だ。

「へへっ。あの益田の女だって思うと、余計に燃えてくるぜ」

「全くだ。あのときの恨みを存分に晴らさないとな」

 少年たちは、契を取り囲んでテンションが上がっていた。どうやら、彼女が呈の関係者(彼らは恋人か何かと勘違いしていた模様)だと知って、益々舞い上がっているらしい。……呈が懲らしめた下衆共だからだろうか。

「おい、どうするよ?」

「とりあえずひん剥いちまえよ」

 日頃持て余した性欲と、ある男への恨み。それを一挙に解消できるとあって、少年たちは鼻息荒く、契へと手を伸ばした。

「嫌っ……! 来ないでっ……!」

 必死の抵抗も虚しく、契は両腕を少年たちに掴まれてしまう。……万事休すか? っていうか、契のドMって、こういう場面では発揮されないんだな。

「……ほぅ」

 だが、そこで時間が停止した。否、時間が停止したような、錯覚に陥ったのだ。場の空気が凍りつき、皆動きを止めた。……ただ一人の例外を除いて。

「……ご主人様?」

 契は、声のした方向に顔を向ける。そこには少年たちが立ちはだかっていたが、その隙間から見えた。―――彼女の主である、呈の姿が。

「なるほどな……やはり、殺しておくべきだったか」

「……っ!?」

 ぞくり。背筋に奔った悪寒に、契は言い知れぬ快楽を、少年たちは恐怖を、それぞれ感じていた。……呈から放たれた殺気に、人間の本能が反応しているのだ。

「そいつが俺の「物」だってことを理解した上での所業というのなら―――お前ら、この世を去る覚悟は出来てるんだろうな?」

 この場にいる、呈以外の全員が、強烈な殺気に当てられて失禁しそうになっていた。契は快感故に、残りは死を予感して。……この殺気は、言うまでもなく少年たちに向けたもので、契はその対象ではない。だが、そんな彼女ですら、これは「最高だった」。もしも契が異常性癖者でなければ、再起不能なほどの精神的ダメージを受けていただろう。

「安心しろ。覚悟してるなら殺す。してないなら、存在を消す。最低でも、生きてることを悔やませてやる」

 そして、呈は一歩、前へ踏み出した。ゆっくりと、一歩ずつ、少年たちに近づいていく。……まるで、死神が魂を狩るために、緩やかに接近しているかのように。

「……ひ」

 最初に声を上げたのは、呈に最も近い位置にいた少年。情けない悲鳴を上げようとして、しかしそれは最後まで紡げなかった。

「がっ……!」

 まるでそれを防ぐかの如く、呈がその少年の前に急接近。そのまま彼の頭を掴み、地面に倒した。

「ぐはっ……!」

 更にその頭を、呈は全力で踏みつけた。比較的軟らかい地面に、少年の頭が、僅かにのめり込む。

「……」

「……う、うわぁーーー!」

 呈の瞳が、次なる獲物を求めて彷徨う。そんな彼に対して、少年たちが取った行動は二つ。恐怖で足が竦んで何も出来ないか、パニックになって呈に襲い掛かるか。

「ごふっ……!」

「がはっ……!」

 だが、それはどちらも無意味だった。後者は速攻で地面に捻じ伏せられ、前者もすぐに同じ運命を辿るのだから。

「や、止めろ、止めてくれっ……!」

 仲間が次々と断罪されていく様を目の当たりにして、リーダーの少年は、命乞いをするように、そう叫びだした。

「……お前か」

「ひぃっ……!」

 リーダーは呈と顔見知りらしい。呈の顔を見て、尻餅をついて怯えている。

「確か、お前に言ったと思うんだが。次は本気でぶっ殺すと」

「ち、違うんだ……! 俺はただ、こいつに命じられて―――」

「何か勘違いしてるだろ」

 リーダーが谷口に責任転嫁しようとするが、それは呈に封じられてしまう。

「お前はゴミだ。ゴミに生きる権利などない。それを態々生かしてやったのに、また俺の前に現れて、しかも俺の物に手を出したんだ。殺されても文句は言えまい」

 呈の一方的な言い分に、リーダーは抗議することは出来なかった。そんな暇もなく、胸倉を掴まれ、そのまま地面に頭を縫い付けられてしまったのだ。

「……」

「な、何なんだよっ……!?」

 そして、呈が最後に目を向けたのは、今回の首謀者―――谷口だった。

「ぼ、僕にもこんなことをするつもりか……? そ、そんなことしたら、僕の両親が黙ってないぞ……! 親は弁護士なんだ……! お前なんか、殺人罪で訴えてやるっ……!」

 この状況で虚勢が張れるだけ、谷口の精神はそこそこ強い―――鈍感とも言う―――のだろう。因みに、少年たちはまだ死んでないから、殺人罪は適用されない。後、自分が殺されたとすれば、その後で弁護士が出てきても手遅れだ。

「お前、馬鹿だろ?」

 だが、呈がこの言葉を口にしたのは、もっと違う理由からだ。

「殺人がどういう字を書くのか知らないのか? 「人を殺す」、故に殺人だ」

 しかし、これだけでは、呈の言い分は分からない。本人もそれに気づいているのか、すぐに補足説明をする。

「お前は、ゴミだ。害虫だ。害虫を殺しても殺人にはならない。それともお前は、ゴキブリを殺したら罪になるとでも思っているのか?」

 奇しくも、谷口が呈を非難する際に遣った言葉で。呈は、谷口に対する処刑宣言を行った。

「そもそも、お前に生きる権利などない。俺はお前の生存を許していない。だから死ね。俺の許可なく、勝手にこの世に存在するな」

 それは理不尽な暴言で。それと同時に、呈の怒りがどれほどのものか、よく分かる。自分のものを他人に触られたくない。独占欲とも、支配欲とも違う。マニアが自分のコレクションをガラスケースに仕舞い込むのとも違う、何か。それが、今の彼を駆り立てていた。

「生まれてきたことを、そして今まで生きてきたことを後悔して、死ね」

 谷口は、悲鳴を上げるこも出来なかった。呈は彼の頭を掴み、地面に勢いよく叩きつける。そして彼の頭を、力強く踏みつけた。

「呻くな」

 しかも、それだけでは飽き足らず、足を更に押し付けていく。つまり、谷口の顔面が地面に沈んでいくのだ。彼は眼鏡を掛けているのだが、レンズが割れて目を傷つけてしまっても構わないという風に。それ以前に、言葉の通り、死んでしまってもいい。寧ろ死んでくれという感じだ。

「……もう二度と、生まれてくるんじゃねぇぞ」

 ついでに来世すらも否定して、呈は、動かなくなった谷口に背を向ける。そして契の傍に来ると、彼女のほうをちらりと見て、行為が未遂であることを確認した。

「……行くぞ」

「はぁ……はぁ……。はい、ご主人様ぁ~……」

 その契といえば。呈の暴力的な行動に興奮(恐怖、ではない)しながらも、彼の後について行く。襲われかけたことによって、心に傷を受けた様子もない。……どうやら、この惨状を目の当たりにして興奮したため、精神が安定したようだ。恐らく、暴行されていた少年たちを自分に重ねて喜んでいたのだろう。さすがはドM。

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