1. 私、貴族をやめます
拙作「理不尽な!?」と同じ世界のお話です。
恋愛物に初挑戦なので、どうなるのか分かりません。上記の作品とリンクする時があるかもしれません。
私、名前をヴィヴィアンナ・マイ・ル・ウォルンタスと申します。
末席ではありますが、男爵位をいただく貴族なのです。
私の上には兄が3人、姉が3人おりまして7人兄弟姉妹の末っ子でございます。
長兄がバルト25歳、次兄がソルト22歳、三男がケルト19歳です。
長女がアリアンナ24歳、次女がマリアンナ20歳、三女がユリアンナ18歳です。
そして私、四女のヴィヴィアンナ16歳にそろそろなります。
・・・・・母様、頑張りました。尊敬いたします。
でも何でしょうね?この名前の付け方は、韻を踏んでるのでしょうか?
1番上のバルト兄様が、我が男爵家を次ぐ予定です。
2番目のアリアンナ姉様は、伯爵家へ嫁がれました。
3番目のソルト兄様は、国の騎士になり、西騎士団に所属しております。
4番目のマリアンナ姉様は、子爵家へ嫁がれました。
5番目のケルト兄様も、国の騎士になり、東騎士団に所属しております。
6番目のユリアンナ姉様は、侯爵家へ嫁ぐ予定で、只今婚約中です。
兄様、姉様たちは、父様と母様の良いところを受け継ぎ、容姿端麗でとても優秀です。
家にも、国にも貢献していらっしゃっています。
貴族の義務とかもあるのですが、如何せんうちのウォルンタス男爵家は裕福ではないですし、4人目を嫁がせるためのお金もありません。
母様と姉様たちからの強い勧めもあって、社交ダンスとマナーに関してだけは習得いたしました。
これは、貴族では無くなっても必要となる時があるかもしれませんものね。
しかし、貴族の娘一人を嫁がせるために一体いくらかかるのでしょうね?
デビュタントのためのドレス、靴、装飾品、舞踏会毎のドレス、その仕立て代、その他諸々・・・・・お兄様たちの結婚の準備だってあるのです。まだ募集中ですけど。
少し考えただけで・・・・・・結婚ってお金がかかりますものね・・・・・ふう。
今までは、お姉さま方のお下がりのドレスを仕立て直したり、飾りを付け直したりしてなるべく節約して過ごしていましたが、社交界にデビューしてしまったらそうもいきません。
さすがにバレてしまいます、外聞も悪いです。
貴族にとって見栄って大切なのですわ、公けの場では特に。
なのでその前に、容姿端麗でもなく優秀でもない私は、成人する直前に貴族をやめて市井で暮らそうと思っています。
自分の容姿も才能に関しても把握していたので8歳の頃からずっと、16歳になったら自立して家に負担をかけないように暮らしていけるように努力して参りました。
そのための下準備も済んでいます。
すでに住居も決め、仕事もそれなりにあり、生活出来る基盤も作り、後はお家を出るだけです。
頑張りました!私。
だってその為に国立ロガリア学院で薬学を学び、修めたのですから。
ふふっ、多少の戦闘でしたらこなせましてよ?
父様と母様、兄様たちや姉様たちにも既にその旨を伝えておりますしね。
あとはご挨拶するだけなのです。
私がここまで計画的に行動してこれたのには理由があります。
私には色々な要因で、貴族的結婚は無理だと教えてくださった方がいるのです。
その方のお名前は、”シャーロック・サイ・ル・ファーガス”様。
このラフューリング王国の王族に連なるファーガス公爵家の三男、現在19歳。
ケルト兄様と同じく東騎士団に所属されてます。
ケルト兄様とは幼友達で、我がウォルンタス男爵家にも度々遊びにいらしてました。
ロガリア学院でも同じ騎士科、学院寮、そして同じ職場と順調に友情を育んでらっしゃるご様子です。
シャーロック様のご容姿は、サラサラの白に近い金の髪に、真っ青な青い瞳、スラリとして高身長、鼻筋がスッとしていて、怜悧な美貌と評判ですわ。
私が7歳になったくらいからでしょうか、シャーロック様は私を見掛ける度にこうおっしゃいました。
「お前は、他の兄弟姉妹に似ず持つ色合いも地味で、貴族令嬢としては不器量だな。社交界には出ない方がお前の為だぞ?」
そう、私の兄様姉様は父様と母様の美しい金髪と、父様の澄んだ青い瞳、母様の鮮やかな翠の瞳を受け継いで肌も白く、とても美しいのです。
私はその美しい兄弟姉妹の中にあって、一人だけ亜麻色の髪と水色の瞳。
色こそ、母方のおばあ様の色を受け継いでいますが、何せ顔の作りがこぢんまりしていて殊更地味な印象なのです。
大好きなおばあ様の持つ色合いを地味と称するなんてふざけた事ほざいて・・・・こほん。
それも全て、私の顔の作りのこぢんまりさのせいなのでしょうね。
決して自分の顔が嫌いな訳ではありません。
貴族としては、不器量な部類に入るとしても、市井の中であれば、そこそこらしいので充分です。
でも、貴族社会で不器量だと言われ、結婚に関して父母兄弟姉妹に迷惑をかけるのは不本意なので、市井で平民として暮らして行くことを選ぼうと思っているのです。
そんな私に使われるこの家のお金だって、領民の税金なのですから。
明らかに無駄だと思えることに血税を使うのも申し訳ないですもの。
これからは、税を使う側ではなく、納める側になりますわ、ふふっ。
予め、その準備をするための行動と時間が取れたのは、忠告してくださったシャーロック様のおかげだと感謝しております。
――――――――と理性面は申しておりますが。
感情面からしてみれば、はっきり言って心の底から余計なお世話だと思っております。
シャーロック様には迷惑をかけていないし、これからもかけるつもりは毛頭ありません。
7歳と幼いとはいえ、あのような事を言われれば傷つきますし、1,2度聞けば言いたいことも分かります。
ですからね?来る度に、言わなくてもいいと思うんですよ?
私を垣間見るのも嫌なくらい嫌いなのかとこちらが気を遣って、いらしてる時は部屋から出ないようにしたり、庭の片隅にいたり、おばあ様の家に行っていたりしましたのに、シャーロック様はわざわざ探して言いに来たりするのです。
あれかしら、明らかに容姿で劣っている私に言い含める事で、社交界の美の質を落とさない使命でも負ってるのかしら?
では、他の社交界の美の基準に達していない方にも同じ事をなさってる?・・・・・それそれで大変ですわね。ちょっと同情いたします。
それでも私はうんざりですわ。
もう分かりすぎるくらい分かっているのに。
ウザイし!しつこ・・・・ごほんごほん、失礼。
なので、ロガリア学院に入学した時は、休みの度にケルト兄様とシャーロック様がいらっしゃらないことを確認して帰郷したりしたものです。
それでも、どこから聞いてくるのか、騎士としてのお仕事はどうしたのか、2回に1回は会ってしまうのです。
来なきゃ良いのに!って・・・つい、本音が漏れてしまいました。
もうこれは、一度十二分に分かっている事をお伝えした方が良いかしら?
そうしたら、安心なさってうちには来ない?
でも、もう私も家を出るのですから、手紙でお伝えするくらいでも良いわよね?
貴族をやめて、市井で平民として暮らします。だから社交界へも出ません。ご安心くださいって。
嫌いな相手からの手紙も嫌でしょうが、お互い会うのも嫌なのだし、これが最初で最後ということで我慢していただきましょう。
では、シャーロック様宛てに手紙を書いて、父様と母様にご挨拶しましょう。