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幼なじみ公爵令息様の本気が、最近ちょっと怖いです  作者: ayami


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第15話 「専用席は私のもの」


 ――それから、三日。


 レオンは、私と距離を取るようになった。


 話しかけない。


 隣に来ない。


 視線も合わせない。


 ……まるで、最初に戻ったみたいに。


(……こんなに、苦しいなんて……)


 自業自得なのに。


 胸が、ずっと重かった。


 朝。


 私は教室に入って、すぐ気づいた。


(……あれ?)


 レオンの席。


 ……空いている。


「今日、遅刻かな……?」


 小さく呟きながら、自分の席に座る。


 隣は――


 もちろん、空席。


 前まで、当たり前のように座っていた人がいないだけで。


 こんなに、寂しいなんて。


(……馬鹿だな、私……)


「おはよう、リリアさん」


 隣から声。


 アルトだった。


「……おはようございます」


 彼は、私の様子をじっと見てから言った。


「……元気ないね」


「そんなこと……」


「あるよ」


 即答。


「レオンのことでしょ?」


 ……図星。


 私は、何も言えなくなった。


 そこへ。


「……どけ」


 低い声。


 振り向く。


 ――レオン。


 立っていた。


 いつも通り無表情。


 でも、どこか冷たい。


「え……?」


 アルトがきょとんとする。


「……ここ、俺の席」


「あ、そうか、ごめ――」


 その前に。


 レオンは、私の腕を掴んだ。


 ぐい。


「……えっ!?」


 私は、引き寄せられて。


 気づけば。


 レオンの席に、座らされていた。


 ……え?


「……は?」


 頭が追いつかない。


 レオンは、そのまま私の隣に座る。


 距離、ゼロ。


 前より近い。


 周囲、ざわっ。


「え!? なに!?」


「戻った!?」


「専用席復活!?」


(専用席!?)


 そんな扱いだったんですか私!?


 アルトは、目を丸くしていた。


「……え?」


「僕の席は?」


「知らない」


 即答。


 冷たい。


「……ここは」


 私を見る。


「俺の席」


「……で」


 ぐっと、距離を詰める。


「お前の席」


 ――心臓、爆発。


(な、ななな!?)


「ちょ、ちょっと……!」


 顔が熱い。


 レオンは、小さく呟く。


「……三日も我慢した」


「限界」


 ぼそ。


(我慢!?)


 授業中。


 私は、まったく集中できなかった。


 理由。


 レオンの腕が、当たっている。


 逃げられない。


 動けない。


(近い……近すぎます……!)


 しかも。


 時々、ちらっと私を見る。


 その目が――


 寂しそうで。


 苦しそうで。


 胸が、痛くなる。


 昼休み。


 私は、意を決して話しかけた。


「……レオン」


「何」


 そっけない。


「……怒ってますか」


「別に」


 絶対嘘。


「……私」


 ぎゅっと拳を握る。


「この前のこと……」


「傷つけたって、分かってます」


 レオンは、黙ったまま。


 私は、続けた。


「噂が怖くて……」


「逃げて……」


「でも……」


 顔を上げて、見る。


「一番怖かったのは」


「……レオンに嫌われることでした」


 静寂。


 周囲の音が、遠くなる。


「……馬鹿」


 ぽつり。


「なんで、今さら言うんだ」


 でも、声は震えていた。


「……俺は」


 視線を逸らす。


「お前が俺から離れるのが」


「一番、怖かった」


 ……胸が締めつけられる。


「……だから」


 私を見る。


 真剣な目。


「もう、譲らない」


「この席も」


「この距離も」


「お前も」


 ――完全独占宣言。


(……やっぱり重い……)


 でも。


 涙が出そうになるくらい。


 嬉しい。


「……専用席なんて」


 私は、小さく笑った。


「恥ずかしいです」


「嫌か?」


「……嫌じゃないです」


 正直。


 そう答えると。


 レオンは、少しだけ微笑んだ。


「……ならいい」


 そして、小さく付け足す。


「一生、ここだ」


(重い!!)


 でも。


 心は、温かかった。


 少し離れた席で。


 アルトは、その様子を見て、苦笑した。


「……完敗かな」


 でも。


 どこか、安心したような顔だった。


 ――こうして。


 “リリア専用席”は、正式に復活したのだった。


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