過去2
国が異世界から聖女を呼ぼうと力を入れ出したのは4年前からだった。そんなことできると思っていなかったしどこまで本気なのか分からなかった。しかし、国の魔術師達は2年前召喚を成功させた。
「成功したぞ!」
そう叫ぶ魔術師長やその周りで喜びの声を上げる重鎮や魔術師達。その中心には大きな魔法陣があり金色に光り輝いている。私とトーマスは離れた場所にいた。しばらくして光が収まり魔法陣の中心から人が現れた。私やトーマスと同い年くらいでこの世界では珍しい黒髪黒目だ。髪の毛は女性では珍しく肩にギリギリつかないくらい。来ているものも不思議でブラウスのようなものにとても短いスカートを履いている。その少女はへたり込んだままキョロキョロと王城を見回す。その姿は小動物のようだ。そこではっとした魔術師長が少女の前に立つ。
「あの、ここは?」
少女は案外冷静そうだ。
魔術師長はそれを気にせず話し出す。
「君はこの国の聖女に選ばれたんだ!この国はこれで安泰だよ。それで君は」
「君の名前は?」
トーマスが突然少女の前に立ち話を遮った。
少女はトーマスを見ると目を輝かせた。まあ、トーマスは顔はまあまあいいものね。
「ヒナと言います!」
「そうか、よろしくな。」
見たことのない私に向けることのないであろう笑顔。それを見たとき確信した。この人の隣に立つのはこの少女だと。
そこからはまるで分かりきった物語のようだった。トーマスはヒナに惹かれていき私は悪役令嬢かのように扱われる。市井では真実の愛なんてものが流行っているらしく私は邪魔者らしい。世間では私がヒナに嫌がらせをしている噂が流れていたが実際は逆だった。ヒナはちょくちょく私の元へやってきては嫌味を言ってくる。ヒナは見た目に反して性格が折れ曲がっていたのだ。ただ愚かなもの達はそれに気付かず籠絡されていった。トーマスも同様に。またヒナはこの国を守るために召喚されたので使っているところは見たことがないが膨大な聖力を持っているらしかった。そのため王太子の婚約者として申し分なかったというわけだ。
ここまで思い出して捨てられても今までの生活とあまり変わらないような気がしてきた。元々地獄のような生活だったし死んだ方がマシかもしれない。
そこで馬車が急に止まった。外は暗く森の中のようだ。勢いよく扉が開かれる。
「おい、さっさと出ろ!」
私は馬車から引きずられるような形で出される。
「ここの森は魔物が出るからすぐに喰い殺されるだろうな。」
そう言うと騎士はすぐに馬車を引く馬に乗り立ち去っていった。




