過去
母親は私を命懸けで産んで死んだ。父は心から母を愛していて、母が自分を犠牲にして産んだ私を愛さなかった。小さい頃から父が私に言うのは悪口ばかりだった。
「何故こんなことも出来ない!!お前でなくローゼが生きていた方が良かった。お前はローゼを殺したんだ!!」
実の父から存在を否定され愛など受け取れなかった。それでも少しでも父の役に立ちたくて知識を蓄え礼儀を覚えた。そうすれば父は少しだけ褒めてくれるからだ。
父が私に全く興味を示さなくなったのは5歳のときの魔力判定からだった。魔力判定は神殿で行い、置かれている特別な魔石に触れることでどのくらいの魔力を持っているのか分かるのだ。ほとんどの貴族は平民よりも大きな魔力を持っている。父もかなりの魔法の使い手だ。だから父は私が大きな魔力を持っていることを期待した。でも私には魔力があまりなかった。
「リーズレット様には平民ほどの魔力しかないかと、、、」
その気まずそうに言う神官の言葉を聞いた瞬間から父は私と顔を合わせなくなった。私は別邸で暮らした。使用人達も決して親切とは言えなかった。
「リーズレット様こんなことも出来ないのですか。さすが親に捨てられただけありますね。」
そう嘲笑って私の世話をせずに去っていく。だから私は自分のことは自分でできるようにした。食事を出してくれないこともあったから簡単な料理ならできるようになった。
そんな生活を続けて6年、12歳の時だった。
父が突然別邸に来た。父はニコニコしていてやっと私を受け入れてくれるのだと思った。でもそれは叶わなかった。
「喜べ、王太子殿下の婚約者に決まったぞ。これで我がフォンタナけも安泰だな。」
私はそのときに気づいた。父にとって私は娘でなく道具なのだと。そうして父からの愛を諦めた。
その翌日すぐに王宮からの使者が来た。何も言わずに私を着飾り王宮へ連れていく。そこで出会ったのは生意気そうなブラウンの髪の毛とグリーンの瞳を持つ少年だった。
「お前が俺の婚約者か。不気味な姿だな。」
相手は腕を組んでみるからに不満げだった。隣にいたメイドがおろおろと様子を窺っている。
「まあいい、俺の婚約者になれるんだ。喜べ。」
自分の婚約者になれることがさぞ世界で1番素晴らしいことのような口調で話す。この人と愛を交わすことはできそうも無いと思った。
そこからの生活も前と変わらず地獄のようだった。
「何故そのようなことも出来ないのですか!それでは殿下の隣に立てませんよ!」
そう王妃教育のときに言われ必死になって王妃となるための振る舞いを身につけた。殿下は勉強せず遊び呆けていたから殿下の分の勉強もした。愛はないけれどこのような形でやっていけたらいいだろうと思っていた。ヒナが現れる前までは。




