幕間 ~『娘を想う母 ★妲己視点』~
~『妲己視点』~
深紅の絹衣を纏った妲己は、椅子に腰掛けながら机に並べられた報告書の一つに手を伸ばしていた。
妲己の目が整然と並んだ文字を追う。その表情には柔らかさが浮かび、瞳も優しげである。
(雪華はうまくやっているようね……まぁ、当然よね、あの子には実力があるもの)
報告書にも雪華が描いた絵が高い評価を受けていると記されている。
(これなら私が変にサポートしなくても、いずれ国で一番の画師になれるわね)
妲己は小さく息を吐いて、椅子に深く寄りかかる。実際、行き過ぎた支援は危険性も孕んでいる。
雪華と妲己に血の繋がりがあると露呈すれば、権力争いに巻き込まれる可能性があるからだ。
支援するにしても、あくまでお気に入りの画師を助ける程度に留めておかなければならない。そう頭の中で念押ししながら、報告書を読み進めていくと、承徳という名前が目に留まる。
その瞬間、妲己の眉が微かに動いた。
(でも、まさか、あの女の息子と惹かれ合うなんてね……)
承徳の母親は現皇后である。
先代皇帝が生きていた頃は、唯一人、妲己に物怖じしなかった女性であり、心から気を許した友人でもあった。
だからこそ先代皇帝が命を落とした時、帝位を継ぐための男児がおらず、誰が後継者となるか議論が巻き起こった際、彼の配偶者を次代の皇帝に推薦したのだ。
(もし、あの二人が結ばれたら……)
権力争いに巻き込まれて欲しくはないが、その一方で雪華が承徳と愛し合っているなら応援するつもりだった。
報告書に目を通し終えると、そっと机の上に戻す。妲己の表情は娘の幸せを願い、愛情で溢れていたのだった。




