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幕間 ~『悪党同士の結託 ★趙炎視点』~



~『趙炎視点』~



 宿舎の薄暗い部屋の中、趙炎は寝台で横になっていた。


 天井からボロボロと漆喰が落ち、壁のひび割れが年季を感じさせる。埃の匂いが鼻を突き、窓から差し込む弱々しい光は薄汚れた窓に遮られて室内を灰色に染めていた。


 ここは誰もが嫌がる最底辺の宿舎であり、訳ありで後宮に入った者たちが暮らしている場所だ。


「クソッ、金さえあれば、こんなところ……」


 懐から革袋を取り出すと、そこに入っているのは銅貨がわずか数枚。質素な生活をしているにも関わらず、これが今月の給与の残りだった。


「足りるわけないだろうが……」


 そう呟きながら、趙炎は手に取った銅貨を握りしめる。銅の冷たさがやけに重く感じられるのは、僅かな賃金とはいえ彼にとって命綱だからだ。


「当分の間は粥中心の生活か……」


 肉や魚を食べたいと願うが、贅沢など夢のまた夢。さらに去勢された影響で、あれほど好きだった異性にも興味を持てなくなった。


「こんな生活が……俺の人生なのか」


 呟きは誰に聞かせるでもなく、ただ湿った壁に吸い込まれていく。その後、薄汚れた枕に顔を埋めると、後悔を吐き出す。


「どうして……どうして俺は……あんな愚かなことを……」


 もし雪華(せっか)を裏切っていなければ、今頃、趙炎は領主として順風満帆な生活を過ごせていただろう。


 欲に駆られ、最低なことをしたと自覚していた。だが一方で、もし雪華(せっか)を始末できていれば、こうはなっていなかったという思いもある。


 広い屋敷に、美しい衣服、そして周囲からの尊敬。すべてを手に入れていたはずなのだ。


「もし俺が領主なら、あいつらに馬鹿にされることもなかった」


 目を閉じると同僚たちの嘲笑が耳の奥に蘇る。その声は頭を鈍く打ち続け、彼の心を容赦なく追い詰めていく。


「俺は……耐えるしかないのか……」


 膝の上で拳を震わせながら、奥歯を噛みしめる。軋む音が響き、じわりとした痛みが口の中に広がるが、苛立ちを抑え込むには足りなかった。


 そんな時だ。突然、部屋の静寂を打ち破るように、扉が軽く叩かれる。その音は控えめだが、強い意思が含まれているように感じられた。


 趙炎は立ち上がると、汗ばんだ手の平を拭う。今まで部屋を訪れた者は一人もいない。不吉な予感を覚えながら扉を開けると、そこには一人の女性が立っていた。


「どうして、邪蓮(じゃれん)がここに……」


 訪問者は占い師として有名な邪蓮(じゃれん)だ。黒曜石のような髪と瞳は、まるで闇を形にしたかのような印象を与えている。


 邪蓮(じゃれん)と趙炎が出会ったのは仕事からの帰宅途中、占っていかないかと誘われたことがキッカケだった。


 最初は興味本位で応じた趙炎だったが、その占いの結果は的中。彼女の占う未来は、趙炎にとって心の支えになっていた。


「実は協力してもらいたいことがあるの」

「協力?」

「とある人を破滅させたいの。あなたなら協力してくれるわよね?」


 その言葉には抗えない魔力があった。趙炎はゴクリと息をのむと、まっすぐに邪蓮(じゃれん)の顔を見据える。


「それは俺のためでもあるのか?」

「当然、上手く行けば、あなたは幸せになれるわ」


 このまま何もしなければ趙炎の人生はどん底だ。それならばと、彼は大きく頷く。二人の悪党は手を組んで、目的のために動き出したのだった。


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