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第三話

「で、この仮面の男は誰でござるか?」




 そう上司に尋ねる、熊のような形相の熊耳男。




「ワシが新たに迎えた客分、ドンカ・ダオだ。遠い親戚だな」


「で、ござるか」




 頭に大きい髷を結った狼耳の男の返答に、熊男はあっさり納得した。おいそれで良いのか寝取り男。




 という事で、スティーリー・スノウ改めドンカ・ダオです。


 仮面と黒髪カツラで変装して、結局このオワリノ公国に残ることになりました。




 それくらい、イヌカが長い病から開放された事は兄として一大事であったのと、外れだと思われていた僕のスキルが実は使い道のあることが発覚した時点で、正体を隠して国に残ることを魔狼王から打診された。


 まあ記憶喪失から暫くお世話になり、愛着も湧いていた国だ。


 記憶が戻るまでもうしばらく、この場所に留まるのもアリだと思った。


 ちなみに記憶に関してはイヌカの鑑定能力で僕の過去が探れたら良かったんだけど、本人が覚えてない素性は鑑定結果としても表示されないらしい。残念。






 さてそんな事を考えてるうちに廊下ですれ違う、一人の女性。元婚約者のイチカだ。


 彼女は色素欠乏(アルビノ)で生まれ、輪郭こそ魔狼王の兄や妹イヌカに似るが色合いの異なる白い髪と赤い瞳を持つのが特徴だ。


 そんな彼女のスキルは「読心」であり、僕の仮面とカツラの変装は当然意味がない。




 気づいて声をかけようとする彼女に、僕は唇に指を置いて「黙ってて」とジェスチャーする。


 どこで熊男の関係者に聞かれて話が伝わるかわからないのだ、今後話をする事があるとしても場所は選びたい。




 彼女は「わかった」という表情を浮かべた後に、「でも、こっちも色々考える」と小さくつぶやいてその場は通り過ぎた。




 いや姉妹して怖っ。何を色々考えるんですかねえ。


 頼むから熊男の暗殺とかはやめてくれよ?


 粗暴で筋肉ダルマのあいつとは正直相性が悪いが、このオワリノ公国にとっては大事な戦の要なんだし。






「はじめましてだな、チロキー・タノシキだ」




 そして王の指示で出向いた先で、僕は自己紹介を受ける。


 チロキーはダオ家臣では熊男イツカヱに並ぶ重臣だが新参者であり、魔狼王ナブノガに仕えたのもまだ1年経たないかぐらいと聞いている。


 しかし、その強力なスキルと知略で成り上がった知将で周囲から一目置かれている。




 そしてチロキーも獣耳族だが猿由来のため耳は頭の上でなく、僕のような異邦人同様に顔の横にある。


 他の特徴としては、髪の毛の色は獣耳民特有の黒髪ではなくやや赤みがかっていて、髪を後ろで束ねて三つ編みオサゲにしている。


 瞳の色も種族特有の黒よりやや灰色に近い。


 そしてここまで言及しなかったが、《《彼女》》はイチカとさほど年が変わらない小柄の少女だ。


 能力が有れば誰でも重臣に取り立てる魔狼王らしい采配であるが、当然のように熊男とは犬猿、いや熊猿の険悪な仲だ。




「ボクのスキルについては殿から聞いてるね?」




 ボクっ娘猿のチロキーが顔を近づけて、そう尋ねてくる。


 あっあの距離が、距離がっ。




「へー、鈍感男って聞いてたけどボクみたいなのを女性扱いしてくれるんだ。


 ちょっと嬉しいかも」




 誰から何を聞いたって?


 あっいや情報の出どころは分かったので言わなくていいです。




「で話を戻すけど、ボクのスキルがまた、極端(ピーキー)な能力でねえ」




 うむ。何となくピン、ときたぞ。


 おそらくは、情報漏洩(おしゃべり)鑑定娘(イヌカ)と似たような感じなのだろう。

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