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【書籍化】エアボーンウイッチ~異世界帰りの魔導師は、空を飛びたいから第一空挺団に所属しました~  作者: 呑兵衛和尚
Seventh Mission~最終決戦、そして地球の命運は

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And The Beat Goes On(そしてウサギは、静かに目を閉じる)

――ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォッ

 炎の巨人が全力で蹴り飛ばした不死の軍勢は、瞬く間に全身を灼熱の炎に焼かれ燃え上がっている。

 だが、痛みを知る事のない不死の軍勢はそれでも尚、立ち上がり武器を構えてスマングル目掛けて攻撃を続けようとするが。


――バンバンバババンバンッッッッ

 装着していた銃機が、弾薬が、そして手榴弾が一斉に爆発を開始。

 瞬く間に燃え上がった肉片や千切れた四肢が彼方此方あちこちに飛散、ヘンリー少佐であった(・・・・)死霊鎧は、まるで一時的にでも意識が戻ったかのように思わず目を背けてしまう。

 

「あ、あの兵士達の中には、我が祖国の戦死者達もいた筈……それをこうも、いとも簡単に爆破するなど正気の沙汰じゃない」

『ふん。まだ残留思念は残っていたか……よく聞き給え、人間など死んでしまえばそれはただの肉塊に過ぎない。そこに仮初めの肉体を与え、今一度戦場へと送り出してやったのだ。感謝こそされど恨まれる筋合いなどない。所詮は死者だ、空になった魂の器だ……何をセンチメンタルに浸っているのかね? さあ、とっとと自身の責務を果たしたまえ……』


 手にした杖をスマングルに向け、ヤンは死霊鎧に向かって吐き捨てるように呟くと静かに詠唱を始める。だが、その傍らで膝から崩れ落ちていく死霊鎧は、横で高笑いしつつ死者の軍勢を操るヤンを睨みつけた。


「貴様にはわかるまい……全ては祖国のため、栄光あるイギリスの繁栄の為に手を貸したのに……」

『ああ、だから感謝したまえ。私が手を貸したおかげで、イギリスの魔導科学は30年は進んだ筈だ。あの空帝ハニーの住む日本という国よりも遥かに高い魔導科学を手にしたのだよ? いいかね、より高度に知識を得る為には代価が必要だ。君達は、それを魂という軽いチップで手に入れられたのだよ。まあ、ゴーヴァン少尉については、ちょっと調整が甘かったようだが、それも些末な事だ。地球人に適した調整方法を、これから調べていけばいいだけだからね』


 見下すように死霊鎧に告げると、ヤンは更に杖に魔力を注ぐ。

 すると、不死の軍勢の全身に纏わりついていた炎が一斉に沈下し、更にスマングルへと向かう歩みを加速させた。

 それと同時に、死霊鎧も再び立ち上がり武器を構える。

 だが、そこでヘンリー少佐の残留思念が再び死霊鎧の支配権を奪い取り、ガクガクと震えつつも動きを止めたのである。


『チッ……使えない死霊鎧が、そこで黙って朽ち果ててしまえばいい……』


 そう忌々しそうにつぶやき、倒れてしまった死霊鎧に向かって唾を吐きかけると、ヤンはスマングルに向けて杖を構えなおした。


「……ヤン、貴様はどれだけの魂に無礼を働いてきたのだ。アルフヘイムだけでなく、この世界の命を冒涜する事は許さない」

『ふん。命など、偉大なる錬金術の前には一つのエネルギー媒体に過ぎない。いいかね、魂というのは【いかなる物質にも変換できる万能元素】の一つなのだ。それを倫理だの摂理だのという屁理屈をこねて使おうとしないからこそ、この世界の魔導科学は遅れているのだ。そもそも、この星にも存在するのであろう? 人々の魂が集まり循環する霊脈(レイライン)が』

「……やはり、貴様とは分かり合えない。聖楯よ、我に加護を与えたまえ。精霊よわが体内に宿り、力を示したまえ……精霊変化(エレメ・マテリア)発動」


――シュンシュンシュンシュン

 洞窟内に漂う精霊達が、スマングルの持つ聖楯のもとに集い、そして同化していく。

 更に聖楯の加護により全身が青く染まり始めると、体躯がゆっくりと膨れ上がっていった。

 そして一分程で、身長3メートル程の精霊騎士(エレメンツ)に姿を変えると、左右の腕に装着された聖楯を構えてヤンに向かって走り込んで行く。


「ここまでだな」

『そうは問屋が卸さない……っていうんだよな、こういう時は』


――ビシィッ

 突如、ヤンの前方の岩がムクムクと隆起を始めると、やがてそれは人型に変化を始める。

 そしてあっというまに全高4メートルほどの『ロックゴーレム』の姿に変化すると、ヤンの両腕の楯をガシッと掴んで突進を停止させた。


「……まだだ」


 スマングルはさらに力を籠めると、ロックゴーレムに掴まれている聖楯を力任せに振り回し、腕を引きちぎった!!


――バッギィィィィィッ

『うわぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』


 ロックゴーレムの腕が破壊されるや否や、その体表面に無数の子供の顔が浮かび上がる。

 下はそれこそ生まれたばかりの赤子から始まる、18歳程度の女性の顔までびっしりと全身を覆っていった。しかも引きちぎった腕にも顔が浮かび、無理やり千切られた影響なのか痛みに絶叫し、涙さえ浮かべている。


『ははははっ、そのゴーレムには、この大地に眠る彷徨える魂が封じ込められている。しかもだ、ロックゴーレムの体と魂はリンクしているので、ゴーレムが傷つくと魂も傷つくのだ。さあ、勇者ともあろうものが、彷徨える罪なき魂を傷付けるというの……』


――バギッ、ドガッ、ドゴォッ

 勝ち誇ったかのように高らかに叫ぶヤン。

 以前も、イギリスのバッキンガム宮殿外で、同じように勇者スティーブを苦しめた事がある。

 勇者たちの最大の弱点、それは慈悲深いという事。

 特にヨハンナとスティーブの二人は、たとえ敵に捕らわれ操られている魂であろうと傷つけるような事はない。

 だが、目の前のスマングルは手にした聖楯を全力で振るい、ロックゴーレムにひたすら打撃を叩き込んでいく。その一撃一撃を受けて、ロックゴーレムは体表面が砕け、ボロボロと崩れ始めて行く。


『な、何故ですか、ロックゴーレムを傷つけると魂も傷つくのですよ、勇者ともあろう者が、そのような事をしていいと思っているのですか』

「ふん。聖楯の一撃は癒しの波動を放っている。それに触れた罪なき魂の護符(ソウルプレート)は、瞬時に天に召されていく……聖女ヨハンナにより、創造神ゲネシスの加護が授けられた聖楯だ。囚われた魂全てを祝福している……以上だ」


――ドゴッガゴッヘボギッ

 スマングルの一撃を受けた場所、そこに浮かび上がっている顔は痛みではなく安らぎの笑みを浮かべて消えていく。そして魂が消えた後、その部位はスマングルの全力によって修復不可能なまでに破壊されていった。


『そ、そんな馬鹿な……こんな事があるだなんて、私は聞いていませんよ』

「誰に聞いたか知らないが、錬金術師ヤン、貴様は終わり……以上だ」


――ドッゴォォォォォォォォッ

 スマングルの両足裏から爆発音が響く。

 その瞬間、一瞬にしてスマングルはヤンの目前まで辿り着くと、聖楯の裏にあるレバーを力一杯引いた。


――ガゴン

 その瞬間、聖楯の内部に仕込まれていた銀製の杭が姿を現すと、その先端をヤンに向けて構える。


「アルムフレイアの神代迷宮の一つ。煉獄迷宮最下層に広がる『ファティマの聖湖』により清められし、精霊銀だ。これを受けて、天に召されろ……」

『そんなものを食らうかぁぁぁぁぁぁ』


 眼前に迫る杭を避けるべく、ヤンは手元の魔導書を構えてページをめくる。

 そして『支配の楯』の術式を唱えようとした時。


――ドッゴォォォォォッ

 ヤンの手が吹き飛び、魔導書が弾き飛ばされた。

 それは刹那のタイミング。

 先程まで項垂れ地面に崩れ落ちていた死霊鎧が、手にした銃をヤンに向かって構え引き金を引いたのである。 

 そして打ち出された弾丸は一直線にヤンに向かって飛んでいくと、彼の右手首を破壊。

 そのまま魔導書を吹き飛ばしたのである。


『この、死にぞこないがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

「……まったくその通りで……ですが、これで貴様の負けは確定ですよ……」


 残った左手を、死霊鎧からむき出しになったヘンリーに向けて伸ばし、指をパチンとはじく。

 それは破壊のキーワード、その瞬間にヘンリー少佐だったもの体内の魔導器官が暴走し、死霊鎧全体に浸食を開始。

 だがその直後、ヤンの頭部に聖楯に装着された銀の杭が突き立てられると。


――ドゴシュッ

 一瞬で銀の杭が射出され、ヤンの頭部が吹き飛ばされた。

 

「……うむ。これはやはり本体ではない。が、精霊の一撃(エレメンツバースト)は貴様の魔力をたどり、確実に貴様に致命的一撃を与える。以上だ」


 そう告げてから、スマングルはもう一枚の聖楯の銀杭を構えると、その場で異形の姿へと変貌し始めたヘンリーの頭部に向かって構える。


「……魔導器官の暴走による変異。聖女ヨハンナでも、それを救う事は出来ない。せめて、神の御許へと……」


――ドゴシュッ

 悲痛な顔のまま、スマングルはヘンリーの頭部を破壊。

 そのままヘンリー少佐の魂が天へと昇っていくのを見届けると、司令塔を失ってフラフラしている不死の軍団へと攻撃を再開する。

 今は急ぎ、この場を正常化しマナラインのコントロールに戻らなくてはならないから。

  

………

……


――メソポタミア・位相空間内パンデモニウム

 魔王アンドレスの居城、その一角では『遠見の水晶球』に手を添えてホムンクルスの遠隔操作をしているヤンの姿があった。

 いくつものホムンクルスを行使しで戦闘地域へと赴かせ、自身はこの安全な場所で高みの見物を決め込んでいた。


『ふん。どれだけホムンクルスが倒されようと、まだまだ予備はいくらでもある。この錬金術師である吾輩に掛かれば、勇者達の戦いなど児戯にも等しいわ。さて、次はどの区画から攻めるとしよ……』


――ドシュッ

 水晶球をにらみつけ、ナイジェリア洞窟の内部を眺めているヤンだが。

 突然、水晶球の一部に白い点が浮かび上がったと思ったら、そこから放たれた『精霊銀の波動杭』により頭部を貫かれる。

 そのまま勢いよく壁まで叩き込まれると、頭部が串刺しになった状態でヤンは絶命した。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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