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【書籍化】エアボーンウイッチ~異世界帰りの魔導師は、空を飛びたいから第一空挺団に所属しました~  作者: 呑兵衛和尚
Inter Mission~迷宮騒動、大騒動!

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I Will Survive(鳴沢氷穴の後始末はいいのですが……色々と活性化していますね)

 氷竜に飲み込まれた二人を無事に救出、そしてダンジョンコアの破壊も完了。


 後はこの鳴沢氷穴の迷宮構造が自然洞へと戻る前に、地獄穴から戻って外に出るだけ。

 幸いなことに、地獄穴から鳴沢氷穴に戻った時、既にその付近で待機していた五ノ井議員達も撤退したようで。

 順路通りに進んで外に出た時、既に五ノ井議員を始めとした迷宮管理特別委員会の人達と有志の調査班らしい人達が腰を下ろして待機しています。

 という事で彼らは無視して、私は駐車場にある東部方面隊特科連隊ベースキャンプへと移動。

 そこで待機している医療班に、救助した二人を預ける事にしましたよ、ええ、これは当然の行動ですから。


「報告します、要救助者二名を確保し移送してきました。ここからはよろしくお願いします。なお、トリアージ赤状態でしたので、魔法薬による一時的治療は完了しています。外傷は塞ぎましたが内部疾患が残っている可能性はありますので、検査をお願いします」

「了解です。では、二人をただちに救急搬送します!!」

「お、おい、ちょっと待ってくれ、もう怪我は癒えているんじゃないのか」

「そうだ、俺たちは五ノ井議員の元に戻って報告しなくては」

「駄目です、それは医療担当として認められません。では、こっちへ……ふっふっふ。また外人部隊の医療班の実力、思い知るが良い」


 ああっ、救急医療班の責任者さんがすっごい悪い顔をしています。あの医師にだけはかかりたくはないですねぇ。

 名前だけでも憶えておきますか……加藤3佐ですね、よし、記憶しましたよ。傭兵経験のある医者ですか、怖!

 という事で救出した二人は、待機していたアンビ(1トン半救急車)に詰め込まれてドナドナされました。よし、私、いい事をしました。

 変にここで五ノ井議員と合流されて、口裏を合わされでもしたら大変ですからね。

 さて、周辺で熊型魔獣の討伐に向かった逸見1尉達は、どうなっているのでしょうか。

 

「ちなみにですが、逸見1尉達の方は、現在どのような状況ですか?」

「15分前の定時報告では、熊型魔獣2頭、狼型魔獣1頭の射殺を確認、現在は周辺調査を引き続き続行しているそうです。それと熊型魔獣の死体については、現在別の部隊が回収に向かいました」

「了解です。では、私はベースキャンプで待機行動にうつります」

「よろしくお願いします」


 はい、これで確認は完了。

 報告連絡相談、報連相は大切ですからね。

 

「如月3曹、うちの調査班を救出してくれて助かった」

「いえ、自衛官として当然の事をしたまでです」


 五ノ井議員が頭を下げてそう告げますので。

 こちらとしても、当たり前のことをしただけですので、気にしなくていいと思いますが。


──スッ

 そして私に向かって手を差し出してくるので、思わず握手してあげましたよ。


「違うわ!」

「おっと」


 いきなり鋭い剣幕になって怒鳴られましたけれど、何かあったのでしょうか。

 まあ、何を言いたいかぐらいは理解していますけれどね。


「ダンジョンコアだよ、とっとと寄越したまえ」

「はぁ? 何故、貴方にダンジョンコアを渡す必要があるのですか? そもそも迷宮管理特別委員会は、ダンジョンコアを自由にしていいという権限は持っていませんよね? まだ審議中であって、強制力はありませんよね?」

「その通りだな。だが、ダンジョンコアは拾得物ではないのか? それなら速やかに警察に届ける義務があるのではないかね?」


 ははぁ、私が届けた後、なんだかんだと警察に圧力を掛けて正式に所有者として回収するつもりですか。もしくは、私の代わりに届けるとかいってポケットにでも納めるとか。

 まあ、色々と考えられますけれど、速やかに手渡す事は無理ですね。

 だって、まだこのダンジョンコア、活性している状態ですから。このまま放置すると、周囲の魔力を吸収してダンジョンを構築しますよ、きっと。


「では、こちらがダンジョンコアです。今、活性状態ですので不活性状態にしないと渡せません。その後、私が責任を持って警察に届けますけれど、それでかまいませんね?」

「ま、待て、なんだその活性とか不活性とかは」

「はい、ダンジョンコアは回収直後は活性状態でして、そのまま放置すると周囲の魔力を吸収して再びダンジョンを構築する可能性があります。ですから一旦、不活性状態にして勝手にダンジョンを構築しないようにしなくてはなりません。それを怠りますと、警察の保管室でダンジョンが発生しますよ?」


 淡々と説明しますと、五ノ井議員が必死に何かを思い出そうとしています。

 多分ですが、私やスティーブ達が作ったダンジョンに関するレポートの内容を必死に確認しているのでしょう。


「ちなみにだが、不活性化したダンジョンコアでは、資源を自由に造りだすことは出来ないのか?」

「そんなの無理に決まっているじゃないですか。部屋に飾る程度の価値しかありませんよ……と、地球ではどうでしょうね、削って検査にでも出してみれば、何か見つかるかもしれませんが」

「そ、それでは困る。自由に迷宮を作れる状態でなくてはならんのだよ」

「でも、ダンジョンコアの落とし主なんて存在しませんので。これは回収した私に権利が発生するのですから、別に構わないのでは? ということで七織の魔導師が誓願します。この手の中に存在するダンジョンコアの活性を停止し、速やかな眠りへと誘い給え。我が主人、我が命に従い、ひと時の眠りへとつくように……不活性化イナクティベーションっ」


──プシュウウウ

 はい、ダンジョンコアが不活性状態になりました。

 いつもなら回収する時点で、トラペスティの耳飾りを用いて一括処理するのですけれど、ちょっとここのダンジョンコアについては気になっているもので。


「後……そうですね、このダンジョンコアについては、陸上自衛隊第1空挺団魔導編隊が、調査目的で回収します。よって、警察にも届け出ません。これは私たちに与えられている正式な権利ですので」

「な、な、なんだってぇ、ふざけるんじゃない、そんなことが許されるとでも思っているのか?」

「え、特に問題はないのでは? 検査が完了し、問題がないと確認した時点で警察に正式に届けますし。そもそも迷宮の所有者って、誰でもありませんから」

「だが、迷宮が発生した場所はここ、鳴沢氷穴なのだぞ、それも天然記念物の奥の」

「地獄穴の奥は関係ありませんよね? そもそも内部構造が迷宮化している時点でダメです、位相空間ですので場所による所有権は発生しません。これも以前提出したレポートに記されていますけれど……まさか、迷宮管理特別委員会の委員長ともあろう方が、それを確認していないなんて言う事はありませんよね?」


 あ、今、小声でグヌヌって言いました。

 そもそも民間で扱っていいものではないのですから、いい加減に諦めてくださいよ。


「では、これで失礼します」

「後日、防衛省に正式に苦情を入れさせてもらう。それと、今回の如月3曹の独断専行の件についても証人喚問に立ってもらう、いいな」

「はぁ。それならそれで、五ノ井議員の行動により二人の命が失われることになった事についての責任を追及しますが、それでいいのですね?」

「出来るものならやって見ろ!!」

「……如月3曹、そろそろいいかな?」


 顔を真っ赤にした五ノ井議員の後ろから、血まみれの迷彩服を身に纏った逸見1尉が話しかけてきました。ええ、どうやら調査は終わったようです。


「はい、話は終わったところですので。一時的にですが、熊型魔獣は私のアイテムボックスに収納し、基地に戻ってから解体作業を行った方がいいと進言します。鮮度も保てますし、魔石の回収も安全に行えますので」

「何、こいつから魔石が回収できるのか……」

「五ノ井議員、迷宮外での我々の任務については口出し無用です。当然、回収した魔石についても、こちらで調査し、円滑運用させていただきますので」


 ニコニコと説明する逸見1尉に、五ノ井議員も何も言い返すことが出来ずに立ち去っていきます。

 ま、今日の所はこんなものでしょう。

 もしも私が無責任で、他人の事などどうでもいいと思っていましたら、回収した活性ダンジョンコアを渡せと言われた時点で引き渡し証明書を作成。速やかに渡していましたよ。

 その後の事なんて知りません、回収したダンジョンコアが完全活性して迷宮を構築し、そこから魔物が発生しようが知った事ではありません。

 全て、迷宮管理特別委員会の責任ですから。


「……とは、いかないのがなんとももどかしいことで」

「ん、如月3曹、何かあったのかな?」

「独り言です。では、一旦撤収して、熊型魔獣の引き渡しを行います」

「了解。では、第一班は撤去準備に移行、二班と三班は引き続き、周辺警戒を行うよう」


 まだ、魔獣が発生する可能性がある事を考慮して、周辺調査は続行するようで。

 では、私たちは撤収する事にしましょう。


 〇 〇 〇 〇 〇


──富士演習迷宮横・富士迷宮駐屯地

 はい、ようやく施設などの9割が完成し、正式に『富士迷宮駐屯地』として機能し始めました。

 数日前に発生した鳴沢氷穴迷宮についての一連の報告も完了、ダンジョンコアについては私が責任を持って管理するという事で、今はアイテムボックスの中です。

 ちなみにあの後の顛末についてですが、五ノ井議員を始めとした迷宮管理特別委員会からの苦情が届き、後日改めて報告を行うようにという話が届いたのですが、その直後、『鳴沢氷穴迷宮事故調査委員会』が発足し、迷宮管理特別委員会の今回の独断行動についての調査が始まりました。

 この結果次第では、五ノ井議員らに重い懲罰が課されるのはほぼ確定であり、同時に山梨県知事の責任についても言及されるとか。


「……と、一連の事件については解決しているのに、どうして如月3曹は不満そうな顔をしているのかしら?」

「いえ、これは不満そうな顔ではなく、今後の対策について考えているところなんですよ。この二日間で、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなどで次々と迷宮らしきものが発見されたという報告書が届きまして。詳しい調査に行きたい所なのですけれど、どうにも私が海外へ向かう事は出来なくてですね」


 ええ、実は一昨日から、あちこちで迷宮が活性化を始めたのです。

 これはスマングルからの念話によるもので、この連絡を受けてからヨハンナとスティーブも独自調査を開始。結果として北アメリカに5か所、南アメリカに2か所、ヨーロッパ圏で6か所、アフリカにも4か所、迷宮らしい洞窟が出現しました。

 まだ完全活性はしていませんので、どうにでも対処可能なのですが。

 迷宮が出現した各国では、調査隊や軍隊を独自に派遣するという報告が国際異邦人機関に届けられたそうです。

 ええ、また資源とか迷宮利権について、勝手な事をし始めているようですよ。

 

「まあ、如月3曹は日本国所属の自衛官ですから。独断で活動することは出来ませんよ?」

「はい。それは重々承知の上です。でも、スマングルから報告を受けた『迷宮活性化ポイント』の内、中国の3か所と韓国の2か所、香港と台湾の1か所については、こちらから問い合わせても黙秘されているんですよ? 特に中国と韓国……後ロシアについてもある筈なんですけれど」

「今や、迷宮というのは『金の生る木』という認識ですからねぇ」


 まったくですよ、その結果としてダンジョンスタンビートが発生したら、何処の誰が責任を取るっていうのですか。私は嫌ですよ、それこそ自国でどうにかしてくださいっていう所です。


「それで……国内では、どれだけの報告があるのかしら?」

「東京1、高知1、長野1、広島1、青森1、北海道4ってところですね。ただ、これはスマングルがマナラインから測定した『活性化したと思われるダンジョン』の位置でして、まだ正確な位置は掴めていません。現在はそれぞれの方面隊に報告はしてありますので、統合幕僚監部の指示で調査が行われています」

「あら……そんなにあるの?」

「ええ、これについては……私のせいでもあるんですけれどね」


 日本には高魔力体の塊でもある私がいるのですから、そりゃあマナラインも活性化しているでしょう。

 そこからマナラインを通じて活性化しているのですよねぇ。

 はぁ。とっとと単騎突入して、ダンジョンコアを破壊したいものですよ。


──プルルルルッ

 そんなため息の中、内線が来ました。


「はい、第一空挺団魔導編隊詰所です……はい、緊急事態要請の準備を開始します」


 届いた連絡は、総監部から。

 

「如月3曹、連絡内容は?」


 その小笠原1尉の質問に、私は端的に説明します。


「国内すべてのダンジョンで、スタンピードが発生しました」


 最悪のケースが、始まったようです。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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支那は、召喚されて魔王の配下になったやつがいるところだから、教えるはずないものね。
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