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【書籍化】エアボーンウイッチ~異世界帰りの魔導師は、空を飛びたいから第一空挺団に所属しました~  作者: 呑兵衛和尚
Inter Mission~迷宮騒動、大騒動!

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I'm In the Mood for Dancing(迷宮の可能性……え、そんなの100%ですよ)

 現在。


 私は山梨県・鳴沢氷穴駐車場に停車している96式双輪装甲車の横に仮設テントを設置している真っ最中です。

 というのも、此処をベースキャンプとして鳴沢氷穴周辺にて確認されている謎の生命体の調査を行わなくてはなりません。

 既に東部方面隊特科連隊と協力し、彼らのテントの設営は完了。

 部隊長である逸見1尉の指示により、周辺の森の調査は始まっています。

 そして私はテントの中に通信機などを設置した後、現在の状況を習志野駐屯地に連絡している真っ最中。


『……この非常時に、奴らは一体何を考えているのだ。もしも鳴沢氷穴が迷宮化していたら、中に侵入した者達の命が危険に晒されるという事を理解していないのか?』

「おそらくですが、自称・専門家たちも氷穴横の売店事務室に待機しているかと思います。ちなみにですが、現在もトラックを横付けして大きな荷物を下ろしている真っ最中です。後、調査隊と思わしき人々の姿も見えています」


 はい、テントの入り口から外は丸見え状態ですので、外の動向がはっきりと分かります。

 あと、ちょうど96式双輪装甲車の横に73式大型トラック(通称・3t半)が停車し、自衛隊員が降りて来るのも確認出来ました。

 そちらは逸見1尉の指示で送られて来た増員のようで、手を振って見送る事にします。


『山梨県知事には、防衛省を通じて抗議するように進言しておく。迷宮管理特別委員会についても同じだ。自分達の利権を守りたいがために、人の命を駒のように扱う議員の集団などなくなってしまえばいい……如月3曹』

「はい。私は自衛隊員です。国民の命の危険があった場合、それがとぉぉぉぉぉぉぉぉぉっても嫌な議員であったとしても、命を賭けて守るのが使命です。もっとも、今回は山梨県知事の正式要請に基づいて彼らは活動しているため、私としても要請がない限り自衛隊員としては動く事が出来ません」

『だが、国際異邦人機関の『生命救護活動に関する条例』を行使するのなら、国連機関としての活動ゆえ、私達はそれを止める事は出来ない……だったな』


 さすがです、近藤陸将補。

 どんな時も逃げ道……もとい裏技を使う準備はしています。

 まあ、今回は迷宮管理特別委員会に騙された人たちを救出するのが任務となるでしょう。

 ええ、ほんっっっっっっっっっっとうに面倒くさくて、やりたくない仕事ですけれど、国際異邦人機関から受け取っている年間予算分は働かせてもらいますよ。

 異世界アルムフレイアでもありましたから。

 私たち勇者の行動が気に入らず、常に邪魔をしてきた侯爵家一派の領都が魔族に襲撃された時。

 私達は丁度、その街で休暇を楽しんでいた真っ最中でしたから。

 もうね、人の話をちゃんと聞け老害って叫ぶレベルでしたから、あの時の事に比べればこの程度はお茶の子さいさいですよ。


「はいっ、それでは如月3曹、任務を開始します」

『後方支援は任せたまえ。異邦人特措法第24条および自衛隊法第87条(武器の保有)、第88条3(防衛出動時の魔術行使)に基づき、すべての魔術行使を許可する』

「はっ!!」


 さて、お墨付きをもらったので、これで堂々と魔術を使用できますね。

 そして私の事をずっと監視している人達の事は無視して、任務を開始しますか。


「それでは、いきます……七織の魔導師が誓願します。我が手の前に七織の神殿を遣わせたまえ……我はその代償に、魔力25000を献上します。戦闘聖域(サンクチュアリィ)、展開っ」


 お久しぶりの戦闘聖域を展開。

 更に連続でマジックアイも発動。


「我が右目に仮初めの身体を与え給え……我はその代償に、魔力3600を献上します。マジック・アイ発動っ」


――シュシュシュシュシユンッ

 ちっと魔力を多めに注ぎ込み、合計10個のマジックアイを発動します。

 それを全て戦闘聖域とリンクさせた後、一斉に移動を開始。

 6つは周辺の森へ飛ばし、適当な自衛隊員の頭の横に固定して監視を開始。

 残り4つのうち3つは鳴沢氷穴の中へと飛ばしました、ええ、姿を消しておきますので見られることはありませんよね。

 最後の一つは、迷宮管理特別委員会の待機場所、売店の入っている建物の中にある事務室へと移動し、そこの様子を確認します。

 ちなみに全てを並列思考で監視し続けることなどできませんので、事務室の一つと氷穴内部に送り出した3つのうち2つ、そして戦闘聖域に写し出されている自衛隊員たちの様子を監視するために並列思考を割くことにします。

 外の様子なんて異変を感じたらすぐに意識を切り替えればいい、同じように事務室もそんなになにか起こるとも思えません。

 という事で主な意識は迷宮に飛びこませたマジックアイに集中します。


「……それにしても、観光で入る事が許されているだけあって手すりとかしっかりしていますよね。照明だって設置されていますから、暗闇で足を取られるなんて事はないから、見学というのなら安全そのものですよ」


 鳴沢洞穴は深さ21メートル、総延長距離150メートルとそれほど大きな氷穴ではありません。

 階段を降りて地下空洞に移動、そこから溶岩洞窟と呼ばれる細い回廊を進んだ後、更に階段を下りて順は通りに奥へと向かうだけ。

 途中、柵に覆われた『地獄穴』という所があり人が大勢いましたが、そこから下へは向かうことが出来ません。

 名前の如く、そこから先には底が見えない竪穴があり、一説によりますと江の島にある洞窟まで続いているとか。

 

「……あっちゃあ……そう来ますかぁ」


 マジックアイの一つを更に道なりに進めてみますが、氷穴内部を調査しているような人はどこにもいません。そして地獄穴の周辺では、先ほど確認した10名程の人たちがドローンを飛ばして地獄穴の内部を調べている最中ですか。

 しかも、2名ほどの人がロープを体に固定し、降下する準備を始めているじゃないですか。

 阿呆ですか、死にたいのですか。


「音が聞こえてこないので、視認でしか判別がつきませんか……あ~あ、とうとう降下を始めましたよ、ここが天然記念物だっていうことを全く理解していませんね。それにしても……随分と綺麗な氷柱が並んでいますね」


 鳴沢氷穴はその名の通り、最深部には氷の壁や氷柱が立ち並ぶ幻想的な空間が広がっています。

 また、世界有数の……なんだかがあるのですが、そのなんだかは忘れました、興味がないので。


「……氷柱もライトアップされて綺麗ですね。ここの柱なんて、中から紫色の光が溢れていますよ、中に小さな石が……ぁぁぁぁぁぁ」


 大急ぎで逸見1尉に通信です。

 その氷柱の光はライトアップではありません、高濃度魔晶石の放つ魔力光です。

 周囲の氷柱からも感じますし、よく見れば地面から剥き出しの魔晶石も見えているじゃないですか。


「逸見1尉、アラートです。鳴沢氷穴の迷宮化を確認。急ぎ活動を開始します」

『了解。こちらは熊を3頭ほど発見したばかりだ。そちらの対処が終わり次第合流するが、如月3曹……体毛が青く輝いている熊は、自然ではないよな?』

「体毛が青く……あ~、それ魔獣ですね、氷属性の魔熊です、私たちはそいつをクールベアーって呼んでいます。まあ、周囲に魔力で形成された氷柱を作り出して飛ばしてくる程度で、自衛隊の武器でも傷つくタイプですので普通に銃器で討伐可能です」

『了解。では討伐が終わり次第、そちらに合流する』


 これで通信が切れましたが、逸見1尉の後ろで銃撃音が聞こえてきました。

 まあ、普通にここでも聞こえていますので、それほど遠くはないのでしょう。


「それにしても……魔熊が3頭ですか。ここの迷宮属性は大地寄りの氷、自然洞型ってところでしょうか……そうなると、迷宮内部に出現しているのは魔熊ではなく、アイスサーペントとか氷系魔獣ってところでしょう」


 取り敢えず装備を変更する必要はありませんね。

 そう考えていたら、戦闘聖域のモニターに異変が発生。

 地獄穴に降下していたらしい人に何かあったのか、内部の様子がけたたましく動き始めました。

 大慌てで地獄穴に降下している人のザイルを引き上げていますが、そのうちの一本が真っ赤に血塗られていますねぇ。

 ええ、喰われたかなぁ……。


 そして、大慌てで氷穴から飛び出してくる人たちを横目に、魔法の箒にぶら下がって順路を逆に回って地獄穴に到着しました。

 え、随分早いって?

 そりゃあ、魔晶石を見つけた時点でマジックアイの一つの同調を私の目に移して、飛び出したに決まっているじゃないですか。


「き、貴様は如月3曹、こんな所に何しに来た!」

「国際異邦人機関の『生命救護活動に関する条例』の発動を宣言します。確認者はこの場にいる五ノ井議員とその他数名、この宣言は記録として残されていますので。では、これより迷宮の破壊を開始しますっっっっっ」

「待てぇぇ、そんなことが許されていると思っているのか、この迷宮は山梨県知事の要請に基づいフベシッ!」


――スパァァァァァン

 あ、魔法の箒の先が頭にぶつかりましたか、これは失礼。

 ダメですよ、任務中の自衛官の近くに走ってきたら。


「人の命が掛かっているときに、あんたは何を叫んでいるのですか、馬鹿なの、あ、馬鹿だから迷宮管理委員会なんていう素人集団を扇動して、調査員の命を失わせたのですね、はい、それでは活動を開始します〜っと」


 よし、言いたいことは言い切ったので、地獄穴に飛び込みます。

 あとは魔法の箒にぶら下がって加速を開始、一番底まで移動したのち横穴を飛ばしていきますよぉぉ。

 すぐそこに青く透き通った巨大な氷竜(アイスサーペント)が徘徊していますから。

 犠牲者の死体は確認できず、という事は、あいつの腹の中でしょうねぇ。

 よかったですね、あいつは咀嚼しないで丸のみするタイプですから。

 ロープの血って、被害者が洞窟の床に引きずられた時についた傷でしょう。


「それじゃあ、氷竜討伐を開始しますっと……あ、その奥にダンジョンコアも発見。それじゃあ任務開始といきますか」


 本当なら、氷竜程度なら逸見1尉でも対処可能なのですよ、魔熊よりは弱いはずですから。

 ただ、こいつは魔術の完全耐性持ちなんですよね。

 つまり、ここは闘気で……と行きたいところですが、闘気も効きませんので物理でいきましょう。

 さあ、あなたの罪を数えてください!!


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― 新着の感想 ―
国際法の場合、“条例”ではなく“条約”なのでは? この馬鹿議員は、公務執行妨害罪と殺人罪で検挙されるのですね。 他人を唆して、立ち入り禁止(天然記念物)領域に侵入させ、迷宮化して危険なダンジョンを適…
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