Twist & Shout(委員会のその前に、幕僚長と会見です)
朝。
いつものように起床時間に目を覚まします。
油断すると起床ラッパで叩き起こされる為、それよりも早めには目を覚ますようにしています。
ちなみに女性隊員宿舎といえど油断は禁物、だらしない格好をしていたらすぐに上官に怒られますので。
そして身支度を整えたのち食堂へ。
北部方面隊札幌駐屯地の女性隊員宿舎には食堂も併設されているので、まずは軽く腹ごしらえ。
ちなみに昨晩のメニューは『真ホッケの天ぷら』でした。今朝はいつもと同じです。
ご飯とみそ汁、ウインナーとチリコンカーンと卵の炒め物。
納豆と味付け海苔もしっかりとついていますけれど、これでは足りませんよ、ええ。
ということで食べ終わってから基地内のコンビニへダッシュ、すでに朝の常連となりつつある大越3曹と菓子パンの取り合いです。
そして朝食後は8時15分の課業開始前まで、私は室内で瞑想を行ったり魔導書を開いて魔術の研究。
今日は小笠原1尉と一緒に魔術のミーティングを行っていました。
現在の小笠原1尉は『一織の魔法訓練生』、契約した魔導書は『一般魔術』のみ。
ここで『二織の魔法使い見習い』となるべく研鑽するか、ここで妥協するかが運命の分かれ道です。
まあ、今は一つでも多く一般魔術を身に付けるべく、私の時間が空いている時は魔導書片手に指導していますので。
尚、指導場所については畠山陸将の指示があり、課業中の訓練として行うのならば会議室もしくは第1空挺団魔導編隊事務室にて行っています。
ちなみに課業以外の場合は『好きなところで行って構わないが、出来るなら人目に付く所で』という説明もあったので、今日は食堂で朝食を取った後に行っていました。
そして8時15分、国旗掲揚の後、朝礼を開始。
辛く厳しく楽しい一日が始まります。
「……ということで、如月3等陸曹、これより市ヶ谷の防衛庁へ向かいます!!」
空挺迷彩服二型を身に纏い、ヘルメットもしっかりと装着した後、丘珠駐屯地の管制塔に連絡。
そしていざ、市ヶ谷の防衛庁統合幕僚監部へ。
ええ、午後からは国会議事堂での質疑応答があるそうですので、その為の事前準備があるそうなのですよ。
それはもう、しっかりと幕僚長直々のお呼び出しですから。
………
……
…
――市ヶ谷・統合幕僚監部
「さて……」
現在、私と有働3佐の前には、陸上自衛隊幕僚長である鷹木陸将が座っています。
はい、ここは幕僚長室、私自身も緊張した面持ちて、鷹木陸将の言葉をじっと聞いているしかありません。
「本日の、迷宮調査特別員会での質疑応答ですが。如月3曹としては、どこまで話をする予定ですか? 恐らく彼らは、この日本に出現する迷宮に関する権利の全てを自分たちが管理すべきである、そう話を持っていくと思います。そのような話が成立した場合は、以後、如月3曹は自分の土地でも勝手に迷宮を作ることはできず、資源および素材の回収は不可能となりますが」
なるほど、そうなる事を前提としての、私からの意見を求めているという事ですか。
では、ここは一歩も引く必要がないので、正々堂々と返答します。
「まず、どのような手段で迷宮を管理・運営するのか、それについての具体的な意見を求めます。次に、それらの手段が適切であるかどうか、実際に迷宮を作り出して行っていただきます。それが出来ないようでは、彼らの意見など机上の空論以下、リーダーの言葉をお借りすれば『素人は黙っとれ』と言う事ですが……」
「うんうん、そうだねぇ。では、その為には、如月3曹は実験的に迷宮を作る事も可能であり、そこに迷宮調査特別委員会の人達に調査に向かって貰うことも出来るという事ですね。具体的に、そのような実験を行うとした場合。攻略難易度は自在に設定できるのでしょうか?」
まあ、これについては可能でありますね。
そもそも、お正月に庭に作った迷宮でも、第1空挺団魔導編隊だけでは全滅確定ですからねぇ。
「はい。私が保有している素材を用いることで、難易度は自由に設定できます」
「では、現時点で第1空挺団魔導編隊しか使えない魔術。闘気訓練用の迷宮施設を作り出すのも出来ると?」
「はい。異世界アルムフレイアでは、冒険者ギルドに依頼されて、冒険者育成施設の中に訓練用の迷宮を作った事もありますが……」
「なるほど、本当に自由自在に作れるのですね。ちなみにですが、4人の勇者の中で、如月3曹のように自在に迷宮を作る事が出来る方はいらっしゃいますか?」
おおっと。
これは結構難易度の高い質問です。
「迷宮をつくるだけなら、4人全員が可能です。それを自在に作り替えることができるのは私だけです。また、ダンジョンマスターとして私が作り出した迷宮を彼らに譲渡した場合は、全員が自由自在に迷宮を作り替えることが出来ます」
事実、ナイジェリアの自然迷宮については、スマングルが管理・運営していますからね。
現在も、彼に頼んでマナラインの活性化状況を逐一調べて貰っていますから。
そうでもしていないと、あの夜魔キスリーラが何かしでかしそうで怖いのですよねぇ。
「ふむ。例えば、如月3曹が、この市ヶ谷駐屯地の中に迷宮を作ったとしよう。そうですね……訓練施設として使用可能、難易度は新宿地下迷宮と仮定して……それを作り出した後に管理・運営を誰かに譲渡とする事は?」
「可能ですが、譲渡された対象が魔術師相当の魔力保持者でない限りは、体内の魔力を全て奪われて死亡。迷宮管理者を失ったダンジョンコアはフリーとなり、自らの意志で迷宮を作り替えると思われますが」
ええ、それもアルムフレイアで見た事がありますので。
とある貴族が自らの領地に迷宮を欲したあまり、大金を積んで魔術師を雇い迷宮を製作。その後管理する為に権限を移した瞬間に生命を全て奪われて死亡。さらにダンジョンコアがその死体をガーディアンとして再生。領主はリッチロードとなり、ダンジョンスタンピードを起こして……なんていう事件もあったそうです。
私はわら、その時期は修行中だったので、その領地が滅んだ後に討伐に向かった口でしたから。
「……結論としては、如月3曹以外では、この日本で迷宮管理を行うことは不可能という事ですね」
「はい」
「よろしい。では、今迄の説明を踏まえて、後は如月3曹の思うように質疑応答を行ってください。くれぐれも、彼らに迷宮管理の権限を与えないように……まあ、迷宮管理については、防衛庁はノータッチを貫く予定ですので、もしも自然発生した迷宮があったとしても、『彼らが出しゃばっている限りは』、私たちは何も手出ししません。というのが、統合幕僚監部の統一見解です」
「はっ!! 了解しました」
頭を下げる敬礼。
「さて、次に、新宿地下迷宮跡にある『如月迷宮』の処遇ですが。この度、正式に『防衛庁管区・地区別調査迷宮』という名称で、防衛庁主導での管理が決定しました。管理責任者には防衛庁統合幕僚部の柳葉輝彦1等陸佐が、その補佐として有働3佐および如月3曹が担当となります。後日、正式に辞令を発行しますが、現行の任務に追加して、新たに課業が増える程度と考えて下さい」
つまり、これまでの『如月迷宮』の報告書を参考に審議を行い、私の作った迷宮なので危険度はないと判断し、正式に防衛庁が認めて管理する迷宮であるという建前を作った訳ですか。
これにより、防衛庁が正式に安全であると認めた迷宮については、防衛庁主導で管理・運営を行える……と。迷宮管理特別委員会に対して先手を打ったのですね。
「「拝命しました!!」」
そう敬礼を行った後、私と有働3佐は踵を返して、幕僚長室を後にします。
そして本日の迷宮調査特別委員会に同行して頂く有働3佐とともに、国会議事堂へと……まだ早いですね。お昼ご飯を先に食べたいと思いますが。
「さて。委員会のみなさんは、どんな話を持ってくるかねぇ。今日は長くなりそうだから、今のうちに食事を取って来たまえ。この防衛庁の風人食堂は、カツカレーが絶品でね。お勧めはスペシャル・カツカレーだ」
「それは縁起がいいですね。では験を担いでカツカレーを頂きます」
「では、行きましょうか」
そのまま風人食堂でスペシャル・カツカレーを注文しなくては……と、ここは券売機でしたか。
後はのんびりと食事をとって、少し早めに国会議事堂へ。
さあ、何処の誰でも構いません、かかってきなさい!!
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。





