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【書籍化】エアボーンウイッチ~異世界帰りの魔導師は、空を飛びたいから第一空挺団に所属しました~  作者: 呑兵衛和尚
Seventh Mission~最終決戦、そして地球の命運は

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Goodbye And Hello(まあ、メジャーかつ低コストということで)

 さてと。

 それじゃあ、南雲皐月さんに付けておく召喚獣でも用意しますかねぇ。


 という事で、儀式魔法陣を用いた召喚術式を使用する為、一度、習志野駐屯地の近藤陸将補に連絡を行い、魔術の使用許可を求めてみたところ。

 今後の宣伝やその他の情報操作に必要なので、大々的に行うようにと統合幕僚監部よりありがたいお言葉が届きましたので、本日はここ、東千歳駐屯地の演習場にて儀式魔法陣を展開する事になりました。

 マスコミをはじめ関係各社・関係各省にも事前通告が行われたので、それはもう大勢のお客さんが集まっているようです。


 ちなみに会場は東千歳駐屯地東方、自動車訓練場のような場所からすぐの場所。

 そこに大量のテントが設営され、マスコミも大勢集まっています。

 そして本日のスケジュールが立て看板に書かれて設置されているのですが、どうにも私の儀式魔法陣の展開は午後二時から、それまでは第1空挺団魔導編隊の正式なお披露目などもあるそうで。

 何というか……うまく使われたようです、はい。


「……という事なのですけれど、何でここにスティーブとヨハンナが来ているのですかねぇ。あ、ヨハンナはいいのよ、東京の教会所属だし、いつ来ても大丈夫だけれどさ………」

『ああ、俺は矢臼別演習場で行われる、アメリカ海兵隊との合同訓練に参加する為にやって来た。まあ、ついでにだけどヨハンナから連絡を受けたのは昨日で、ちょうど千歳空港に到着したばかりだからな』

「またC-130ハーキュリーでぇ? まあ、それならいいんだけれどさ。失敗したらよろしくね」

「うんうん。大丈夫よ、きっとね」


 まあ、ヨハンナが大丈夫というので、きっと大丈夫でしょう。

 そもそも、この規模の召喚魔方陣なんて使う予定がなかったのですよ、こっそりと小さめのものを使えばいいかな~程度にしか考えていなかったのですから。


「ま、まあ、なんとかなる……かな。それじゃあ、わたしは準備があるので行ってきます」


 そんなこんなで、午前中のパレードまがいのものや魔法・闘気を使った模擬訓練、魔法の箒と絨毯による航空ショーのようなものまで行われましたよ。

 挙句、札幌の丘珠空港に停泊していたMV-22オスプレイからの空中降下訓練まで。

 まあ、このあたりは第1空挺団の先輩たちがおこなってくれたので、私たちは切れかかるの闘気と魔力の補給のために休憩。

 そしていよいよ、私の出番となったのですけれど。


「さて……トラペスティさん、この規模の魔法陣は私は初めてなので、サポートをお願いします」

『それは構わないが、召喚術式は知っているのか?』

「アルムフレイアの迷宮で入手したスクロールと古文書があります。まあ、これでどうにかなるかなぁと」

『どうにか……ねぇ。ま、魔術制御は引き受けるので、思う存分にやってみるといいさ』

「ああっ、やっぱり頼りになりますねぇ」


 ということで、装備を魔導師標準装備に変更。

 ついでにトラペスティの耳飾りとエルダースタッフも装着して、これで準備はできました。


「それでは、いきます。七織の魔導師が誓願します。我が足元に円環の双極の蛇を遣わせたまえ。そは魔術、そは自然。遥かなる世界アルムフレイアより、我が名において姿を現したまえ……我はその代償に魔力一万二千五百を献上します……」


 使用した術式は『上位召喚術式』。

 自身が使役している生物を『多階層位相空間(アウタープレーン)』より召喚するのではなく、私の魔力に呼応してくれる生命体をアルムフレイアより召喚する秘術です。

 そして私の足元の魔法陣が深紅に輝くと、そこから巨大な生命体が姿を現しました。

 ええ、巨大な異形の人型生命体、全高は6メートルほどでしょうか。

 灰色の筋肉美に捻じれた二つ角を持つ悪魔の形相。

 そのような存在が姿を現した瞬間、背中の巨大な翼を広げたのですから見ていた人たちはさぞかし肝を冷やしていることでしょう。


『あ~、どこのだれかと思ったら、ステルヴィア伯爵か。弥生も、なんでこいつを召喚したかなぁ』

「弥生ちゃ~ん。たしか伯爵は貴方の支配下だったわよね、この地球で仕事を手伝ってもらうのかしら?」


 そんな楽しそうな会話が見学席から聞こえてきますけれど。

 どうしようか考えものですよねぇ。

 あ、ちなみにこの最上位悪魔であるステルヴィア伯爵は、アルムフレイアの最果ての迷宮の最下層のダンジョンマスターだった方です。

 そりゃあもう、私たち勇者パーティーはしっかりと殴り合いましたよ、その結果、伯爵の希望で浄化されずに支配下に収まったのですから。


「う~ん、まあ、手伝ってもらうのもありといえばありなのですけれど……ねぇ伯爵、私のことは覚えているわよね?」


 そう問いかけると、ステルヴィア伯爵は下に立っている私をじっと見てから、なにやら首を傾げています。あれ、まさか忘れたの?


『矮小な人間ごときが、この私に気軽に声をかけるなど……掛けるなどどどななどなどなど、これはこれはヤヨイ様ではありませんか。成程、この地を焦土と化してしまえばよろしいのですね?』

「うん、忘れていたね?」


 まるで虫けらを見ているような目つきで私を見ていたのですが、だんだんとその目つきが温和になり、今はほら、涙を流しそうなチワワのような純粋な瞳に変わっていますよ。途中で思い出したのですよね。


『はい、忘れていました、まことに申し訳なく』

「うんうん、あれから数年経つからね、無理もないよ。それで、ちょっと小さくなれる?」

『それはもう……アパパラパー!!』


――ボウッ

 ステルヴィア伯爵が一声叫んだかと思うと、煙を噴き出して人の大きさに小さくなりました。

 うん、片眼鏡をつけた銀髪長髪の美形科学者っていうかんじですね、アニメでいえば、第一期では仲間だった科学者が実は悪の手先だったとか、そういう雰囲気ですよね。


『おお、この聖なる波動と光の闘気は、この地には勇者殿と聖女様もいらっしゃるのですか』

「そういうこと。まあ、経緯はいろいろとあるけれど……」


 ちらりと周囲の、特に来賓席を見ます。 

 うん、かなりの人が意識を刈り取られてしまったらしく、今は救護班が走り回っていますね。

 ちなみに近藤陸将補と畠山陸将は平然としています。

 それに、第1空挺団のご一行様にいたっては涼し気な風が吹いたかのような表情。

 さすがは闘気修練者、精鋭の集まりですよ。


「とりあえず、精神領域(マイワールド)でのんびりとしていて。何かあったら呼びますので」

『かしこまりました。では』


――シュンッ

 そう告げて頭を下げたのち、ステルヴィア伯爵は精神領域(マイワールド)へと姿を消しました。

 ちなみに精神領域とは、彼ら悪魔の住む世界であり自分の支配するテリトリーのような場所。

 私が地球に召喚したので、この世界に新たに構築する必要はあるのですけれど、それを一瞬で終わらせる事が出来るとはさすがですよねぇ。


「さて……それでは準備運動も終わったので、いよいよ本番です」

「あ、あ、悪魔を召喚しておいて、今のが準備運動だっていうのかぁ!!」


  ああ、報道関係者からヤジが飛んできますが無視ですよ無視。

 そもそも、南雲さんの護衛として召喚するのに、何でラスボスを設置する必要があるのですか。という事で、もっと無難な召喚獣を使役しなくてはなりません。


「それではっ、七織の魔導師が誓願します。我が足元に円環の双極の蛇をつかわせたまえ。そは魔術、そは自然。遥かなる世界アルムフレイアより、我が名において姿を現したまえ……我はその代償に魔力一万二千五百を献上します……」

 

 再び起動する召喚魔方陣。

 そして次に出てきたのは、白いローブを身に纏った、二足歩行の猫。

 俗にいうケット・シーという猫妖精です。

 うん、この子なら適切じゃないかなぁ。


『うにゃ!! あちきを召喚したのは貴方様かにゃ? って、七織の魔導師だにゃ』

「うん、君は師匠のところの使い魔の一人かな?」


 ええ、私の師匠の使い魔の中にも何人かケット・シーはいましたよ。

 そのうちの一人なのかなぁと思うのですが。


『うにゃ、あちきのお父さんが七織様の御師様の使い魔筆頭でしたにゃ』

「ああ、そういうことですか。では、私の使い魔になってくれますか?」

『うにゃ、では契約内容と報酬について話し合いますにゃ。あちきの要望はこんな感じですにゃ』


 さて、ここからは召喚した使い魔との商談です。

 俗にいう雇用契約でして、力で支配しているものならば問答無用なのですけれど、こうして知性あるものをランダムに召喚した場合は、しっかりと雇用契約を結ばなくてはなりません。

 これが召喚師でしたら、召喚術式の中にすべてを組み込んでから儀式を行うので、召喚されたものは自動的に使役状態になるのでいいけれどねぇ。

 まだまだ、私は未熟という事ですか。

 ということで、広い演習場の中央にテーブルとイスを用意して、約30分間の話し合い。

 そしてお互いの妥協点が見つかったので、後は術式による契約を行って終了です。


『うにゃ、では、この写真の少女の護衛という事ですにゃ。姿を見せない、生命の危機に該当する事項が発生しそうになったら、火急かつ迅速に、自然に彼女を守るにゃ。そして一日に一度、念話で報告するにゃ』

「一週間に魔力2500を献上、自身より上位存在との戦闘になった場合、更に私の魔力を15000自動的に使用する事を許可します」


――ガシッ

 以上の契約内容を組み込んだ契約魔法陣を展開し、そこに双方の手のひらを当てて契約は完了。

 

『では、さっそく仕事を開始するにゃ』


 そう呟いた瞬間、ケット・シーの周囲に風が舞い上がり、そしてスッと姿を消しました。

 まあ、契約は完了したのですぐに仕事に就くのは基本。

 私は胸元のマイクのスイッチを入れると、来賓席に向かって頭を軽く下げます。


「ただ今召喚したのは、アルムフレイアでは一般的に使役されるケット・シーという猫妖精です。彼らの住む領域より、仕事を手伝ってもらう為に召喚しました。まだ何か見たいのでしたら、引き続き召喚を続けますが」


 そう説明をすると、やはりもう数体ほど召喚するところを見てみたいという事ですので、消費魔力を若干落として契約難易度の低い召喚獣を召喚して見せました。

 ワイバーン、ユニコーン、アースゴーレムなどなど。

 迷宮によってはたまに見かける程度の存在ですが、この地球ではどれも幻想世界の住民たち。

 来賓席や報道関係者からはオオオオオというどよめきが聞こえてきます。

 まあ、ワイバーン達については、今しばらくは私の自宅にある迷宮でのんびりと生活してもらう事にしました。

 ええ、各国の研究機関から『サンプルとして提出できないか』という打診が大量に来るでしょうけれど、全て無視ですよ無視。

 それよりも、私の召喚を笑いながら見ていたスティーブ。

 あなたも本国に戻ったら、召喚出来ないのかっていわれますからね。

 精々、高笑いしていなさいよ。

 


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