「記憶の鎖」(Chain of Memories):妙×恵×清
#記念日にショートショートをNo.19『呪いの記憶』(Cursed Memories)
2019/8/11(日)山の日 公開
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【関連作品】
「記憶の鎖」シリーズ
日差しが照りつける山道を登る。
「妙、大丈夫か。」
後ろを歩く妙に声をかける。うん、大丈夫だよ、という返事を聞き、再び歩き出す。
標高も80mと低く、山道がなだらかであるとはいえ、8月もこの時期は外を歩くだけで暑い。たった15分の山登りでさえ、汗が吹き出してくる。
「恵兄、無理してない?大丈夫?」
後ろから聞こえる心配を多分に含んだ声に、「大丈夫。」と明るい声で返す。僕はあいつに心配をかけないようにしなきゃいけないんだから、と気を引き締める。僕が守るんだから。清くんにまで心配をかけたら僕は代行さえ出来ないただの出来損ないだ。
数分後、視界が丸く開けた。
「着いたぞ。」
頂上に立つと、より一層、太陽が肌を焼き付ける。少し濡らしたタオルで肌に張り付いた汗を拭い、水筒に入れて来たよく冷えたお茶を2口、3口と口に含む。
「妙、きちんと水分補給しろよ。熱中症は怖いんだからな。」
「それは恵兄の方でしょ!私の方が体も丈夫だし。」
正論を返され、ハハハ…と苦笑しながら墓石の前に座る。「清くん、来たよ。」と声をかけ、手を合わせる。妙も隣にしゃがみ込み、手を合わせ目を閉じる。
「もう7年か。」
そう呟いた。
「恵兄と私、清兄と同じ年になっちゃった。」
隣で妙が言う。
「早いな。」
「ううん、まだ15歳だよ。」
目を開く。線香に火をつけ、風に煙を誘う(いざなう)。煙がのぼっていく。ちらり、と、隣の妙を見る。妙はまだ目を閉じている。そのお下げ髪は、昔から変わらないままなのに、僕らは7年も、清くんのいない時間を過ごして来た。
「清くん、僕が妙を守るから。」
毎年ここへ来るたびにするお願いを祈る。そうすれば、僕はその年1年間、健康に過ごせるから。だから、今年も、きっと大丈夫。
「妙、僕は絶対に死なないよ。大丈夫、ずっと妙のそばにいて、妙を守るから。」
その手を、妙の手を握る。幼い呪いなんて取り払ってやる。その記憶を僕が助けてやる。
「本当に…?」
もう一人で悔やんで、心配して、泣かせたりなんかしない。
その瞳に映っているのが、僕じゃないとしても。その呪縛を僕が取り払ってやるから。
「本当だよ。」
こんな指切りしたって、守れないかもしれないのに。
【登場人物】
●恵(けい/Kei)
○妙(たえ/Tae)
【バックグラウンドイメージ】
【補足】
【原案誕生時期】
公開時