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今日も今日とて、姉によく似た小生意気な姪っ子は、結局補習の運命からは逃れられなかったようで、こってり絞られて帰ってきた。
「おかしいですよこんなの。今は夏休みなんですよ? なのにどうして学校なんかに行かないといけないんですか……」
「補習になるような酷い成績とったからだろ……。成績表の実技と座学の落差とんでもないことになってたじゃん。レーダーチャートめり込んでたよ? あんな両極端な成績表初めて見たけど?」
「成績がなんですか。そんなのは私の夏休みを奪っていい理由にはなりません! 大体、あんな眠くなる話の何が役に立つんですか。結局社会に出て役立つのは力ですよ。どれだけ頭がよくて正しくても弱い人間の意見なんて強い人間の暴力で潰されるんですから」
「んなことねーよ。むしろ強い人間ほど知識とか思慮深さは求められる。姉貴がただ強いだけの人間だったら今ごろ利用されるだけ利用されて邪魔になったら消されてるだろうしな」
「消されるって……。お母様に誰が勝てるんですか」
「別に力に頼らなくても人を消す手段なんていくらでもある。お前が役に立たないって言ってる知識を使ってそれをやる怖いやつだって世の中いくらでもいるんだよ。なんなら力に訴えてくる奴なんて可愛いもんだぞ? 実際、お前のことを退学にしようとしてた連中も力以外のやり方でお前を潰そうとしてたわけで、お前一人だったらそのまま退学にされてたろ」
「むっ……。それは……」
「そういう奴から身を守るために知識や経験って奴は必要なんだよ。賢しい奴に対抗するためには同じくらい賢しくなるのが一番手っ取り早い。持論だけどな」
「なるほど……。たしかに、役に立たないっていうのは……言い過ぎだったかもしれません」
「……ま、座学やらなんやらの意味なんてそのうち自分なりの答えがでるから気にしすぎるなよ。俺の考え方が絶対正しいってわけでもないし」
「そうですね。だって、おじさんの理論だと首席で学校を出たおじさんがこんな落ちぶれてるのおかしいですし」
「俺が落ちぶれてる前提で話すのやめてくんない?」




