第六話・勇者
神聖法国イストル、世界最大の宗教でありこの国には十聖女と呼ばれるもの達がいる。そのうちの一人、杖の聖女ルリア・プロメアライト、彼女は今人生最大の極地に立たされている。剣の国アステバに向かっている道中にてとある四人組に出会う、そしてこの内の一人、黒い鎧を着た大柄の男に無理難題を言われたのだ。その内容とは[多額の金額に検問許可証、学園入学に冒険者登録]と言ったものであった。そして先程またしても無理難題を言われる、今度は黒騎士からではなくメガネを掛けた男からの無茶振りであった。その内容は先程のものよりも酷いものであった。[武闘大会の予選参加、もしくは本戦出場の許可]、これらの二つのことがどれだけの事かを聖女理解している。
「なぜ私がこのような目に…」
あの時あのタイミングであの街道を通らなければ、今のような状況になって筈でしたのに…これもまた運命なのでしょうか…?取り敢えず行動に移さなければ何も始まりません、急ぎ本国へ連絡をしなくては…
「一応私からも四大国に送っておきますか」
そういうと目の前にある手紙を、転移の魔法で各国に送る。
《神聖法国イストル》
城のとある一室で一人の男が書類作業をしている。銀の瞳とサックスブルーの髪、そして高品質の白いスーツとコートを着たこの人物、名をアルステリア・ランドリッヒと言う。イストルの神聖騎士団筆頭を務めており、立場上聖女より上である。この男の発言力は強く、時にはどの様な無理難題も通ることがある。だが今回はレベルが違う、金額の方はアルステリア個人の財力でどうにかなる。しかし検問許可証と武闘大会の件はそうもいかない、各国の首脳へ書状を書き許可を出してもらわねばならないのだ。
「ルリア・プロメアライトめ!よくもまあこれ程の問題を起こしてくれたものだッ!それに四大国にも手紙を送っているだと?!勝手なことをッ!」
幾ら私と言えどこれ程の事を処理するとなるとそれなりの時間が掛かる。ルリア・プロメアライトの言う人物が本当に文献を所持しているとなれば、出来るだけ急ぎ準備をしなければならないのだが…もし嘘であった場合のデメリットが大きすぎる。何らかの確証がなければあまり動きたくは無いのだか、真実であった場合の損失も同時にデカすぎる。この事を各国の首脳陣たちに話したのならば、少しは動く気になるだろうか?今回開かれる武闘大会は五年に一度のみ開かれる、そして長きに渡る由緒正しきものだ。
そのような開き物に何らかの不祥事があった場合後世まで残り続ける大失態だ、これらの事を踏まえた上でどのように対処すれば良いのか…法皇様に直接頼むべきか?法皇様の言葉ならみな手を貸すだろうか?いや無いな、少なくとも半分の国々は許可を出すだろう…しかし逆に残った四ヶ国は決してこの事を受け入れることは無い。例えばその中の一ヶ国、グランディス帝国はこういった事を嫌という程嫌う傾向がある。もし許可が出るとするならその日は隕石が降ってくる事だろう…。
するとノック音がし、一人の騎士が入ってくる。そして次の瞬間、騎士の言葉にアルステリアは驚きを露わにする。騎士のはなった言葉、それはグランディス帝国が先の件の話を受諾を出したという事だ。本来であれば決して許可をすることの無いあの国が許可をした。この影響は大きく、他の国からの受諾許可の報告が次々と舞い込んでくる。
「どういう事だ?なぜあの国が…」
まさか例の四人が関係しているのか?もしやグランディス帝国の重鎮か?!いやそれは有り得ないか…もしそうならばわざわざ検問や金の事を取り付くう必要は無い。となるとやはり何らかの裏があるのは確かだ、その内容は分からないが我らの国に害はないだろう。もしあるのならば徹底的に排除するのみ、我らが絶対神様の思し召しの為にも…
「ッ!この感じはッ!」
《英雄国家グランディス帝国・王城》
グランディス帝国、この世界で四大国家と呼ばれる国のひとつである。四大国家とは、英雄国家グランディス帝国、無敗の国クライスト帝国、魔導帝国アルドスバルデ、軍神国家日の和の四ヶ国で成り立っている。
「皇帝陛下、なぜ先の件を許可したので?」
「先の件?…あぁ武闘大会の件か、そんなこと決まっているだろ?面白そうだからだよ、それ以外に理由がいるか?それに…」
「…いえ、私はいいと思いますよ?」
「ハッハッハ!」
高らかに笑うこの男、グランディス帝国第七代目皇帝ニグラス=ジーンガルド。グランディス帝国は血縁では無く、国で最も優秀なものを皇帝にするのがしきたりである。そしてこの男は歴代皇帝の中で最強と称えられるほどの実力を持ちならがも、民との交流を欠かさず自ら畑仕事などを手伝うほどである。
ククク、それにしても面白いものだ。あの男がまさか俺にこの様な手紙を送って来るとは、余程の事態なのだろうなぁ?実に面白いものだ、今までこの俺に頼むことは決して無いとほざいていたあのアルステリア・ランドリッヒがあれほど懇願して来るとは…一体どのような者たちなのだろうなぁ。
「それと先程、神聖法国イストルから勇者を召喚の気配を感じ取ったとの事です」
「…フフ…クハハハッ!やはりかッ…いずれはやると思っていたが、どうやらアルステリアの耳には入っていないようだな。しかし本当に行うとは…」
ニグラスは笑っているが、その声にはほんの少しの動揺が混じっている。何故ニグラスが動揺するのか、それは勇者召喚という物が本来行ってはならないものだからである。勇者召喚とは世界に存在する国家の内、十ヶ国の許可が無ければならない。そしてその中には四大国家すべての承認がなければならない、これらをクリアすれば勇者召喚を行える。しかし今回の勇者召喚はなんの許可も通さずに行われた、これがどれ程の事かをニグラスは理解している。だからこその動揺、いや呆れているのである。
あの国は一体何を考えているのだ?我らに喧嘩でも売っているのか?巫山戯おって…俺の許可も無く勝手に勇者を呼び出すとは…余程滅ぼされたいようだな。
「キール、今すぐ他の三大国に連絡をとれ。非公認会議を行うぞ」
「は、了解致しました」
キールと呼ばれた男は、他の三大国に連絡を取るために部屋を出る。部屋にはグランディス帝国皇帝ニグラス・ジーンガルドのみがいる、その表情は悪魔のように歪み何か悪戯をしようとする子供のような表情にも見える。
ククク、神聖法国イストル…貴様らがどれほどの事をしたのか、思い知らせてやろう。
《魔導帝国アルドスバルデ》
この国アルドスバルデもまた、神聖法国イストルが勇者を召喚したという情報が入った。この事によりアルドスバルデでは緊急会議が開かれていた。会議の場にいるのは皇帝、宰相、二大公爵、魔導部隊総隊長、魔導騎士団総隊長の他貴族や師団長たちが集まっている。現在この場にいるもの達は、この国で最も高い地位と発言力、信頼や実力を持っている。本来の会議であればより多くのもの達が来るのだが、今回はなるべく少数での会議でとの事でこうなった。
すると魔導騎士団総隊長、スペルド=ザ=ハードが発言をする。
「陛下…今回の勇者の件、果たしてイストル全体が関わっていたのでしょうか?もし関わっているのならば、あの男から必ずに知らせが来るはずです」
陛下と言われたこの人物は、魔導帝国アルドスバルデ第四代目皇帝アイリス=ウィンディークと言う。歴代の中ではただ一人の女性であり最も狡猾な人物である、魔力量は一般的な魔導士と余り変わらないが、技術面で言えば右に出る者はいないほどである。魔法には六段階の強弱があり、下から初級、中級、上級、最上級に極限級そして最後に殲滅級である。アイリスはこれらの段階全てを使いこなせるほどの技術力を所持している。本来であれば魔力が足りないというのが殆どだがアイリスは違う…殲滅級魔法は最高峰の魔導士が幾人かいて発動できる、しかしアイリスはそれらの魔力消費を九十八%カットして使用する事が可能なのだ。
「…ふむ、そう問われると難しいな。何せあの男、アルステリアは勇者召喚反対派の人間だ…もしあの男が勇者召喚に関わっているのならば、四大国のいずれかに報告をするはずだ。それをしないと言う事は、知らなかったもしくは裏切ったかのどちらかだ」
裏切った、その言葉に場がざわつく。アルステリア=ランドリッヒが裏切る、そのような事は天地がひっくり返ろうとも決して起こりえない事なのである。彼の崇拝する神の名はイルステリア、深愛の女神である。イストルにはふたつの派閥がある、先程の女神イルステリアそして、深淵の女神イルトラであり、アルステリアは女神イルステリア派の人間である。女神イルステリアは勇者を呼ぶ行為を禁じている、対して女神イルトラは勇者を積極的にする様にと信託を下している。この事により、勇者召喚の反対派と勇者召喚賛成派とで押し問答が起きている。
「陛下、それそこありえない事です。彼は女神イルステリアを崇拝してます、それに彼とは共に騎士の国で訓練した者です。裏切りという行為がどれ程の愚行かを彼は理解しています、それを踏まえた上で陛下は裏切りを考えますか?」
「…そうか、ソナタはあの男の同期であったな。ソナタが言うのならば、あの男は自らを裏切りはしないのだろうな…だがあの国自体を赦す事にはならない、時期にグランディスから連絡が来る筈だしなぁ…ニグラス=ジーンガルド、あの男は優しさこそあるが、愚行を赦すほどの慈悲を持ち合わせてはいない」
はてさて、神聖法国イストルはどのような行動を示すのだろうなぁ。それに先程連絡の来た四人組についても気になる、確か盾の聖女と共に居るらしいが…聖女も勇者召喚の件を把握しているのだろうか?なんだ楽しくなってきたでは無いか、私も久しぶりに武闘大会に出場でもしてみるとしよう。さすれば件の四人組にも会えるだろうしな…この際だ、ニグラスやルーク、八雲のやつも誘ってみるか。
「それとニグラス自身からパーティ招待状が来ている、たまには行かなければ可哀想だ。そういうことで私はこの後グランディス帝国へ向かう、留守の間頼んだぞ諸君」
『はッ!』
《無敗の国クライスト帝国》
城の一室に、一人の老人が一枚の紙を前に鎮座している。クライスト帝国初代皇帝ルーク・パラダイン、かつて単騎で十数もの中小国を壊滅までに追い込め手中へ収め、たった十数年で大国へとの仕上げた怪物の中の怪物である。そんな怪物がたった一枚の紙に苦戦を強いられている。
「うぅむ、どうしたものか」
「どうしたものかと言うのは、勇者の件に関してですかな?」
「む?あんなものはどうでも良い、それよりも今はあっち関してだ」
「…はぁ、未だに悩んでいらっしゃるのですかな?皇帝陛下」
発言をしたのはこの国の総騎士団長、ディーノ・アルベルトと呼ばれる老騎士。世界的に有名な騎士であり、第十九回武闘大会優勝者でもある。戦鬼の異名を持ち単騎で軍隊を壊滅させられるほどの実力を持っている。
「仕方が無かろう、親としてこれ以上に悩む事などあるまい。それから今はプライベートだ、上司と部下ではなく、友として接してくれ」
「…ふむ、お前がそう言うのであればそうさせてもらおう。それにしても、お前の娘が武闘大会に出たいとはなぁ…誇らしいことでは無いのか?」
クライスト帝国第一王女、シャーロット・パラダイン。ルーク・パラダインがある島に遠征へ行った際拾った子供である、この事は国中の皆が知っていることでありもはや常識である。実子でないことを忌み嫌うものはおらず、むしろ子を成そうとしない皇帝に子が出来たことを喜んだほどである。今現在のルーク・パラダインの年齢は約五百八十ほどなのに対し、シャーロットの年齢は十七とまだまだ若い。そんな少女が武闘大会に出場したいと言い出したのだ、ルークはシャーロットをとても可愛がっており大会へは正直出したくないとのこと。
「…誇らしいってお前なぁー、シャーロットはまだ子供だぞ?それにまだ学園を卒業していないし婚約者も決まっていない…武闘大会には大陸中の強者が集まるのだぞ?シャーロットよりも遥かに強いもの達の方が多くいるだろう。何せ今大会には、獣王ムガクに破壊王セシリア・アークヴァンデその上剣聖までもが出場するのだ。最悪死者が出るだろう、そのような大会に愛娘を参加させようなどという親はいないだろう?」
「ふむ、それもそうか。それにしても獣王か…確か今代の獣王はかなりの強者だったなぁ。前王も中々ではあったが、今代はそれ以上だと聞く。剣聖に関しても興味がある、何せあの剣神の弟子だ…どうだルーク、久しぶりに我らも出場してみないか?それと同時に武闘大会がどれほどの物かをシャーロットに認識してもらえば良いだろう」
「うぅむ、しかしなぁ…我々が大会に出ては力の均衡が崩れてしまうでは無いか、それに八雲が黙っていないぞ?さすがの我でも、あの男を相手に完勝を得るのは不可能だ」
そんなことを話していると、扉の向かう側から足音が聞こえ暫くするとルークたちのいる部屋の前で音が消える…するとノックも無く勢いよく扉が開き、ルークたちのいる部屋に赤髪長身の女性が入ってくる。この女性こそがこの国の第一王女、シャーロット・パラダインである。
「父上!一体どういうことですか!!なぜ武闘大会出場の許可を出してくれないのですか!」
「ぬぅう…だからシャーロットよ、先も言った通りお前を大会に出場させることが」
「だから何故です!まさか私が死ぬとでもお思いですか?それほどまでに私は弱いのでしょうか?父上もご存知の通り、私は準特級ハンターです。もしも相手が特級クラスのハンターだったとしても殺される事はッ」
バキッ!という鋭く鈍い音が、シャーロットの言葉を遮る。その音の出処は、シャーロット目の前にいるルークによるものだった。全身から痺れるような殺気を放ち、今にも国ひとつでも滅ぼそうかという程の剣幕をしている。そこに居るのは父としてのルーク・パラダインでは無く、一人の武人としてであった。
「シャーロット、お前は少し特級ハンターというものを舐めすぎだ。特級ハンターとは単独で神話級の怪物を殺すことが出来る、だからこそ特級という称号を与えられるのだ。そのような強者たちが今回の大会には数多く出場する、その大会に半人前の小娘が出る…果たして生きて帰ることが出来るか?否、決してそのような事はない。お前は必ず殺される、我らはそういう存在だ」
シャーロットはルークの殺気や言葉を受け、冷汗をかき青ざめている。ディーノは全く動じておらず、それがさも当たり前かのように祝っていた。
「ハァ、ハァ…」
…今のが生きる大天災と呼ばる父上の殺気…私では息をするのがやっとだった。だと言うのに、ディーノおじ様はこれほどの圧に対しても全く動じていない…これが父上の言う差なのだろうか…。
ハンターとはこの世に存在する魔物や魔獣、厄災物などを討伐するもの達を指す。ハンターには九段階の階級があり、一番下は八級そして一番上が特級という事になっている。シャーロットはその中でも上に位置する準特級である、しかし特級との差は大きくそれこそ天と地の差である。準特級クラスのもの達が決して弱いという訳では無い、特級クラスのもの達が規格外すぎるが故にこれほど差が生まれたのだ。それほどの実力者が今回の大会には何人も参加する、この世界には特級ハンターが三十人居るがそのうちの十一人が今回の大会に出場するという情報が入っている。
三十人も?と思ったものいるかもしれないが、たった三十人である。この世界に存在するハンターは二千万人以上、その中で三級クラスの者でさえ数千人程度…二級では更に少なく一級では三百ほど程になりそして準特級では百人となる、そんな絞られた者たちの中で頂点に立つのが特級ハンター達である。
「シャーロット、今回の大会には私が出るこれは確定事項だ。そこでだ、お前は今回の大会には出場せずに我の戦いを観察しろ。そしてこの大会がどれほど危険なものなのかを知るといい、それと我は少々出かけてくる。明後日には戻ってくる、その間国を頼んだぞ?」
「あぁ任された、お前がいない間はこのディーノ・アルベルトが民たちを護り向いて見せよう」
「ハッ!このシャーロット・パラダイン、父上のいない間も鍛錬を欠かさず修練致します。そしてこの命に変えても民たちを守り抜いてみせます」
「フッ、では任せたぞ」
《軍神国家日の和》
城にある和の大広間にて、十数人もの人が集まり会議が開かれている。一番奥にはこの国の国主である漣八雲の姿がある、見た目は二十代後半の黒髪長髪と言った感じである。その傍らには齢七千五百を超える老人が座っている。腰には刀を帯刀しており鞘は茶石目、柄の色は緑という具合の仕上げになっている。この男の名は松葉原重國と言い剣鬼として恐れられている、その実力は天下五剣の中でも屈指とされる。漣八雲とは古い知人同士であり、漣が国を国を起こす際には最も力を貸した人物でもある。この国では大老という立ち位置にいる、すると重國がゆっくりと言葉を発する。
「イストルめ、随分と面倒なことをしてくれたものよ。勇者などというものを召喚して何になると言うのだ、異界の若者を攫い無理矢理戦場に立たせるとは…いっその事イストルを滅ぼし若者たちを保護するべきでは無いのか?」
「大老!何をおっしゃるのですか!そゆこと言ったらまた面倒事に〜!」
重國の発言に激を飛ばしたのは、重國からしたら年端も行かぬ少女であった。彼女はこの国に存在する六大隊の内の一つ、第四大隊炎華の隊長である。名を日ノ原ヒバナと言い体術の達人であり、過去には武闘大会に出場し第五位という経歴を持っている。そんな彼女の言葉を間違っていると言い、漣が発言をする。
「何も重國はイストル自体を滅ぼそうと言っている訳では無い、勇者派のものたちの所属している場所を滅ぼせば良いだけだ。俺にはその力がある、重國もだ」
その発言はあまりにも大きかった、イストルにいる勇者の人間の数は計り知れず実力すら未知数であった。しかしいくら強力な的であろうとこの男の前には全てが無力である、過去に討伐不可能と言われた神話級上位の存在を単独で撃破し、その後仇討ちに来た神話級の存在を殲滅したという過去を持っている。それほどまでの実力を持つ男が本気で国落としをしよう物なら、一日足らずで全てが終わる。
「しかし、いくら何でもそれは可哀想だ。そこで物理的にではなく、社会的にこの世から追放する。これが一番無難だ…神の使いとされる国イストル、その信用によってイストルへの信仰力も計り知れないだろう。だが、信用を失った時の反動は大きい。人というものは醜い生き物だ、今まで信用してきたものが嘘だと知ればそれを徹底的に潰しに来る」
「なるほど、国主様の言うことは理解しました。しかしどうやってあの国を地に落とすのですか?イストルには聖女がいますし、守りは固いですよ?」
「そこはほら、俺ら四大国が力を合わせるんだよ」
漣は不敵な笑みをするとゆっくりと立ち上がり、腰に刀を下げる。そしてゆっくりと扉に近づき扉を開ける、すると柄に手をかけ高と思えば漣の目の前にあった壁が砂のように崩れ落ちる。数秒の静寂が流れ、漣がみなのいる方へ顔を向け笑う。
「今から俺は出かける。二~三日で戻るから安心しろ。その間国を頼んだぞ」
その一言を最後に漣はその場から消える、残されたものたちは呆然とする。その中で一人一切の動揺を見せない者がいる、重國である。まるでこうなる事が分かっていたかの様に動き始める、そしてやるべき事を成すためみなへと指示をだす。
「という訳だ、この国の馬鹿国主は暫く不在。その間の指揮は儂が執ろう、まず初めに本土の警備を高めろ。国主の不在を知り不埒を働く馬鹿共が現れるやもしれん、それの対応を急げ」
全く、あの男は変わらんな。出会った時からそうであったが実に自由だ、やりたい事をやる、成すべき事のみをなすそういう男だ…さて、そんな男にどう対応するのだろうなぁイストルは…どれ暇つぶしだ、儂も二千年振りに大会に出てみるか…例の四人も気になるしのぉ。