第四話・世界に異変が起きてるかも?
《ホルスト本部》
さて、色々と考えては来ましたが…正直なところ最も気になるのは、この世界の異変…突如現れた我々がこの世界へと与える影響、存在しているだけで自然の生態系を大きく崩している可能性すらあります。最悪ホルストの者が――特に第二と第六の者たちが――暇だ何だと言い出し世界を滅ぼそうとしている可能性すらあります。いえ、近しい未来必ず言い出します絶対!絶対にです!
そうならない様にする為にも、強力なモンスター、魔物もしくは魔獣を確保し皆の遊び相手を増やさなくてはッ!で無ければ私の胃に穴が…
「あ、そういえば…京極君がピザを作ると言っていましたね、腹が減っては戦ができぬ…かつての者がそう言っていたのです、まずは腹ごしらえをするとしましょう」
あの後黒騎士と色々わかったこと後ある。まずこいつは勇者や無かったってことや、勇者の場合神的な存在に攻撃はできへんらしい。その上勇者より強い奴はそれなりに居ったらしい、ただ実力があっても特別な力がある訳やない。せやからわざわざ異界のやつを召喚するらしいーーもしくはこの世界のやつに宿るーーそんでその反動で強力な魔物が生まれる言う可能性があるんやとさ。クッソっホンマに、魔王を滅する筈が自らの行いでより強力な魔物を産んでる言う事に気付かんとか…馬鹿なのか天然なのかようわからんなぁ。
「つか、どんだけ遠いねん!もう走り出してから一時間は経っとるで!?」
『問題無い、あと少しだ』
「さっきからと言っていることが変わっておらぬぞ!本当に着くのか!?」
『あれを見ろ、あの一際巨大な樹が目印だ。あれを目指せばいずれ着く』
黒騎士の言う巨大な樹、それはこの世界で四大樹と呼ばれるうちのひとつ、聖天樹である。この樹はかつて勇者や英雄、聖女などが訪れ数多くの祝福を受けている。だが今や聖天樹は過去の遺物として、歴史の中でしか知られていない。
あれか?通りでさっきから異彩を放っとる訳や、つかデカすぎちゃうか?なんで浮いとるんや?なんかバカでかい宝石も着いとるし、いやあの宝石が樹を浮かしとるんか?出来ればあの樹の一部は欲しいもんやなぁ。もしかするとバカみたいなエネルギー量持っとるかもしれんし、上手く活用すりゃあホルストに莫大な利益を齎してくれるはずや。そうなりゃ少なくとも俺は楽できるやろ、面倒事はできるだけ避けたいしなぁ。
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あの後、黒騎士に言われるがまま走り続けてだいたい一時間がたってもうた。ここまで来るのに色んな異形共と遭遇したで、動く人型の木に二十m越えの鹿、その上きんもい異形共の大軍まで襲って来おった!ほんまクソすぎるやろッ!本当なら今頃自室でゲームでもしとる筈なんに…これも全部ローリエが大規模な地形操作をした所為やッ!それとこのロリババァが地形吹き飛ばしたのが原因やろ!なんで俺にまで被害が来るねん!どちらかと言やぁ俺は被害者やろ!ぁぁああッ!クソがっ!
「…はぁ、それで何処に居るんや?その神様は?」
『ウゥム、何時もならば此処に居るはずなのだが…フム…陸わ―――』
「ちょっと待ったァァァッ!居るッ!私居るからァァァッ!」
と叫ぶ声が聞こえたかと思えば、聖天樹が強く光り輝き巫女服に似た服を着た背の高い女性が現れる。目を奪われる様な銀色の髪に鋭い赤い目、いかにも神ですよと言う雰囲気を放っている。
な、なんやこいつ?まさかこいつが神か?嘘やろ?思ってたんと全然ちゃうんやけど…まぁ確かに強いんはわかるが…威厳が感じられんなぁ、目の下にクマも出来とるしてかそもそも目に生気が宿っとらん…これを神と認めてもええんか?なんや認めたら負けな気がするんやけど、認めなあかんかな?
「おや?あなたは私のことを神とは認めたくないのですか??」
ッ!こいつ思考を読んでくるんか!ダッルッ!こんのくそビッチッ!
「誰がビッチだゴラァ!泣かすぞっ!」
「ぅわ〜怖いなぁホンマに、そんなカリカリしとるとシワが増えるでぇ?」
「あ"ぁ"?」
この神おもろいなぁ、弄りがいがあるで。まぁこいつなら神とは思われんやろ?連れ歩いても目立たんやろうしええか、ただ問題があるとするんなら…こいつがそれなりに有名な神だった場合や。もしそうやったら確実に面倒事に巻き込まれるやろ?それだけは御免や、どうにかして回避せな。
「ん?」
なぜなのだ?急にこの男の思考が見えなくなった、なにかプロテクターでも張っているのか?いや、神である私と対等かそれ以上でない限りそれはありえない…まさかこの男、私と同等かそれ以上とでも言うのか?有り得んだろ、この巫山戯た男が私と同等などと…認めたくはないッ!だが事実に変わりはないッ!
「なんや?まさか俺の思考が読めなくでもなったんか?まぁそれは無いかぁ、何せ神様なんやからなぁ」
「き、貴様ッ!私みたいな美少女をいじめて心は痛まないのか!」
「おいおい何言うとるんや?神様は万能やろ?こちとら普通の人間やで?人間相手に何言うとるだか…ほんまに神か?お前?」
クッ、この男はっ!どこまで私を侮辱する気なのだ!なぜ私がこんな目に遭わなければいけないのだ!泣くぞ!泣いてやるぞ!…クソ…なんだか目元が暑くなってきた…
「うっ、ぅうう私だッてッ…弱いわけじゃッないもんッ…強いからッ…神様だし偉いんだもんッ」
「…お主…何泣かせとるんじゃ?…」
「い、いや…俺とて泣くとは思わんかった」
「うぅぅぅ…もうやだぁ!神様やめるぅ!…」
やばいやらかしてもうた…まさかこの程度で泣くとは思わんで…あれか?こいつは精神年齢ガキか?軽く煽っただけでこれやとこの先が不安やな…とりまこいつの事は放っとくとして…この樹海を出るんが先やな、せやないとなんも話にならんさかい。樹海を出たら人里探すやろ?そんで冒険者的なやつになるやろ?まあなれるかはわからんけど、出来れば学園的なやつにも入ってみたいなぁ。やりたい事が多するぎるで、騎士科とか魔法科みたいなもんもあるんかなぁ?俺が読んだやつやと冒険者科言うのもあったなぁ、その他にもあったりしたらおもろいんやけど…まぁこれも全部、人がおったらの話やけど…そういうこと知っとるやつがおったらええんやけど…… あ、居るやん!ここに神が居るやんけ!千里眼的なやつあるやん!
「ん"ん"…なぁなぁ全知全能で天魔波旬を総べる絶対神様、ちょいと聞きたいことがあるんやけどええかなぁ?」
「な…なんだ?…また私を虐げるのか?」
「いやいやそんな事せえへんから、俺が聞きたいんはこの世界に人が存在しとるかどうかや」
「…人?居るには居るが…」
しゃあっオラァ!これで俺が楽しめることは確定や…あとはどんくらい居るか!多過ぎず少な過ぎないんが一番ええやけど…まぁそう上手くはいかんことはわかっとる、せめて国家の三つか四つはあって欲しいもんやけど…どうなんやろうなぁ?この黒騎士並のやつがわんさかわんさかおったら楽しめそうなんやけど。
「なぁところで、国家はどんくらいあるんやぁ?」
「国か?国は二十以上はあるぞ?」
「…へ?…はぁ"あ"あ"?!」
な、はぁ"?嘘やろ!?そんな、普通そんなないやろ!普通は多くても十程度やぞ!?どうなってんねんこの世界!そうなると人口はどんくらいおるんや!?この場所来るまでに二時間はかかっとるんやぞ?それも本気で走って!俺らが本気で走る言うたら音速余裕で出とるんやぞ?それで二時間やろ?例えば北海道の大きさが大体83.000k㎡やったろ?そんで俺らの速度が約430m/sや、それで計算するとだいたい………端から端まで520秒言うたところか?日本の大きさが37.8000k㎡で速度はそんままやと……2.400秒やから40分か?これでも全然足りんやんけ!もう分からん!もうええわ!この際面積よりも人口や人口ッ…
「おい神、この世界の人口はどんくらいや?」
「…人…口?…だいたい六十億は超えているが…これ以上細かくは分からないのである」
「ろくッ?!」
多すぎや…多過ぎるやろ?!もしこんな数の奴らに敵対されたらいくら何でもキツすぎるで!負けんことは無いやろうけど犠牲が馬鹿にならんわ!こら敵対せんようにしとかなあかんな、せやないと冗談抜きでホルストが崩壊してまう。そうなったら…ぁ"あ"クソがっ!さっきまでは那月に意地悪で報告せんとこう思うとったけど、こうなったら勇者やら魔王見っけたら那月にすぐ報告せなアカンなぁ…今の状況も報告すべきか?だが那月に報告しとんのがこいつらにバレたらどないする?殺すか?それとも生け捕りにするか?なんなら洗脳でも…いや利用すべきやな、今はお巫山戯の時間やない。どれだけこいつらに自分を信用させるかが重要や、全てを偽りで覆い隠す。
「…そうか六十億人か、思ったより居るんやな」
「そうかのお?案外普通じゃと思うのじゃがのお」
亮仙の事じゃ、何らかのの考えはあるのじゃろう。わしは考えるのが苦手じゃからなぁ、そこら辺は亮仙に任せるとするかの。それにわしは戦闘専門じゃ!これでもホルストでは五指に入っとるんじゃ!戦闘面はバッチ来いじゃ!とはいえ、こやつらを相手するとなると、ちと本気を出さねばならぬがのう…ま、敗北は万に一つも無いのじゃがな!
『フム、我が生きていた頃はもっと居たのだが…かなり減ったのだな』
「ほら、昔八大厄災の一角共が喧嘩したであろう?その時にかなり減ったらしいのだ」
『ほう、それならば納得だな』
「八大厄災?なんじゃそれは?」
「それは私が説明をしよう、八大厄災とはこの世界に存在する化け物の中の化け物だ。実力は魔王を遥かに凌ぐ程だぞ、そもそも魔王というのは魔の王であって、災害物や厄災獣とは別物なのだ。そして魔王は勇者の持つ力でなければ滅せられない、勇者の力とは実力関係なく突如与えられるものもしくは召喚されるもの。強者が勇者の力を持つ時もあれば弱者が持つ時もある、そんなあやふやな物だ。だから勇者より強いものは多くいるし、魔王よりも強いやつもわんさかといる。そしてその代表例が八大厄災と英雄王なのだ!ちなみに英雄王とは墜神を倒したもののことを言う。この英雄王は歴史上で三人のみだ、対して勇者は八十を超える、面白いものだろ?」
「なるほどなぁ」
ええ事知ったで、今の話で強者がどんなもんかが分かった。英雄王の実力は神を殺す程なんやろ?それなら俺らが負けることはまずありえへん、なんたってこっちも神を殺しとるんやからなぁ。それも一や二やない、星を消滅させる力を持つ神を十も二十も殺しとるんや。
『一応我も英雄王の一人であった、しかしそれもかつての話。今や我は存在しない英雄となった』
「どういうことや?」
『我が名はレグルス・グレイプニルという。かつて英雄王と呼ばれた存在であり、覇国の皇帝と呼ばれた者だ』
レグルス・グレイプニル、遥か古の時代に存在した国の騎士の王である。今やこの世界で彼の名を知っているものは数少なく、もはや名が消えるのは時間の問題とされる。そんな彼のいた国の名は、トゥラン帝国、神々との大戦に唯一勝利した国であり神々の天敵の巣う国とされていた。龍人、魔人、吸血鬼に人神そして鬼神、この五種族で成り立っている国は圧倒的な技術力、戦力を有しており決して滅ぶことの無い国と呼ばれていた。
しかし、そんな国はあるひとつ所として終わりを迎えた。そう、かつての八大厄災と神々が共闘しトゥラン帝国を滅ぼしに攻めてきたのだ。だが八大厄災や神々の思った展開とは違い、トゥラン帝国は思いがけぬほどの力を発揮した。結果としてトゥラン帝国は滅んだものの、八大厄災と神々は長きに渡る眠りにつかされた。
「そら強いわけや、そんな化け物国家の皇帝なんやから強かないと意味があらへんわなぁ」
『トゥラン帝国は実力至上主義であったが、一つだけ絶対的な決まりがあった。強きものは弱き者を守り、弱き者は強きものを支える。それが我が国の絶対ルールである』
「そらけったいな事で、せやけどそんなんじゃ内乱とかクソほどあったやろ?」
『いや、内乱は一度も起こらなかった。何故ならば我々には絶対的な繋がりがあったからだ、それは神々を滅する事、その使命を全うするまで我々は身内争いをしないことを決めた』
「そんな口約束よう守ったなぁ」
俺やったら絶対裏切っとったなぁ。だってその方がおもろそうやん?必死になってきたヤツらがひとつの綻びで絶望に落ちる、これ程おもろい事はないで?さてさてそん事は置いといてや、この先どうするかが大事やからなぁ。こいつらの話もそろそろ飽きてきた所や、さっさとこの樹海出たいんやけど…どうしたもんやろ?
「のぅ神とやら、お主名前はなんというのじゃ?」
「私か?私の名は千波句里華、神羅の神であり自然の王神だ。因みに王を関する神は、最高位神でもあるのだ!」
「そうかそうか、時に千波句里華よ。この樹海はどのようにして出るのじゃ?」
ナイスや月見!俺から質問しすぎるのもあれかやからなぁ、よくこのタイミングで聞いてくれたでぇ。この樹海から出られれば俺は自由の身や!
「ん?この樹海から出たいのか?それならば私に任せると良い!」
すると強力な突風が吹き木々が宙に舞う、そして次々と繋がって行き最終的には巨大な扉のような物になる。
「千樹門、ここを通れば樹海の外へ出られる」
「ふむ感謝するぞ千波句里華!」
「ああ、ところでお願いがあるのだが…良いか?」
「んなんじゃ?なんでも申してみよ!わしに出来ぬことは無いのでな!」
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《樹海の外なのだ!・その上街道だぞ!》
クッソこのロリババァちょっとは見直しかと思えばすぐこれや!なぁにがなんでも出来るや!巫山戯るなやほんまに!あの一言がなけりゃこいつら二人が着いてくることは無かったん言うに!
そう思う亮仙の後ろには満面の笑みの千波句里華が歩いている、黒騎士は相変わらずの様子で着いてくる。そして月見の表情は明らかに青ざめていた、まるでものを壊してしまった子供のような表情で…。
まさか千波句里華の願いがわしらとの旅じゃとは思わなんだ、正直そんな願いをされるとは想定しておらぬぞ。だいたいわしらについて来て何をする気じゃ?こやつら…まさかわしらの考えに勘づいたのか?!…いやそれは無いな、わしらの思考を読めるほどの実力をこやつらが持っているとは思えぬ。たんに暇しとるだけじゃろうな、まるで亮仙みたいじゃのう。
「ほんまやってくれたでホンマに…なぁロリババァ」
その一言に月見の体がビクンと跳ねる、それと同時に顔に滝のような汗が出る。
「…わ、悪いとは思っておるぞ?…わしじゃってこうなるとは思わなかったのじゃ…」
「はぁ、まぁええわ。こうなったもんはしゃあない、普通に旅を楽しもうやないか。な?」
「り、亮仙ッ…お主…う、うむッ!そうじゃな!旅は楽しんでなんぼじゃ!」
とは言ったものの、ホンマにどうしたもんか…月見が口をすべらすのは時間の問題や、その前に消すべきか?それとも…いやこっちは得策やないな、最悪俺が後処理せなアカンくなる。それだけはどうしても裂けたい、となると最終手段は…考えるのを辞める!こういう時はこれに限るで、無駄に思考めぐらせてグッチャになるよりも思考放棄するんが一番ええからなぁ。
「ところで、これからどこへ向かうのだ?」
「ん?ああとりま人里やな、そこで情報を集めるんが先や。てかお前らは俺らを詮索しないんやな」
『ソナタ等を詮索した所で、こちらには何の得もない』
「ああそゆことね」
ホンマにそうならええんやけどな、レグルスのやつは内心俺らん事を当然ながら怪しんどるやろ?千波句里華に関しては知らんけど…何となく那月に似とるしなぁ、何か隠してそうやし、要注意やな。もしこいつが敵対したらめんどくさい事になるんは確実や、そうさせんためにもこいつを丸め込まなアカンな。
つか道に出れたんはええけど、一向に人里が見えてこんなぁ。ホンマに六十億人も居るんかぁ?まさか嘘か?六十億人言うのは嘘で俺らを警戒させて本性を洗い出す的な…いや、こいつに限ってそれは無いなぁ絶対に。
「ん?なんだ?この音は?」
「…この音は…馬車やないか?!」
やっとか!やっと人に会えるんか!言葉はちゃんと通じるんか?そもそも金はどうする?いやそれよりもほんとに人なんか?小鬼的なパターンちゃうやろな?それやったら切れるで?けどそのパターンはようあるからなぁ、まぁせやったとしても少しくらい金はあるやろ。
そして亮仙たちの前に数台の馬車が現れる。馬車には紋章が描かれており、周りには白銀の鎧を着た騎士たちがいる。鎧にも同じような紋章が青く描かれており、謎の威圧感があった。
すると騎士のひとりが亮仙達に近ずいてくると、四人を睨む。それに嫌悪感を覚えたのか千波句里華が軽く睨みな返すと、騎士の乗っていた馬が倒れ騎士も馬から落ちる。それを見たほかの騎士たちは警戒心を強め、一台の馬車を強固に守ろうとする。
「何やっとるんやお前はぁ!」
「す、済まない!だがこいつらが睨んできたからなんかイラッときて!」
「だからって睨み殺すなや!」
「ご、ごめんなさあぁぁぁい!謝るから怒らないでぇぇぇぇ!」
ぁ"ぁ"あ"あ"ホンマにめんどくさいなぁ!頼むから馬車に乗ってるのが貴族とかはやめてくれよ?!もしそやったら確実に面倒事確定や!いや紋章ある時点でアウトなんか?!貴族確定なんか?!いやいやまだ商人いう可能性もある!そっちに賭ける!