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エピローグ

挿絵(By みてみん)

 父さん、母さんへ。


 あれから35年が経ったね。

 僕はこの月食の日が訪れる事を小さい頃からとても楽しみにしていたんだ。誰よりも。


 あれからすぐにマーヴィス法王が病死してさ、ダガーおじさんが法王になって、レスミーじいちゃんが王になったって聞いたよ。それから父さんと母さんはゼファーさんの家の近くで住み始めたんだよね。

 王族の父さんが城から出たのも僕が思うにきっと縫製ギルドの一員として働きたかったんじゃないかなって思ってるよ。ゼファーさんと一緒に縫製仕事に携わって、様々な服の仕立て技術を世界へ広めたんだよね。僕としても父さん達をとても誇りに思うよ。しかしほんとゼファーさんって、とても縫製技術のある人だったよね。さすが僕の師匠。

 僕も弟も随分ゼファーさんに色んな縫い方を教えてもらったなぁ。ちょっと勝気な人だったけど、根は優しいし、あんなに素敵な人が一生独身だったなんて、なぜだろうと未だに不思議に思うよ。見た目も悪くはなさそうだし、若い頃はきっと女性から人気があったはずだと思うんだけどなぁ。


 ほんとにあの頃は毎日楽しかったな。家族でたくさん笑った記憶しかないよ。

 父さんは僕達より、母さんをいつも心配してばっかりだったけどね。

 でもあの目が離せない母さんなら仕方ないなって、僕も弟もよくこそこそ話してたんだよ。


 リニアばあちゃんとレスミーじいちゃんもルディさんと一緒にこっそり遊びにきてくれたりして楽しかったな。

 あの二人は最後まで民達と触れ合いながら、国を少しずつ回復させていったんだよね。魔女狩りを即刻止めさせ、父さんが成長して帰ってきたことも民達に伝え、ブリッジ教の教えも正しくまた広め始めた。じいちゃん、ばあちゃんって僕らは言ってはいたけど、父さん達とそんなに年齢も変わらないからさ、僕と弟にとってはもう一組の両親のようだったな。


 ルディさんには剣技もたくさん教えてもらえてさ。流石騎士だなって思ったよ。世界で初めての女性騎士なんだってね。あれから女性兵士も騎士も段々と増えてきて、今では結構いるんじゃないかな。もう珍しいことではない気がするよ。先導したルディさんのおかげだと僕は思ってるんだ。ほんとかっこよかったなぁ、ルディさん。


 あ、ダガーおじさんもちょっと見た目は怖い人だったけど、結構優しくて僕一番好きだったかも。以外と冗談言ったりもするんだよね。内緒だぞって言って、色んなおもちゃを持って来てくれたしさ。でもすぐに父さんにばれて、甘やかすなよ、ってよく父さんから怒られてたよね。そんなダガーおじさんは「レスミー兄さんに怒られてるみたいだ」ってよくぼやいてたのを思い出すよ。なぜか嬉しそうだったけどね。けど、ルディさんと同じぐらい剣技が上手くてさ。僕も将来はあんなにカッコよくて渋いおじいさんになりたいな。


 僕は父さんから色んな事を学んだ。

 父さんの生まれ育った場所のこと、この世界の歴史や今までの出来事、そして偉大なひいおじいさんのことも。

 

 その話を聞いて、僕に同じ偉大な名前を付けてくれたこと、とても嬉しかったんだ。


 それでさ、覚えてる?

 父さん達が住んでいた世界が見たいっていつも僕言ってたよね?


 弟はそんな僕にいつも「やめとけ」と言って、止めていたけど、きっとここにはない世界が広がっているはずなんだ。

 なぁ、そうだろ? 見たいに決まってるじゃないか。だって未知の世界なんだから。


 いつも父さんが言ってたじゃないか。この世は広いって。

 父さん達がどうやってここへ来たのか聞いた時は鳥肌ものだったよ。

 それにさ、ひいおじいさんが未来からやって来た話を聞いた時は大興奮だったし、ずっと憧れてたんだ。


 きっとその世界はさ、父さん達がいた世界よりも、もっと発展していたんだろう? ここよりも遥かに科学も発達していて、文化だって、価値観だって違うはずだって、いつも父さん言ってたよね。


 そんな世界、見てみたいじゃないか。

 こんな機会、もう二度とないかもしれないしね。

 意味があるかなんて僕にはわからないよ。

 けれど、見たい、それだけでいいじゃないか。


 本当は僕さ、法王の役割があるんだけど、そこは王の弟に任せてある。一応それなりに器用だし、きっとうまくまとめられると思うんだ。僕なんかよりよっぽどしっかり者だしね。


 父さんと母さんが17年間育った世界。

 こっちで35年なら、『チキュウ』では595年経ってるよね。そんな『チキュウ』の今が、未来が、どうなっているのかワクワクするよ。


 この手紙もさ、もう届けようがないけど、僕思うんだ。


 あの夜空にきらめいてるどこかの星へ届くといいなって。


 そしたらさ、父さんと母さんにまた会える気がするんだ。


 あの世界へ飛び立つ頃に。

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