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連撃のシュウタ   作者: ゼルダのりょーご
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五十一話 山賊との再会①


 山賊たちが広範囲に渡り、軍勢で道行く者を襲撃するのには確固たる理由があったのだ。

 彼らもまた、奴隷商人に使われる身であった。

 奴隷商人たちの監視下に置かれていた人間の青年が一人、脱走を図ったのだ。


 青年の名は不明だったが、全身草色の軽装で華奢で優しい顔立ちだとの山賊たちの見解がそこにあった。その上、脱走の青年は闇の錬金術師の保護下により、脱走に成功した模様である。


 この世界で奴隷にされた者は、鉄鎖で魂を繋がれたも同然。奴隷商人からは何人たりとも逃れられない運命にあるようだ。なにせ山賊たちでさえ奴隷商人には容易に屈する始末だというのだから。


 しかし、奴隷商人から山賊たちに下されたこのクエストの内容は異様である。

 だが、「たかが奴隷一人に……」そのような愚痴をこぼす者などは居なかった。


 どうやら逃げ出した奴隷一人が重要なのではなさそうだ。奴隷が錬金術師に連れ出されたことに大きな意味があるようなのだ。

 青年の連れ出しを行った錬金術師の目的は、【闇の転生術】によるチート能力者の生産という何とも恐ろし気な目的だった。


 その目的の先にあるものが異世界シュートリアに大きな波紋を広げているのか。







 検問を張っていた甲斐があって、シュウタを見つけた山賊たちは、


「アイツ……例の小僧ではないのか?」


 前方の山賊が、後方部隊にも次々と伝令を促していく。

 威勢よく現れて、怯え切った行商人といえど二十人もの大人を庇い、一人で戦う姿勢を見せて来るのだから。そう思うのも無理はない。そこで少しばかりの挑発を加えると、鉄砲玉のようにあっという間に飛んで来て仲間を数体切り刻んだのだ。

 しかも自分たちが手にしていたサーベルを奪われてのことだった。


「いったい……いつの間に!?」とつぜん皆の視界から姿が消えた。シュウタのことは大勢で注視していたというのに。まったく記憶に残らない行動を取られ、その能力の成せる技に感じる焦りを押し殺しながら。


 すぐ確信に変わった彼らは、計画通りに一度はシュウタの身を蹴散らして抵抗するふりをしながら三百体もの犠牲を出して見せ、その場から退いていった。


 いや正確には退くふりである。

 シュウタが行商人に持ち掛けた金策により、遠からずその場に討伐隊が現れるので、シュウタもその手前で現れて自分たちを片付けようとすることは読めていたわけだから。


 能力者相手の計画的な行動、そしてその作戦は初心者狩りだったな。

 山賊たちは能力を見極めるためと相手を油断させるための行動だったのだが、元よりシュウタもその金策が目当てではない行動のため、一体どちらが命拾いをしたのだろうか。


 それにしても双方とも初心者狩りを実行しようとしているなんて……。





◇◇




 僕の名はシュウタ。



 例の山賊たちが山の奥に身を潜めていた。

 今日の食いぶちに在り着くために、改めて誰かを襲う会議でもしているのだろうか。僕たちの背丈を超えるほどの大きな木箱が積まれた場所にリンクと来ていた。


「シュウ……」


 リンクが頼り無さそうな声で、僕の背中に呼びかける。


「情けない声を出さないで、ここでおとなしく待っててよ」

「ほんとのほんとに銭を見せびらかすの?」


『YOUの心配事はそれですか?』、という顔で僕はリンクを見返した。

 一瞥のあと、


「大丈夫、どんと任せてよ! 奴らを逃がさない為の最良の作戦を君が教えてくれたんじゃないか。再確認でもしとくか?」

「えっと……まず銭で魅了して、腰を低くして、『さっきはごめんなさい、これで勘弁してください』的な発言で近づいて油断させて。残りの百体を一匹ずつ、ワンパンで仕留め切るんだね」

「う、うん。あ、それとリンクは耳が良いからもしも僕がピンチになった時のために、奴らが内緒で話すことに注意を向けて置いてね」


 作戦の再確認のあと、僕は、リンクにもまだ役目があることを伝えた。


「もちろん、注意は向けておくよ。……でも」

「うん?」

「シュウがピンチの時に……」

「なに? どうしたの」

「オレ、あの地獄の一丁目に躍り出るの……嫌かなって」


 それはまあ、ごもっともな意見ではあるが。


「ぷっ。リンクはやっぱり面白子供だな」


 僕が鼻で笑うと、


「お、面白子供って言うなぁ──っ!! オレは真剣なんだぞっ!」

「しぃ──っ!! こ、声が大きいよ。地獄の門番たちに聞こえちゃうだろ」


 山賊たちの溜り場付近の木箱の陰にそっと身を忍ばせていた僕ら。

 作戦の確認中につい感情的になり、リンクの声が周囲に轟いてしまった。

 僕らは緊張の面持ちで身動き一つせずに、そっと耳を澄ました。

 幸いにも、山賊の奴らがこちらの騒ぎに気付いた様子はなかった。

 2人でホッと胸をなでおろした。


「ご、ご、ごめんなしゃい……旦那さま」顔を真っ赤にして肝を冷やすリンク。

 旦那しゃまとの言い回しは、渾身の謝罪をかわいく振る舞って許しを請うリンクなりの、シュウタへの機嫌の取り方のようだ。


「落ち着いてよ、リンク。僕はそんなのとっくに計算済みだよ」

「計算って、なに?」

「忘れたの? リンクの姿は僕以外には見えないってことさ」

「そ、そんな仕様だったのね……オレ。そっかぁ」


 転生後は僕にしか会っていないから、まだ実感が湧かないのも無理はないのか。


「まあ、君の出番なんてないと思うけど。有力な情報だったらそっと傍に来てくれたら良いからね、頼んだよ!」


 若干、震えているリンクを木箱の陰に待機させて、僕は山賊たちの中心へと歩を進めて行った。





◇◇◇





「ああん? なんだボウズ? 地面なんぞ眺めて歩いて財布でも落としたのか?」


 いま確か、ボウズと言ったよな?

 あの時、ちゃんと時間を止めずに名前を明かしたはずなのに。

 奴らをボコしてから行商人を見送って、リンクを起こしに行った。

 その間、10分ほどで。

 リンクが目を覚ましてから彼と通じ合うまでに、更に1時間ほど過ごしたと思う。

 その程度の時間経過で、テメェらの身に起きた惨劇を忘れていやがるとは。


 これなら詫びる必要もない。

 わざとらしく手を滑らせて冒険書を落っことした後、所持金のページを開いてこれ見よがしに拝ませて見るか。

 別にそんな回りくどい手順を踏まなくても、楽勝なんだけど……。


 リンクが聞き耳を立てているのだ。

 しっかりと演技をして、ピンチに陥る演出を作らなきゃいけないんだ。


『リンクの冒険』という名の始まりのクエストを君の為に用意した。

 ふたりで最初に歩いたこの大地にそれを刻む為に。



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