四十九話 山賊たちの初心者狩り②
山賊たちが群れを成して、悩みの種をぶつけ合っている。
国が並々ならぬ問題を抱えている。そこに闇のようなものが存在していて、それこそが手下のいう矛盾点に繋がっているのだと、アニキ分は言いたいのか。
「お前らも知っているだろう。竜王亡き後のシュートリアの現状を」
「くっ。……あいつら目か。忌々しい魔法使いと錬金術師の野郎どもめ……」
「錬金術師どもが、闇に堕ちた女神と手を組んで、怪しい転生術を編み出したことで、守護神の魔力すら脅かす事態と相成った」
「だから、勢力のでかい奴隷商人の非道すら容認してるのか。なら俺達を買ってくれりゃあいいものを。な、アニキ!」
この世界には、かつて竜王という諸悪の根源がいた。
しかし、光の勇者に討たれてどこかに姿を消したのだ。
その後の世界に、シュウタは転生を受けてやって来たのだ。
シュウタとリンクが旅の目的として会いに行くという女神ルシル。
その評判は、あまり良くないようだ。
どうやら山賊たちは例の、闇転生のことを語っているようだ。
それは確か、他所の世界に行かず、チート能力だけを入手して再び同じ世界に生まれて来るというもの。過去の記憶も持ったままだ。その者たちを意のままに操っているのが闇の錬金術師というわけだ。
そして、その能力者の力は守護神たる、神々の存在をも脅かすパワーにまで発展しているのだろうか。
「オレ達は商人ほど頭が回らねぇから、大きな利益を国に治められねぇだろ」
「……俺達のが強いのに」
「そろそろ本題に入るとだな……。どうやら手配の小僧が錬金術師にそそのかされて、居なくなったらしいのだ」
「そ、それじゃ……アニキ。そいつ下手すると──」
「おうよ! 能力者ってのに化けちまったかも知んねぇのさ」
「お、俺達で勝てる相手じゃなくなってるんすか?」
「いや、冒険者ギルドにも籍を置く奴がいてな。転生直後なら魔力が小さいため、うまく立ち回りさえすれば、フクロにしちまえるってレベルらしいぜ」
「小僧も見当たらなくなったのは最近のことだから、化けて居るとしても……」
なんと、転生直後の弱点まで分析されているのか。
「だからよ、オレ達もオレ達の利点で戦えばいいのさ」
ニタリと口角を上げてアニキ分が言うと、
「おう、俺達の利点。クヌークの脅威を思う存分に堪能させてやりましょうぜ」
これは行商人の一団が襲われて、そこにシュウタが通りかかる、少し前の出来事になる。
「おっと、早まるんじゃねえよ。クヌークの能力を最大限に活かさなきゃならねえ。それにはちょいと策を講じる必要があるのさ」
「策? 力押しじゃ駄目なんすか?」
「敵さんはどんな能力か分からねえんだ、用心に越したことはねえだろ」
「いったい、どうするおつもりなんです?」
「ふっ、知れたことよ。初心者狩りってやつをな」
「おお、そいつは面白そうですね! ガキなのに生意気そうなのが現れたら、弱いふりをして調子に乗るだけ乗らせておいて、やられた振りをしてガキの魔力が切れるあたりで一気に逆襲っすね!」
「おうよ! お前ら、手を抜き過ぎたら怪しまれるかも知れないから適度にぶっ飛ばせや。ただ最初は勝たせてやるんだぜ! 度肝を抜くのはそれからだぜ」
なにやらとんでもない相談が成されていた。
初心者狩り……それは聞いての通りだが。
奴隷商人の手から逃げ出した若者がリンクのことなのか、別人のことなのかは分からないが。もうすぐここに、行商人の一団が通りかかる。当然のことながら検問を受けることになる。
やがて、そこで断末魔の叫びのような悲鳴が上がることになるのだ。




