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連撃のシュウタ   作者: ゼルダのりょーご
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四十七話 シュウタの検証③


 だが、今は目の前にある状況の打開が先決だ。


「君は身のこなしが俊敏なようだが──」

「武器のひとつも使いこなしたほうが、もっと有利に戦闘に挑めるぞ」


 初見時よりも、山賊たちが殺気立っている。

 そりゃそうだろう、大群の中の数頭といえども殺傷されたのだから。

 商人たちは荷車の傍で縮こまっていた。ならば犯人は消去法となるだろう。

 そもそも群れの中から尻尾で弾かれたのは、僕なのだから。

 そして、気軽に話し込んでいていい状況でもないのだが。

 

 商人たちのアドバイスは非常に有難い。

 だけど、自分が考えに入れる武器は初心者のソレでは物足りないのだった。


「武器は欲しいです。自分に合うものにめぐり会えていないだけです」


 僕は適当な返事を見繕って返した。


「そうだったか……それなら、こんなものはどうだ?」

「えっ」


 商人は僕の大好きなブーメランを惜しげもなく差し出して来た。

 話の流れから何となく武器の一つも貰えるのだろうかと察しは付けていたが。

 それはセラミックのように薄くて軽くて、頑丈さもあり、すぐ手に馴染んだ。

 カッコいい銀色のクロスブーメランだった。

 僕は胸の高鳴りを隠し切れなかった。


「うおお、最高っす! これは、ありがたく頂戴します! お代はあとで……」

「気に入ったか? 早速、装備して見なさい!」


 素朴な疑問が頭に浮かぶ。


「いや、もう手にした時点で装備してるのでは?」

「なぁに素人みたいなこと言ってんだよ! がはははっ」

「ゲホゲホっ」


 冗談は顔だけにしろと言わんばかりに、僕の身体を叩くオジサンの手。

 ポンと肩を軽く叩いたつもりの商人の腕力に対し、僕の華奢な身体が耐えきれず器官が圧迫され、思わずむせてしまった。


「手に取るのは入手にすぎない。装備ってのは、冒険書が認識してなんぼだろ」

「クヌークの尻尾アタック喰らったから、きっと動転してるのさ」


 商人たちが勝手にそう思い込んでくれるのは正直助かるけど。

 なるほど装備には、冒険書の認識が必要だったのか。

 つまりは、『エクイップ』(装備)とかを頭でイメージするのだな。

 リンクが言っていたイン、アウトだ。

 自分の装備品だと認識していなければ、冒険書にダメージや状態異常の反映が成されるわけがないよな。さっきまでは素手だったから、気付きもしなかったが。


 そしたら例によって冒険書に武器装備欄が開設されるって分けだな。


「──エクイップ」


 今知ったばかりだが、知っていたかのように発声して見せた。

 腰にぶら下げた冒険書に振動が入ってきたのを感じ取った。


「良かった。……俺達は窮地を救われる側だ、タダで持っていきな」


 代金など受け取れないと彼らは言い放ってきた。


 モチベーションが上がった所で再び、山賊たちを蹴散らしに行く。

 商人たちの親切の押し売りが長引く心配があった。

 魔物に不意打ちに遭わないように一応、時空スキルを施して置いた。

 商人たちを含んだ範囲でこれらの会話は、高速に処理されている。

 もっとも商人たちにそれらを感知できるはずもなく、普段通りの時間軸で動いていたことだろう。


 敵は僕らのやり取りの隙に付け入ってくることはなかった。

 僕がスキルで高速化している間、周囲には逆の『ディレイ』(遅延)をもたらせているだろうことは高速移動しながら僕も薄々気付いていた。それも含めて、出来るだけ早めに検証をして置きたかったのだ。


「せいやぁ──!」


 気合と共に再び大地を蹴って、ジェットのようにかっ飛んでいった。

 商人たちはヒューヒューと指笛を吹くなどして、エールを飛ばしてくれた。

 次第に、握り拳を高く上げ、声援の度を増していった。


 山賊とクヌークを同手順で150匹ほどまで片付けて置いて、残りの50匹セットをリンクのために取っておきたいのだ。それこそ僕が危険を顧みず、ここで戦いを起こす真の理由でもあるのだ。


 その後、敵に気付かれずに近づいた時点でやつらの寝首を搔くように、ばっさりと首をはねて次々と仕留めていった。もちろん、素手では出来なかったことだが。

 銀のクロスブーメランの切れ味が早くも炸裂してくれた。


「爽快だぜっ!」





 意図しての出会いではなかったが、危機的状況に現れたシュウタに極上の武器を提供した商人の一団。ブーメランは冒険書に装備品として認識されると、ぶん投げても、しっかり手元に戻る。投げる武器ではあるが、短剣のように至近距離で切り付けることも可能だ。

 それにより、獣人の首は切り落とされ、あっと言う間に敵軍を怯ませ退けてしまった。山賊達はシュウタに向けて、降参までは宣言しないものの商人からは手を引くことを伝え、彼らは山奥に散った。


「……退けたというのか。ホントに生きて帰れるんだな」


 商人達は大喜びだ。シュウタの元に駆け寄り、抱擁した。

 感謝の気持ちを伝えると、シュウタから、ある相談を持ち掛けられた。





 商人たちには大きな街へ行ったら、ギルドへ被害届を出すように頼んだ。

 そうすれば、この規模の討伐クエストが発生するだろうと。

 そしてすでにその半数以上を狩った僕に報酬がでるはずだから、礼には及ばないこと。


 さらに今回、商人たちが被った商品の被害額もそこから保証されると告げると、彼らは大喜びで頼みごとを引き受けてくれたのだった。


 商人たちはなるほどと賛同してくれて、僕もある程度の稼ぎにもなるだろう。

 だが、僕の目的は金策ではないのだ。

 この状況をあることに利用したいのだ。むしろ金策などいつでもできる。


「ところで、残党を仕留めないのはどうしてなんだね?」

「それは、討伐クエストを受ける冒険者が危険度を問うからですよ」

「うむ。危険ならなおさら仕留めておけば、君の更なる稼ぎにもなるし。討伐隊の負担も軽減されるのではないか……」


「だからこそですよ──」



 僕はその時、彼らの疑問符にこう答えたんだ。

 ギルド所属の冒険者が危険度(リスク)を問えば問うほど、ギルドからの報酬は跳ね上がる。

 

「だって、クエストのランクが高くなったほうが、もっと得じゃないですか」

「こりゃ一本取られたわい。──戦いを主とする冒険者が一枚上手だったか。わっはっは。助けられた上にうまい稼ぎ方を教わってしもたわい。わっはっは」


 残党の件も含めて、多くをすでに討伐済みであることもギルドには伏せておいてもらうのだ。

 商人たちの話では、CランクからAランクになるらしいと判明した。


 このことは偶発的に、一石二鳥になっただけで。

 どの道、僕はリンクを連れて再度ここへやってきて、残党を残らずボコしてやるつもりでいる。

 だが今は、全滅させてはいけないのだ。

 考えあってのことなのだ。


 その考えは、死神の前で彼と出会ったときから僕の頭の片隅にあったものだ。





 さて、これで本命の準備が整ったぞ。

 草原の窪地で爆睡中のリンクを起こしに行くとしますか。


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