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連撃のシュウタ   作者: ゼルダのりょーご
33/51

三十三話 夢の中の終焉 

 《連撃のシュウタ》 33


 シュウタがショウタに向けて情熱的な台詞を放った。

 シュウタは出会いのお礼だと大きな声で涙ながらに言い残し、去って行った。

 ショウタにしてみれば、不本意な行動で理解に苦しむ。

 何故、シュウタの犠牲でオレは蘇らねばならぬのかと。





『ほう……! これは予期せぬ出来事だったな。シュウタが進んで死を選んだ。私にも最早どうする事も出来ぬわ。一乗の光とは、悟りの境地を開いた尊極の生命状態の事だ。この時点でシュウタはすでに成仏の境地に達した事になる』


「…………」


『最早シュウタにとって、現世に何の未練もない証拠だ。粋な台詞を残して旅立ちおったな。ショウタよ、シュウタの心意気を無駄にするでないぞ! では、そろそろ時間がお前さんを迎えに来た様だ』


 心の友と決めたショウタの為なら自分の命も惜しまない。

 それは決して自己満足では無かった。


 シュウタはショウタと共に歩んだ道のりを心の底から楽しんだ。

 ショウタこそが自身の見つけたかった心の財であり、それを輝かせる為に逝けるのなら本望だったのだ。


 その事をこの短い旅路の中で悟り、心はすでに決まっていたのだ。一片の悔いも残さぬ様にショウタへ全力で思いをぶつけた。


 シュウタの流した涙は別れの悲しみから来るのではなく、歓喜のあまりに自然に溢れ出たものだった。


 それ故に、自分の身体と魔法の行方を心配し、死神に訊ねたのだった。


 

「──バカ野郎が──っ! バカ野郎がぁあ────っ!!」



 ショウタの心は、真っ二つに引き裂かれる思いで揺らいでいた。

 必死に涙を堪えて、劫火に焼かれて今にも朽ちて消えゆかんとする、シュウタの身体に駆け寄って、抱きしめてやりたかった。強く全部抱きしめてやりたかった。


 そして同時に問い詰めてやりたかった。


 何故だ? 何故オレに一言の相談もなく、こんな真似を、と。


「なんでだ!? 新しい魔法を使う時はいつもこのオレに相談すると固く約束した筈だぞ! シュウタぁああああ!!」


 ショウタにとってもシュウタは深い情愛で結ばれかけていた大切な存在だったのだ。


 その大切な存在を失ってまで、掴みたい幸せなどは無い。

 戻りたい世界などは無いのだと、地に拳を叩きつけながら、苦渋の涙に濡れていた。


 そんなショウタの心情を察してか若き死神が、彼を諭す様に述べ始めた。



『──そんなに気を落とす必要は何も無いのだ、ショウタよ』


「あ、アンタなんかに何が分かる! 人間として華やかに青春を……これからって時に、オレなんかの為に。折角元の世界で楽しい人生を見つけ、あんなに嬉しそうに心を弾ませ、ときめいていたくせに。恋焦がれていたアオイとも結ばれていたかも知れないと言うのに。──シュウタがナオの新しい友人ならオレも安心して永眠できると思った。

 こんな形でシュウタとサヨナラなんて、オレだけ生き返るなんて在り得ねえ話だぜ……」


『──ショウタよ、分かっている。私にはお前の怒り悲しむ心が痛いほどに分かっているのだ。しかしな、シュウタはすでに他界したのだ。


 お前の様に息を吹き返す幸運が元々なかったのだ。


 語らなくてはならない様だな、ショウタよ。事の真相を』




──────────◇



(運わるっ! 結局、初めから僕、死んでるじゃんもう!


 幸運が無いとはどういうことですか!? ショウタは乱された心を必死で整えて、死神の話に大人しく耳を貸そうとしていた。死神の前では不思議と穏やかな表情を見せていた)




『ショウタよ、良く聞くのだ。お前も知っている通り、ここは人間界でもなく、天国でも地獄でもない。三途の川の手前だ。今そこを渡って天国に行ったのがシュウタだ』





(シュウタが天国に行った。その死神の言葉は不思議な説得力に満ちていた。ショウタは己の悔しさや悲しみが癒されていくのをしみじみと感じていた。まだ続く死神の話に自然と耳を傾けていた)




『ショウタよ、先程も言った様にシュウタはすでに成仏に至ったのだ。それで魂の行き着く先が決まったのだ。お前の疑問点は心得ておる』


「…………」


『なぜシュウタがお前の身代わりの様に死に、お前が生き返されるのかだが、シュウタの自殺の結果は「死」が確定していたのだ! そこがヤツの運のない宿命だったのだ。しかしショウタよ、お前の選んだ死は、ナオトの為であった。しかしお前にもナオトにも誰かを生還させられるだけの大きな魔力を有しては居ない事は先刻承知のはずだ』


「…………」


『私は生死を司る死神だ。少し未来を覗けばシュウタの魂がここへやって来る事が容易に見える訳だ』


「──……それはどういう?」




(死神の弟子だったにもかかわらず、ショウタには死神の今の話は飲み込めては居ないようだ)



『そのシュウタの魂もどの道、現世に未練を残したまま成仏のしるしが無かったので、「死」は確定していたものの、私がお前の行く末の為に利用させてもらったのだ。──ショウタよ、お前もシュウタの持っていた高魔力には気付いていたな。私が未来を覗いて探した魂はその目的だ』




(お? 竜王並みの僕の魔力を見つけて、ショウタを蘇生させるために、掛けがえのない友達になる様に仕組んだのだな。自殺者の行く末って悲惨だよな。死神にいいようにこき使われて)



『ショウタ、生き返ったお前の身体をオノノキの家に送って置いたので、もう引き取ってくれぬか』


「オレを生還させるためにシュウタにウソの夢を見させたのですか?」


『ショウタよ……そもそもシュウタもお前も、現世に戻したと言う所からがウソだったのだ。シュウタと過ごした日々の全ては記憶の旅だったのだ』


 


(生き返れたと言うのにいささか疑問が残るショウタが死神に訊ねた。

 死神は語った。

 シュウタを今一度現世に戻すという話自体が死神の作り話だと。二人には、シュウタの生前の記憶の中にある、いじめさえ無ければまだまだ生きて居たいという願望の中で、二人をあたかも現世に蘇らせたと、死神の力で錯覚させていた。

 二人はシュウタの記憶の中で見たい夢を見ながら旅をしていただけだと。ハヤトたちとの抗争も、蒼たちとの交際もナオたちとの出会いも、現実には何も起きては居なかったと説明した。全ては死神が二人の魂を本来、行き着くべき場所に送り届ける為の死神の図り事だったのだ、と)


「──単なる夢幻のできごと?」



(ショウタは冷めた目で死神に問う。これまでの事は単なる絵空事かと)



『私が仕組んだ夢の中のたびと言えどもシュウタの考えた事や行動はシュウタの意思によるものだ。記憶の旅でも二人が辿った姿は真実の出来事であり、真実の結果だ。シュウタは旅の最後に悟りの境地を開いた。もう己が生きて現世に戻れない事実と、ショウタがまだ生きて戻れる事を知覚したその時、ショウタに向けて、あの様に声を大にして心の内なる想いを叫ばずには居られなかったのだ』


「…………」



(ショウタは複雑な表情で死神が語る口元に目をやっている)



『シュウタは悟った時、己に魔法や体などが元々無かった事を知った。しかしそれでは私の思惑が外れる事も悟ったのだ。私の思惑……それは、ショウタに生きる希望を与える事だ。ショウタだけが生き返る負い目にお前が苦しまぬ様にな』


「そ、それでは、シュウタも一芝居打ったと言うのですか?」


『いいや、そうではない。あれがシュウタにできるお前さんへの最後の友情の贈り物だったに違いない。そうは思えぬのか、ショウタよ……』




(この死神の言葉は、不思議とショウタの胸に温かく差し込んで来た。気が付くとショウタの頬には熱い熱い雫が溢れ、伝っていた。先程までの悔しい気持ちとは違う事はショウタが含む笑みで、この僕にも分かった)



 「シュウタは旅が終わって悟り知ったんだな。自分の死が確定している事に。それなのに、その命が燃え尽きるまでこんな自分の事を気にかけてくれていた。オレは何も気に病まずにナオトの元へ戻って良いんだな」



(流し切った涙に「生」への希望の火が灯った。ショウタの瞳から迷いが消えた)



『良かろう。これで私の役目がはかどると言うものだ。早く元に戻ってオノノキ一族の使命に目覚めるがいい』



(元の世界へと、死神に申し出た。ショウタの心に友情の虹の橋が懸かる。めでたしめでたし? 待て待て、ショウタも妖精だったの……? 妖精はオノノキ一族。オノノキ神撃とか言っていたな。死神はこの後、さらに妖精のリンクを僕に押し付けているのだけど、転生後の世界でもリンクだけが良い思いをして、僕はリンクの良き人生の踏み台にされるのかな。魔力が絶大だろ僕? その辺のこともっと詳しく語れよ、くそ死神め!)




『ショウタよ……私の今の声では気付かなかっただろうが、お前さんの心には届いた様だな。ショウタよ……二人が現世に立ち戻った所からは実はあれが真実だったのだ──』




(うわ、死神の独り言か? ビックリした、僕が傍にいるのにまだ気づかないのか? この夢の終わりはいつなんだ。しかし現世に戻ったのが真実だと? なぜショウタには真実を教えないのだ)




『確かにシュウタの死は確定していたが、シュウタには暫くの猶予を与えたのだ。魔法も与えた。二人は、桃ノ木シュウタとして現世に生き返ったのだ。私は生死を司る神だ、ここのルールというのも私次第だ。だが、あの様に言わねばショウタが戻りたくないと駄々をこねると知っての上での事だ。許せ、ショウタよ』



(つまりは、ショウタは最初にここへ来た時も、きっとわがままを言って死神を困らせて居たんだな。記憶を取り上げて元の世界に戻れる手配をしなければ仕事がはかどらないから。オノノキの使命とかは知らないが、全部死神のおっさんが一人で仕組んだシナリオだったのかよ! 自殺なんて最低の罪を犯した僕が言うのもなんだが、後どれぐらい罪を償わせられるのか……)




『そして許せ、シュウタよ』



(え、僕にも謝るのは何故?)



『シュウタも、もう少し現世で幸せを嚙みしめていたかっただろうにな。』



(まあ、それはあるな。でも長引くほど未練が増えるって言うか……)



『大好きな花園アオイにサヨナラを言わせてやりたかったがな。シュウタには、その後願った通りの天国に行かせてやった。だからもうシュウタは本望なのだ。この私が言うのだから間違いない……フフフ』




(なんで、おっさんにそんな事、断言できるの? 僕が本望だったかは僕にしか言えない事だとおもいますが。ま、願いの天国はチート転生の事だろうから、感謝してるよ。だから僕の居ない死後の世界で好きに言ってれば良いさ。──二つの魂と精神の行きつく先を一人静かに見守って、唇の片端を上げ、不敵に微笑を浮かべる死神。……そこ笑うところ?)



『いつだったか聞いたことがある。自殺をすると天国には行けないと』



(初めて会った時も言っていた言葉だ。死神の座右の銘か何かか?)



『本当だった様だ……。だから私はここに居る…』



(何を言っているんだ。黄昏時に感傷に浸る癖でもあるのか?)



『シュウタは自分の天国を見つけ、天界へと昇った。ショウタも一度死にかけたが、その後に予想外の贈り物を受け取り、生界へと舞い戻っていった。ショウタも寿命が来れば再びここへやって来る──』




(それはそうだろうな、人間誰しも寿命があるもんな。そんなことを感慨深く死神のアンタが語るのが、なんだか滑稽だわ)



『──その時こそ私は、ショウタにこの素顔を見せられる。その時が来るのを楽しみに待って居るぞ!』




(そう言うと、死神は微笑みながら、その右手で自分の左頬を掴み、顔の皮をズバッと剝ぎ取った!

 え、ウソでしょ!? 止めてそんなキモい事! 死神は流血するでも無し……と言うよりその顔は! な、何で? 一体どうなっているの?)







 死神の表したその素顔はなんと、 "桃ノ木シュウタ" のものだった!!


 


(し、し、死神は僕? 僕が何故、死神なんだよぉおおおおおおおおおおお!! 僕は、僕は、竜王じゃなかったのかよぉおおおおおおおおおお!!!)


読んで下さってありがとうございます。

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