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連撃のシュウタ   作者: ゼルダのりょーご
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二十二話 リンクはおりこうさん②

 ──リンクはおりこうさん②──




 ◇




 シュウタさんが、お目覚めになるだろう朝までには時間がある。

 オレとしては、向かってほしい街があるんだ。

 向かいたくなるだろと予想している大きな街への地図を描いて置いた。


 小さな町も、ひとつ記して置いた。


 さっきシュウタさん、雄叫び上げていたよな。

 人間関係が下手でこっちに来たんだろうなって、オレは考えている。


 だから、こじんまりとした町へも行くかもしれないと記したのだ。

 人口は少人数の村レベルの意味を込めて、L1と横に書き加えておいた。


 大きな街の方には、盾と武器のマークと服屋を連想できる絵を記入した。

 

(あまり、くわしく書き込まない方が、早く行って確かめたい気分になるか)


 いやはや、オレうまく描けすぎでしょ。

 冒険者なら、一度は歩いて見たいと噂のゆるいS字の一本道。

 スパーンとカッコ良く描けすぎでしょ、これ。



 カタン……!。



 えっ⁉ まさか……シュウタさんが起きているのか。

 オレは耳が良いんだぜ。


 かすかな音と気配でこっちに出て来るのが分かった。

 よし、ソファーですやすやと眠りこむ、可愛いぬいぐるみテディ妖精(リンク)と洒落込むか。


 いたずら好きもあるが、かげで努力を惜しまない所をどう評価してくれるのかを確かめるチャンスだと、瞬時に感じたから。


 だって旅人がよく言ってるんだ。


 妖精を見つけたらチャンスだぞ、って。

 旅人いわく妖精は【チャンス職人】という素敵な存在なのだそうだ。

 きっと色んな人々にチャンスを振りまくためにいるのが妖精なのだな。


 今は、オレがチャンスをつかむ時みたいだな。





☆☆☆





「──うん? なんだ、リビングは明かりがつけっぱなしじゃないか」


 転生した初日から、あんな夢にうなされるとはな。

 おかしな寝言とか聞かれてないと良いけど。


「しかし、あの夢は生前の世界だったが、記憶にない体験だった。もしかしたら」


 死神の言っていた生き返るとは、このことだったのか……。


 転生後の夢の中に生前の舞台があった。

 そこに魔法使いのショウタも現れた。


 魔法使いの味方を得て、復讐劇を展開していたみたいだけれど、こうして途中で目が覚めてしまったな。


 目が覚めてみると、思い出せるんだ。

 死神が語る天の声も、ショウタの心の声も。


 現時点での転生前の要点をまとめると、僕は竜王という存在らしいが、その詳細は分からない。それとショウタは、オノノキという姓で死神いわく夢の世界のことを"戦記の空"と名付けていた。


 夢の中では死後の世界での、死神とのやり取りも全部含まれていた。

 これらの全てを死神が意図して見せているということで良いんだろうか。

 そこは、おそらく夢の続きを見れば分かるようになっているのだろう。

 そして目覚めると転生後の世界をリンクと進めている。


 まとめた要点は、3つ。


 ・僕は生まれながらにして竜王。詳細不明。

 ・転生前に見たもの全てを含めて"戦記(オノノキ)(ソラ)"と呼び、夢の続きへ行く。

 ・リンクと進める異世界シュートリアも並行する。


 「転生への導入が手荒というか、とりあえず生き返りの告知はしておいたから怖い目にあっても恨むなよ」


 といった所なのか。


 夢で見る出来事に告知を入れる意味はよくわからないけど。

 死神は、僕に見聞きさせたい何かがあるはずだと感じている。


 それはきっと、リンクのことも同じはず。


 リンクは、リビングルームのソファーで寝ると言っていた。

 窓の外に目をやれば、夏の午後7時すぎだな。

 空の色がねずみ色だが、まだほんのりと明るかった。


 気付くと、窓を開けて外の様子をながめていた。

 空模様が気になったんだ。


「む、ひと雨来るかもな」


 強めの風が吹き込んできて、白いレースのカーテンが僕の肌に張り付いていた。

 カーテンを指先で整えて直すと、閉めた窓を背にして、ソファーとテーブルの前に戻ってきた。


「どれどれ、リンクはどんな顔して(とこ)についたのかな」


 可愛らしい寝顔を見てやろうと覗き込んだら、口元がほころんで、やけにニンマリしている。

 それは昼間に見せてもらったドヤ顔となんら変わらなかった。


 いったい、どんな夢を見て居るのやら。


「おや、テーブルの上のメモに何か書き記してあるな」


 リンクがぐーすかと寝息を立てている対面のソファーに腰を下ろした。


 彼が気を利かせて、これからの旅路に備えて書いてくれた様だ。

 ちょうど大学ノートくらいの大きさの紙で縦向きに書いたようだ。


「これは、街へ行くための地図の様だな。なかなか鮮やかに描いてるね」


 などと()めるような事を言ってみた。

 眠っているとはいえ、大きな耳をした彼がすぐ傍にいるからな。


 悪いようには言えないからな。


 黙って静かに見てもいいけど、彼のデカ耳がもしも夢の中の音声を聞きながら、夢の外の音声も聞き漏らさない高性能だったらと、出会った時からそれを試したくてウズウズしていたんだ。


 メモの右下の余白に彼のサインが入っているのが見えた。

 これは、リンクが書いたもので間違いはないとだろう。


 そこには「チャンス職人、リンク」と書かれていた。

 はて? 妖精がサービスをする時の新手のジョブか何かだろうか。

 僕にとっては、こういうのが可愛い要素なのだ。


 ますますチャンス到来の予感! 君のおかげだよ。


 僕は臆病なせいもあって、頭の中であれこれシミュレートするタチでね。

 そう言えば昔、クラスの女子たちに囲まれた時に「澄ましてるけどぉ、シュウタ君って案外ムッツリなんじゃない?」と言われた時は軽く傷付いた事があるけど。


 今思えば、そういうのが僕の性分なんだ。


 メモの左下の端っこに家のマーク。

 そこに子供の笑顔がふたつある。

 ここが僕らの居るのコテージだな。


 右上の端っこに大きめの街かな、その間を斜めに大胆なS字の一本道がスカッと勢いよく引かれていた。


 彼は意外と豪快に絵を描くんだな。地理の幅も広いのかな。

 

 「地図の真ん中の左手に小さめの町が見えるね。何だ? この小さい記号のようなものは……、『L1』とだけ書いてあるようだが」


 小さい町の絵の横っちょに、L1とあった。

 エルイチ? って、あのエルイチのことか⁉

 僕の頭上には、ビックリマークがぴょこんと浮かんでいた。


「だって、エルイチだろ。」


 リンクがわざわざ僕に知らせる為に書いてくれたのなら、もうアレしか無いじゃん。


「LRボタンのことだな、これ。エルは左手の人差し指が当たる場所だ。要するに──」


 うん? 


 リンクが大きく寝返りを打ったので言葉が途切れてしまった。


 僕の身体が条件反射で忍び足をしていた。

 思わず、そっと寝息の確認作業をしてしまったのだ。


 良かった、スヤスヤと眠っている様だ。

 リンクは今、ソファーの背もたれに顔を向けて眠っている。

 対面のソファーに座り直して、地図を眺め直す。

 こちらの目からはリンクの丸まった背中だけがうかがえる。


「要するに、エルイチとはゲームのコントローラのボタンだ。ということは、この世界にもゲーム機がある!と言いたいんだな。そしてゲーム屋がある町がここだという意味になるな」


 S字の一本道の中腹を左手に行った先にゲーム屋の町があるんだな。


「そのうち、L2、R1、R2も応用したメモを取ってくれたら嬉しいな」


 可愛く誘ってくれるよなぁ、


「こんちくしょうめ!」


 この町に行けば、LEDモニター的な感じの物もあるって事かよ、


「こんちくしょうめ!」


 彼を罵っているわけではない。

 喜びで胸が躍り出して、つい口から出て来てしまったのだ。


 ソファーの上でクッションを抱きしめながら、小声で浮かれて居た。


「チャンス職人サイコー! あさイチで出かけような、リンク」


 気持ち良さそうに眠っている傍で、お騒がせしてごめんなさい。

 君の睡眠の邪魔をしたつもりはないから、どうか目を覚まさないでくれ。

 さっきのドヤ寝顔は、このせいだったか。


 リンクはおりこうさん。


「僕も、このソファーで休むことにするよ。君のそばに居れば楽しい夢が見られそうな気分になってきちゃった」


 自分の部屋に戻ると、戦闘ばかりの煙たい景色に吸い込まれそうで気分が重たくなるから。


「地図は失くさない様に、僕の冒険書にしまっておくよ、おやすみリンク」


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