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連撃のシュウタ   作者: ゼルダのりょーご
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十八話 戦記の空⑧

《連撃のシュウタ》 戦記(おののき)(そら)



 (きた)る日にそなえて、今日も魔法のアイデアをショウタと考える。

 いつも困難に直面するとショウタといかに魔法でハッピーになれるのかを。


 たくさん過ごした日々の二人のやり取りを全てどこかに細かに記録していたわけじゃない。

 だからショウタのことは、出会った時と別れの時の衝撃が一番胸に残っている。



 ◇



「ところで新魔法のカナデールは、ナイスアイデアでしょ? 音を(かな)でるところから名付けました。つむじ風に舞う砂(けむり)を見て(ひらめ)きました。


 風はいろんな物質を運んで流れていく。


 その目には見えない細かい物質を「いけにえ」にして、思い通りの効果音を作り出し相手に聴かせるんだ。時には爆破音、時にはパトカーのサイレン。音速ヘリのプロペラの羽音(はおと)を大迫力のボリュームで耳元に急接近させたり。


 えへへ。楽しみ、楽しみ。ワクワクするね、ショウタ!」





 ──これから4校の不良の軍団と決死の戦闘に、たった一人で乗り出すというのに(ずい)分と気分が浮かれている様だ。よほど新魔法の効果に期待しているみたいだな。


 いや魔法使いのシュウタとともに過ごすようになった死神のオレの気分が弾んでいるのだろうな。


 オレは死神の弟子だが、魔法を自在に生み出し使うことができない。


 なぜかならば、死神とは(しば)しの間、死者と行動を共にし、魂の行きつく先を見届ける役人のようなもの。

 しかしながら人間には魔力があり、中には途方もない魔力の持ち主がいるのだ。


 それが君だ、シュウタ。


 膨大(ぼうだい)な魔力の持ち主が、目の前に現れると神レベルの存在でも、(おどろ)戸惑(とまど)うものなのだ。


 ()()()()()()()()()()()()()


 そのような人間の存在を神々の世界では、元来、【竜王(りゅうおう)】と呼んでいる。


 竜王クラスの魔力(しゃ)が、その(チカラ)の使い方すら知らずにただ目の前を通り過ぎ、他の世界へ行く。それはあまりにも、()()()()()()()()()()()


 だから師の死神は使い物になる可能性に目覚められる様に、()りもしない理由をつけて彼を現世(うつしよ)へ戻したのだ。魔法使いとしての経験を積んで(いただ)くために。

 いつか(おのれ)の内に眠る破壊的な魔力に目覚めてくれれば良いのだ。


 それがその世界にとっての、破壊であろうと救いであろうと異世界の神々は、下等な死神の我々ですら、「よくやってくれた、神の名をくれてやっただけの事はある。褒美(ほうび)をとらせよう!」と、ご称讃(しょうさん)くださるであろうと。


 そうなれば師匠は昇進したも同然だ、オレもきっと恩恵にあずかれるはず。


『グヒヒヒヒ……』


 だが、彼に引き合わされて以来、ずっと彼のことが(うらや)ましく思えてならなかった。


 オレに(ゆる)された能力は、声の(ひび)きの向きを変え、思考を同行する死者に読ませなくすることぐらいだ。今オレの声の響きは外側に向けているため、シュウタには聴こえていない。


 外側に向けた状態で周囲に人間がいれば、その者に聞かれてしまうだろうが、ここは彼の部屋で他に誰もいないので問題はないが──



「ショウタ、なんて笑い声をもらすんだよ。死神っていたずら好きだよな」


『あはは、そう言うおまえだってヨダレがでているぞ! あははは』



 ──おっと、あぶねェ。オレとしたコトが。



『音の効果とは、意外と人の注意をそらすものだ。良い発想だと思う。他にもいくつか考えたようだな』


「えへへ。日向ぼっこから考案したボッコボコに、鏡に映る自分を見て考えたマルデターニンなどです」







 ──そんなワクワクの毎日を過ごし、ついに決戦の当日はやって来たのだった。


 その前日は、アオイとのデートの日でオレとシュウタが痛い思いをして作った、可愛い子犬の顔が彫られた金貨のペンダントをプレゼントしていた。

 

 アオイは喜び、好感度は増し、二人の距離はグンと縮まっていた。

 別れ際には初めてのキスをしてもらっていた。

 シュウタ、オレのおかげでもあるのだぞ。いつか、どこぞの高貴な神々によろしく伝えてくれよな。


 そんなドキドキパワーを胸に今日という日を迎えたのだった。


 決戦の場所。

 地元の不良少年たちから鬼河原と呼ばれる古くから決闘の場として有名な広大な空き地。

 普段はお祭り行事にでも活用されているのだろう。


 午前8時頃だった。

 私服姿の少年たちがゾロゾロと集まって来ているでは無いか。



「……」



 その光景にシュウタは一瞬、飲み込まれそうになって絶句した。


 それはそうだろう。

 シュウタの天敵だったハヤトたち三年生だけで50人は居たわけだから。

 単純に一年から三年で三倍の百五十人が、1校の不良の総数になる。


 ふじ本中学校からはシュウタひとりだから、残る4校で総勢600人()のケンカ好きの者たちが一堂に(かい)していたわけだから、シュウタが息を吞んで立ち尽くすのも無理はない。


 これだけのケンカ祭りだ、もっと別の地域の学校の不良たちもゾロゾロと見物に来ているだろう事が容易に予想できる。


 シュウタには、誰がどこの生徒かなんて見当もつかないわけだ。

 ひそかに援軍がいても分からないコトになる。

 

 その中央に朝礼の時に先生が使うお立ち台があった。

 上にスタンドマイクが立てられているのが見えた。

 スピーカを通して聞こえて来る地鳴りのような声があった。


 大きな声であいさつをし、怒涛(どとう)のような号令をかけ、各校の不良たちを各々の陣に整列させている代表の者が居た。


「……」


 シュウタが駆け足で近寄ってみると、


「あ、あいつらだ……」


 どうやらこの間の例の4人の総番たちのようだ。

 すでに何らかの準備に入っている様子だった。


「──ええっと、くじを引いた結果を報告する。北中は南中と、東中は西中と当たる。ふじ本中は待機で、いま伝えた二組の対戦の勝利校のどちらかと当たる予定となった」

「くじ引きで対戦校を決めていたのか……」

「ふじ本中の、桃ノ木シュウタは居るか──!?」


 不意にシュウタの名前が呼ばれ、会場に集まった大勢の頭上に響き渡った。


「……!?」

「お前のトコは一回戦は不戦勝だ。ラッキーだったな!」


「ふじ本中の新しい総番はどんな野郎だぁ?」

「桃ノ木なんざぁ、聞かねえ名だなぁ」


 口々に噂をする者たちの興味本位の声がシュウタの耳に入ってくる。

 緊張した面持ちでシュウタは、台の上にあがった。


 鬼河原に居合わせる連中の目線は、常に中央の総番たちの立っている台の上に注がれていた。

 

「おう! (おせ)ぇじゃねーか! オレは北中の総番で、(ほう)条ナオトだ。ナオでヨロシク! さあ、一発派手な号令をかけて仲間を全員ここに揃えてくれねェか。頼むぜ!」 



『予想通りの展開だな、シュウタ。ここは一発派手にボッチ宣言をしてやれ!』



 ああ、ショウタ。 

 毎回、その心の底から他人事のような台詞(セリフ)には救われるよ。


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