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連撃のシュウタ   作者: ゼルダのりょーご
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十六話 戦記の空⑥

 《連撃のシュウタ》 戦記(おののき)(そら)





 シュウタと5人の事は他の男子生徒からなんとなく聞かされていた女子たち。

 昼休みに入ると女子たちがシュウタの話題で盛り上がっていた。


 それをハヤトが聞いてしまった。



 ◇


 

「やっぱりシュウタがあいつらをあんな目に遭わせたのか……こうしてはいられない、急がねば」


 ポツリとハヤトがもらした。

 ハヤトは昼食も取らずに他のクラスを転々とした。

 いつかはやって来る事態だが、どうやらハヤトが全学年のクラ番とその配下に号令を出した。


 その数、30人あまり。


 放課後、ハヤトが軍勢を引き連れて、僕シュウタを体育館の裏手の広場へと呼び出していた。

 ハヤトは一気に叩き込むつもりらしく、シュウタは有無を言わさず軍勢の餌食(えじき)となった。


 ハヤトはまず、一対一でシュウタと話すと見せかけて、軍勢をシュウタの後方から襲撃させたのだ。

 シュウタは、両手両足をそれぞれ4人ずつに押さえつけられて、抵抗することが困難な状況だった。


 

「ぐうぐ……げほっ。ひきょう…だぞ、話し合い……と」


 やつらは僕の問いかけなどに耳を貸すつもりはなく、腹部から顔面をメッタ()ちにしてきた。


 背後からもすでに背中を強烈な()り攻めにされて、僕がぐったりと地面に倒れ落ちたのを確認すると、今度はまだ動く両手足を金属バットでまたまたメッタ撃ちにした。


 そして僕が意識を失う前にハヤトが言った。


「これに懲りたらもうオレ達には二度と逆らわぬことだ」


 ハヤトはその事を僕に何度も確認するが、僕は決して首を縦に振ることはしなかった。

 手足はグシャグシャになり、流血の量は1リットルを超える有り様だ。


 この集団リンチで絶対僕のことを圧伏して付き従わせると腹に決めていた彼の支配欲を見せられた気がした。


 

「お前にこれ以上の抵抗は不可能と判断している。これ以上やったら殺してしまう。もう観念(かんねん)しろ!」


 

 そう言うとハヤトは僕から離れた。


 仲間に目で合図をした。

 あらかじめ用意していたバケツ一杯の水で、僕の血に染まった身体を洗い流す手はずだった。

 僕は全身に水をぶっかけられて、流血の痕跡(こんせき)を消された。

 ごていねいに手足に包帯まで巻き付けてくれた。


 これだけの手傷を負わせた事が学校側に発覚すれば、事件に発展しかねない事を熟知するハヤトたち。

 仲間が負傷した僕をそっと保健室に運び込み、皆でこの事を口裏を合わせてもみ消そうという算段だったのだ。


 ボロボロになった僕をそっと起こして運び始める男子生徒たち。

 その場を早々に立ち去ろうとするクラ番たち。


「この場で敗けたままだと、後で必ずミリゴとビンゴにもリンチが……。ここで一気に決着をつけるよショウタ! お願い。身体を無傷に!」



『いよいよ反転攻勢に移るんだな、やっぱブチのめすのが一番だなシュウタ』



 僕は反撃にでた。


 自分の身体を支えていた男子2人の首根っこを掴み、高速で振り回し、引き揚げようとする軍勢の一人ひとりの前に疾風(しっぷう)のごときスピードで立ちはだかり、強烈な手刀(しゅとう)をボディに一撃ずつ浴びせ、胸部に手のひらを当て、軽く押した。


 相手は10メートルほど転げながらすっ飛んでいった。



「ハヤトぉお──っ!! 観念をするのは君の方だぁあ──っ!」



 ハヤトがその言葉に振り向くまでに、僕は確実に他の全員を秒殺していた。

 ハヤトが完全に振り向いた時、そこには誰ひとり立っている仲間はいなかった。



「……!?」



 その光景にハヤトが意表を突かれていた。

 僕は瞬時にハヤトの正面に走っていき、静かに向き合った。


 ハヤトの表情からビクリと胸が高鳴って驚愕(きょうがく)しているのがうかがえた。


 あいつの間合いに入ってはヤられる。何とか逃げなくてはとハヤトが必死になっていた。


 どうやって僕がハヤトの仲間に手を掛けたのかを一度も目にしていないハヤト。

 そして先程の惨劇がウソのように無傷で立っている僕を見て、ハヤトはわが目を疑っている様子。



「君で最後だね? 早く降参した方が身のためだよ。仲間の為にもね」



 僕が不敵な言葉を彼に向けると、ハヤトは僕に背を向け、全力で走り出した。

 10メートルほど走ったら、一度振り向いて僕に向けて叫んだ。


「こんな事してこのまま済むと思っているのかっ!!……オレのバックには」


 残念だけどそんな台詞を聞く気はないね。


「!」


 彼が話している途中で、僕が彼の視界から消えたものだから、彼は驚いて言葉を無くしてしまった様だ。


「僕はここだよ!」


 彼の背後に回り、声を発した。

 振り向いた彼は、僕の姿に驚いて再び間合いの外に出ようとしたが、僕は彼の肩を軽く押さえつけて逃がさない。


「う……うあ、なんだこれ?」


 間もなく彼は、自分の足が地に着いていないことに気付く。

 僕に片手で肩を掴まれて、3メートルほど上空に身体を持ち上げられていた。

 僕の腕が伸びたわけではない。


 僕と一緒に宙に浮いていたのだ。


「ど、どういうことだ! お前はいったい何なんだ!?」


 震え、高鳴る鼓動が彼を襲った。

 彼は必死に声を上げた。


「どうだい? これが狩られる者の恐怖心と言うものだよ。君はすでに僕に心で負けたんだ。仲間を見捨てて逃げたんだ。このまま彼らの様にその身に一太刀(ひとたち)受けるかどうか、選ぶといい」


 ピクリとも動かず仲間全員が地面の上に横たわっている現実を見て、僕の差し出す言葉の意味を嫌でも飲み込まされていくハヤトは、すでに力尽き、愕然(がくぜん)とする。


 震えた口調で彼は口を開く。


「わ、分かった……オレたちの敗けだ。もう、お前たちには手を出さない。ち、誓う」

「保身のためにその場しのぎの出まかせじゃないだろな!」


 真実味は十分にあったが、さらに凄んでやった。


「ほ、本当だ! 頼む……この現状を見て、ハッタリなどない……」


 遂にハヤトが完全なる全面敗北を認めた。

 降伏を誓わせたのだ。



「やっとその気になったか」



 僕は非情さを誇張するかの様にそのまま手を放した。

 ハヤトがドスンと地面に落ちた。

 その身に走る痛みのまま上を向いた。

 宙に浮いて、風に吹かれ、髪をなびかせて自分を(あわれ)みの目で見つめる僕に


「お前は一体何者だ? なぜ、そんなことが出来るんだ!?」


 ハヤトの質問には容易く答えてやれない。

 ハヤトはそのまま仲間の方へと駆けていった。


 僕も何事もなかったような顔をして、自分の教室へと戻っていった。

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